第36話 驚きと再会


 獣人世界でポータルを渡ったコルナ、舞子、俺は、パンゲア世界アリスト王国の鉱山都市山頂付近にあるポータルに出てきた。

 ここでルルと別れ獣人国へ渡ったのが、つい昨日のようだ。

 異世界が初めてのコルナは、物珍しそうに周囲を見まわしている。


 俺たちは、受付の少年にギルド章とコルネが書いた許可証を見せる。

 少年は金ランクのギルド章にちょっと驚いたが、何も言わず鉱山の下に続くトンネルの方を指さした。

 舞子は俺の手を離すと、少年に話しかけた。


「あなた、言葉が、しゃべれないのね」


 少年が頷く。

 舞子の光る手が、少年の喉に触れた。


「う、うう、あああ!」


「大丈夫、もう声が出せるわ。

 後は、練習するだけね」


 少年は、涙を流し喜んでいる。

 彼は押しいただくように舞子の手をとり、階段を降りはじめた。

 後からポータルを渡ってきたピエロッティが、すかさず後を追う。

 俺とコルナも、階段を下りた。


 ギルド裏の扉を開ける。

 いきなり、熊のような手で両肩をつかまれた。


「ガハハハッ!

 帰ってきたな、ルーキー。

 元気そうじゃねえか!」


 この大男は、俺の家族がお世話になっているマックだ。

 ちょっと驚いたが、彼の後ろから出てきた二人を目にした瞬間、俺は口をあんぐり開けてしまった。


「リーダー、遅かったですね」

「あまり、待たせないでよね」


 何でお前たちがここに!?


「ポル、ミミ! 

 どうして?」


「この後シローが『学園都市世界』へ行くって言ったら、ギルドから指名依頼を出されたのよ」


 アンデ、いったい何やってる!


「しかし、パーティは、もう解散したんじゃ?」


「するわけないじゃない!

 これだけ名前が売れたんだから。

 私たちの活躍はこれからよ!」


「おう、シロー、お前がパーティ組むとはな。

 で、パーティ名は?」


 ああ、来ちゃったよ、その質問が。


「「ポンポコリンです!」」


 ミミ、ポル、そこで声を合わせるってどうよ。


「ポ、ポンポコリン! 

 ガハハハハ……」


 腹を抱えて転げまわる大男は放っておき、俺はもう一人の友人に声を掛けた。


「ブレット!

 久しぶりだね」


 彼の後ろには、ハピィフェローの面々もいる。


「シロー、お帰り。

 今回は、女王陛下の指名依頼なんだ。

 それより、俺たちも、やっと金ランクになったぞ」


 聞くと、アリストの町を襲ってきたワイバーンの群れを撃退したらしい。


「すごいな!」


「ああ、その時は、ルルちゃんやリーヴァスさんも活躍してね。

 ルルちゃんも、金ランクになったんだよ」


 やったね、ルル!

 でも、「ルルちゃん」って何よ、「ちゃん」って。


『(・ω・)ノ ご主人様ー、それって嫉妬?』


 点ちゃん? 

 ああそうですよ、嫉妬ですよ!


 コルナにそでを引っぱられ、まだ彼女を紹介していなかったと気づいた。


「あー、こっちは俺の友人、コルナ」


「みなさん、初めまして。

 狐人族のコルナといいます。

 よろしくお願いします」


「こ、こ、こ、コルナさん。

 ブレットです。

 よ、よろしく」


 相変わらず、女性に耐性がない男だな、ブレット。


「マック、ルルは来てないの?」


「ああ。

 ルルはな、ナルとメルと一緒に、あの家でお前を出迎えたいそうだ」


 ルル……俺は一刻も早くルルに会いたくなった。


「あー、申し訳ないがな。

 ちょっとギルドに寄ってくれるか?」


 俺の心を読んだように、マックが話しかけてきた。今回、ギルドには、ずい分お世話になったから、まあしょうがないよね。


「ええ、では急ぎましょうか」


「聖女様と従者様はこちらへ」


 二人の騎士が、舞子とピエロッティを馬車に案内する。どうやら、二人には城からお迎えが来ているようだ。


「じゃ、舞子。

 畑山さんによろしくな」


「うん。

 史郎君、お城に来てね」


「ああ、もちろんだ」


『(・ω・)ノ ご主人様ー』


 何だい、点ちゃん。


『(・ω・)ノ((・)) この世界に置いてた点が、生きかえったみたい』


 なるほど、点がポータルを渡らなければ、大丈夫ってことか。

 俺は女王畑山さんに念話を繋いだ。


『畑山さん、聞こえる?』


『え!?

 ボーなの?

いつ帰って来たの?』


『たった今。

 一時的だけどね。

 とりあえず、舞子だけ連れかえった。

 詳しいことは、彼女から聞いてくれ』


『分かった。

 あんたも来てくれるんでしょ』


『二三日はかかるけど、必ず行くから』


『そう。

 じゃ、待ってるね』


 畑山さん、すごく変わった舞子を見て驚くぞ、きっと。

 俺は、すでに打ちとけた口調でおしゃべりしている仲間と友人の後を追いかけるのだった。

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