第11話 ミーティング
点ちゃんとの、「なんじゃこりゃー!」も息が合ってきた。
俺たちは、短時間だが、点ちゃん1号のくつろぎ空間を満喫しながら、ギルドから借りている住居に到着した。
すでに、コルナ、ミミも帰っており、見知らぬ男が一人いた。
「ラジ!
なぜ、お前がここに?」
「ああ、ボスから言われて来た」
加藤と男は、顔見知りのようだ。
夕食時だったので、タイタニックから持ってきた、山のような料理をテーブルの上に出す。
ポルとテコも合わせると、全員で七人の大所帯だからね。
俺と加藤は、タイタニックでは食事せずにおいた。そのかわり、多めに注文した料理を、点ちゃん収納に入れ、ここまで運んできたのだ。
「お兄ちゃん、学園では、いつもこんなもの食べてたの!」
「何、これ!?」
豪華なコース料理を見て、コルナとミミが呆れている。
「「うわー!」」
ポルとテコは、目を輝かせている。
「じゃ、まずは食べようか」
「「「頂きまーす!」」」
ここのところ、比較的質素なものを食べていた仲間たちは、久々のしっかりした食事に舌鼓を打った。
「学園じゃ、こんないいもん食べてんのか……」
ラジと呼ばれた男が、驚いている。
食事が終わると、俺たちは今後についてミーティングをおこなった。
眠くなったテコは、ポルが部屋へ連れていく。
「コルナ、司会役を頼めるか?」
「任せて、お兄ちゃん」
この人数での司会など、『獣人会議』に比べると、たやすいことだろう。
一つ咳払いすると、コルナがミーティングの開始を伝える。
「では、この世界の獣人をどうやって救うか。
議題は、それでよいのじゃな?」
コルナが、日頃は見せない真面目な顔で、俺たちを見る。
言葉遣いまで、変わっている。
「ああ、それでいいよ」
俺、加藤、ラジが頷く。
「問題は、二つある。
一つ、首輪にコントロールされ、獣人が自主的に奴隷的な立場にあるということ。
もう一つ、この世界の人々は、獣人がさらわれてきたという事実を知らぬこと」
コルナは、ここでいったん言葉を切り、みんなが頭の中で問題を整理する時間を与えた。
「難しいのは、人々に真実を知らせるにしても、時間は掛けておられんということじゃ」
「どうして?」
ミミが質問する。
「たとえ人々が真実を知ったとしても、それに時間を掛けておれば、ヤツらが証拠隠滅を図りかねん」
「証拠隠滅?」
これは、ポル。
それにコルナが答える。
「すべての獣人を抹殺し、証拠を消すということよ。
死人に口なしじゃ」
加藤が口を開く。
「いくらなんでも、そこまでやるか?」
まあ、人がいい加藤には、こういう発想は無いだろう。
俺は、獣人世界での情報を出しておく。
「ヤツらは必ずやる。
獣人の世界では、家を燃やし、村ごと獣人をさらってるからな」
「あいつら、そんなことまで!」
ラジは、怒りに震えている。
俺は、続けた。
「それにな、ヤツらは獣人で人体実験している、という証言がある」
「「……」」
さすがにここまでくると、ラジも言葉を失わずにはおれない。
加藤など、まっ青になっている。
「問題は、時間を掛けずに、どうやって大多数の住民に真実を伝えるかだが……」
俺は肝心な点を、ラジに尋ねておく。
「この世界で、獣人をさらったり人体実験していることが知れわたれば、なにが起こる?」
少し考えていたが、彼はきっぱりした口調でこう言った。
「政府は転覆するだろうな。
あと、関わった者は、極刑に処されるだろう」
「俺は、この国が極端な学歴社会だと思い知らされているが、学歴がある者でも処罰されるか?」
「ああ、そこは間違いない。
身分が高い者には、高い倫理が求められるからな。
追及は、よけいに容赦ないものになるだろう」
「なるほどな」
ここで、コルナがこれまでの意見をまとめる。
「では、いかに効果的に、しかも、短時間で住民に真実を伝えるかということに、問題は絞られるのじゃな」
俺は、それに頷いて、こう続けた。
「そこさえクリヤすれば、首輪の問題は、この世界の人々がなんとかしてくれるだろう」
加藤が心配そうな顔で質問する。
「何かあったとき、首輪が爆発したりはしないのか?」
まあ、首輪と指輪の違いはあるが、彼は身をもって、それを経験してるからな。
「今のこところ、そういった首輪は確認されていない」
「しかし、村ごとさらうとか、人体実験とか。
ボスに知らせたらどうなるかな」
腕を組んだラジが難しい顔でそう言った。
「おいおい、頼むから、お仲間が暴走しないようしてくれよ」
そう念を押しておく。
「ああ、そこは何とかしよう。
適当な通信手段があればいいんだが……」
「通信手段はなんとかするが、そのためにも、俺をボスに会わせてくれるか?」
「ああ。
場所と時間をこちらで指定することになるが、それでいいか?」
「任せる」
ラジに点をつけて念話すればいいのだが、点魔法を知る人数は、なるべく絞りたい。
まあ、情報収集のため、すでに点だけはつけてるだけどね。
場合によっては、パルチザンと事を構えることになるかもしれないから。
「では、今回の会合は、ここまでとしよう」
コルナが、閉会を告げる。
ラジは、重たいものでも背負ったような顔をして帰っていった。
この日、加藤は、そのまま泊まることになった。俺たちは、明け方までかかり、アリストで別れて以来体験したことを語りあった。
俺は、久しぶりに会った親友との交流に、心が満たされていた。
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