第27話 ダークエルフの秘密(下)


 最後の尋問は、グリフォンの乗り手だ。


 通信機を隠し持っていた若い男を選んだ。丸顔で、一見すると優男(やさおとこ)だ。

エルフにも丸顔っているんだね。


『(?ω・)ノ ご主人様ー、丸顔って何?』


 ああ、そうだね。デロリンみたいな丸い顔だよ。


『(・ω・) なるほどー』


 点ちゃん、どんどん語彙を増やしてるな。おっと、今は尋問中だった。

 まずは、前の二人にしたのと同じ警告をする。


「ふん、お前のような小僧に何ができる」


 どうやら、立場が分かっていないようだ。俺は、奴の右手の神経を遮断した。


「て、手が動かない! 

 あー!」


 手を押さえて、叫んでいる。


「警告はしたぞ。

 次は左足だ」


「ま、待ってくれ。

 何でもしゃべる。

 頼むから」


 グリフォンライダーなのに、一番根性無しってどうよ。


「お前は、どうやってこの場所まで来た?」


「み、『南の島』から、飛んで来た」


「嘘は、ばれないようにつけ。

 俺たちがフェアリスを開放してから、お前たちが来るまで、そんなに時間が掛かっていない」


 俺は、奴の目を覗きこんだ。丸顔が目をそらす。


「それに、どうみても『南の島』からここまでは、グリフォンの飛行範囲を超えてるだろ」


「で、でも……ぐあ! 

 目、目がぁ!」


「約束は左足だったが、お前が嘘をついたから、こちらも嘘をついたぞ」


 男は、頭を下げ、こちらに突進してきた。俺は、そのまま、それを体で受けとめた。


 ガンッ


「ぎゃっ!」


 床に倒れた男は、動く方の左手で、頭を押さえている。

 物理攻撃無効を持つ俺にぶつかるのは、鉄板に頭をぶつけるようなもんだからね。


「もういいだろう。

 お前は信用できない。

 もう一方の目と、両足ももらおう」


「や、やめて! 

 やめてください! 

 ボクのパパは、議会のメンバーです。

 欲しいものは、何でも差しあげますから」


 パパと来ましたか。まあ、甘やかされて育った坊ちゃんだね。俺と気が合わないのは、当たり前か。


「まあ、どうでもいいがな。

 最後にもう一度だけ聞いてやる。

 ここまで、どうやって来た?」


「ポ、ポータルを使って来ました」


「ポータル? 

 なるほど……『南の島』のどこに入り口がある?」


「そ、それは、『緑山(みどりやま)』です」


「それは、どこだ?」


 俺は、奴に点魔法のパレットを見せた。そこには、上空から映した『南の島』の映像がある。


「こ、これは一体!?」


「いいから、早く指させ」


 丸顔が指さした場所をさらに拡大する。氷雪地帯の中に、緑色の山がある。


「これの何処だ?」


 奴が指さしたところを拡大すると、洞穴のようなものが見えた。さっそく位置を記録する。


「ここのポータルから入ると、どこに出る?」


「学園都市世界の島です」


 研究者の発言と合致するな。


「そこから、どうやって『西の島』に来るんだ?」


「その島の隣島にもポータルがあるんです」


 なるほど、だから簡単にここまで来れたんだな。

 学園都市にいた時に映しておいた群島の映像で、二つのポータルの位置を丸顔に確認しておく。

 もちろん、『西の島』のポータルの位置も確認する。

 そこは、思った以上に、この廃墟から近かった。


「よし、これが最後だ。

 先ごろ、『東の島』で魔獣が暴走して町を襲ったが、その件について知っていることを話せ」


 ヤツは、一瞬ごまかそうとしたようだが、俺と目が合うと、諦めたように話しだした。


「詳しいことは知りません。 

 ただ、そのことについて、パパが他の議員と話しているのは、聞いたことがあります」


「どんな内容だった?」


「失敗した女を、『西の島』に送るって言ってました」


「何のために?」


「ボクらの国は、死刑がないので、重い罪を犯した者は、島に送るんです」


 なるほどね。

 一応その場所も、聞いておいた。


 俺は、ダークエルフから手に入れた情報を元に、これからの計画を練るのだった。

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