第6部 別れと再会

第33話 ケモミミ・サプライズ


 ポルナレフが長を務める町の設営も初期のインフラ整備を終え、俺はやっと一息つけるようになった。


 大事な話があったので、狐人族の少女コルナに声をかけ、点ちゃん1号まで来てもらう。

 最近になって備えつけた、応接セットに二人向きあって座る。しかし、この飛行艇、内部が普通の家みたいになってないか?

 外から見えないよう、壁はオリジナルの青色にしておく。


「コルナ、来てくれてありがとう」


「お兄ちゃん、何の話?」


「ええと、『学園都市世界』へのポータルなんだけど、この世界にあるかな?」


「えっ、『学園都市世界』? !

 お兄ちゃん、そんなところに行って何する気?」


「いや、友達が、今そこにいるんだよ」


「あそこと繋がってるポータルって、『唄の島』じゃなかったっけ」


「そのポータルって使えそう?」


「まあ、無理ね」


「でも、猿人の町に人族がいたって話だろ。

 彼らは、どこから来たんだろう」


「うーん。

 考えられるのは、猿人領、ああ、今では旧猿人領か。

 そこのどこかに、隠しポータルがあるって線ね」


「ふーん。

 それって、簡単に見つかると思う?」


「それは、簡単でしょ。

 お兄ちゃんが、捕えた人族二人に尋問すれば」


「そうか。

 その手があったか」


「ところで、その友だちは、どこのポータルから『学園都市世界』へ渡ったの?」


「俺が元いた『パンゲア世界』のポータルからだけど」


「お兄ちゃん、今その人が『学園都市世界』のどこにいるか知ってるの?」


「いや、分からない」


「じゃ、危険を冒してヤツらのポータルを使うより、元いた世界のポータルから渡った方がいいよ」


「なんで?」


「だって、そのお友達が『学園都市世界』のどこにいるか、知らないんでしょ。

 元の世界にあるポータルを使えば、少なくとも、その人が最初にいた場所に出るじゃない」


「ああ、そうか!

 それも、そうだな」


 俺はポータルを使うのに慣れていないから、そんな簡単なことにも気づかなかったのか。


「コルナ、ありがとう。

 君の話は、とても役に立ったよ」


「エへへへ。

 じゃ、座らせてくれる?」


「ああ、いいぞ」


 俺はソファーから立ちあがり、敷物の上に胡坐を組んだ。

 コルナが、いそいそと俺の膝に座る。いつもの後ろ向きスタイルだ。

 俺の目の前で、三角耳がピクピクしている。アリストがある『パンゲア世界』へ帰るなら、この三角耳ともお別れだ。

 ちょっと残念だが、仕方ないな。


「コルナ。

 もう少しで、お別れだね」


「えっ? 

 なんで?」


「だって、俺は元の世界へ帰るでしょ」


「うん、それで?」


「いや、だから、もう少しでさよならだねって」


「さよならしないよ」


「えっ!?」


「なんでウチが族長まで辞めて、お兄ちゃんと一緒にいるか分かってる?」


「い、いや、分からないけど」


「ずうっと、お兄ちゃんと一緒にいるために決まってるでしょ」


 ええっ! そう来ましたか。


「えっとね。

 でも、向こうは人族の世界だよ」


「知ってるよ」


「俺、向こうに家があるし、家族もいるよ」


「うん、舞子から聞いた」


 最近、コルナと舞子の仲は、喧嘩友達から普通の友達へと進化している。


「ええっ!」


「お兄ちゃんの家族に会うの、楽しみだなー」


「え?

 え?」


「お兄ちゃん、向こうでもよろしくねー」


 コルナは嬉しそうに、耳と尻尾しっぽをピクピク動かしている。

 狐人の少女を膝に、俺は、ただ呆然としていた。

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