第4話 神聖神樹


 次の日、俺たちは、エレノアさんの案内で、神聖神樹まで行くことになった。


 森の中の道は、途中から木の根が入りくんでいて、馬車が使えない。

 俺たちは歩いていくことになったが、ものは試しだ。点ちゃんボードを出してみた。エレノアさん用のボードも作る。

 彼女は、一番ボードが上手いコルナが、紐を付けて引くことにする。


 ボードは、絡みあった根っこで凸凹した道を滑らかに進んでいく。

 先頭はコルナで、エレノアさんが方向を指示する。ナルとメルには、コルナより前に出ないよう注意しておいた。


『ご主人様ー、飛ばしてもいい?』


 点ちゃん、お願いだから、ここではやめてください。

 後で、ヒャッハーさせてあげるから。


『分かったー』


 ◇


 約十五分ほどで、目的地に着いた。


 普段は、二時間ほどかけて歩くということで、エレノアさんが驚いていた。

 目的地には、注連縄しめなわのような太いロープが張りめぐらされており、そのロープには、複数の強力な防御魔術が掛けられているそうだ。


 下から見ると、神聖神樹様の巨大さが、さらに際立つ。上を見ても、どこまで続いているか分からない。空の半分以上が、張りだした枝で覆われていた。


 ボードから降りたエレノアさんが、座る姿勢を取る。

 ボードをしまい、俺もその姿勢を真似た。

 目を閉じ少しすると、神樹様から聞こえたような、そして、もっと太くゆったりした振動が体を満たしていく。

 背筋が、ぞくぞくする。


「よく来た 地球の子とその家族よ」


 エレノアさんの口から、声がする。


「直接話をしたい。

 点の子よ。

 よろしく頼む」


『(^▽^)/ はいはーい』


 点ちゃんが、いくつか点を神聖神樹様に飛ばす。

 近くに見えて、かなり距離があるようだ。

 点魔法が届くまで、しばらく時間が掛かった。


『(^ω^)ノ できたよー』


『感謝する。

 シロー、お前のことは、ポータルズの神樹たちから聞いておる。

 そして、これから、我らの運命とお前の運命が交差するのが見えておる。

 我が子供たちとその友人、共に救うてほしい』


 まずは、モリーネをお城に帰そうと思います。

 その後は、何をすればいいでしょうか。


『お主のしたいようにせよ。

 それが我々の運命に繋がるはずじゃ』


 分かりました。


『ただ、行くべき方向が決まらぬ時は、「西の島」を訪れるがよい』


 西の島?


『詳しいことは、巫女に聞け。

 我の力は弱っておるゆえ』


 分かりました。


『再び我が話せるのは、しばらく後になろう。

 よろしく頼む』


 はい。また、お話ししましょう。

 エレノアさんの体から、力がふっと抜ける。

 コルナがすかさず彼女を支える。

 どうやら直接話してはいたが、エレノアさんも力を使っていたらしい。


 こうして、俺たちと偉大な存在、神聖神樹様との出会いは幕を閉じた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る