第12話 ゴルティアにて

第12話1章・ゴルティアにて。


【1】



 ゴルティア王城。

 賑やかな笑い声がする。


 此処はメイドたちの控え室。休憩に入ったメイドたちは、それぞれが持ち寄った食べ物を広げ、食事とおしゃべりに夢中だ。


 メイドたちの中。

 彼女たちの五月蝿いとさえ思える話し声の間に、「うんうん」などと頷きながら話に混じっている男が一人。


 右目を塞ぐ黒いモノクルに、癖のある長髪を軽く結んだ髪型――シヴァだ。


 椅子に座る少女たちの間に、適当な箱を引っ張りこんで、当たり前のように紛れ込んでいる。

 少女たちも気にしていないようだ。

 たまに話題を振ってくる。

 しかし彼女らはシヴァの言葉を期待していない。

 聞き手が欲しいのだ。


「――で、私の勘だけど間違いないと思うのよぉ」


 高い、甘ったるい声の少女が得意げに話を締めくくる。

 他の少女たちが何度も頷いて同意を示すのを、シヴァは軽く首を傾げて考えた。


「そう……なんでしょうかねぇ」

「シヴァさんは男の人だから分かんないのよ」

「そうそう」

「他の男たちよりはイイ線行ってるけどね」


 ふん、と頷いて腕を組む。


「まぁ確かに女心なら女性の方が詳しいでしょうね」


 納得。


「なら男性の気持ちは男性の方が詳しい?」


 眼鏡の少女が眼を輝かせて尋ねてくる。


「そうだ、シヴァさん、気になるなら確認してくればいいじゃない」

「名案!」

「ね、それで結果を私たちに報告する! 良いでしょ?」


 少女たちがきゃいきゃいと騒ぐのを、「あれ?」と疑問符を浮かべて見つめる。

 いつの間に確認する事になっていた。


 彼女たちはすっかり盛り上がっている。

 なんだか賭け事まで始めている。

 マダム・パンのお菓子とか、そういう名前を耳に。



 ちょっと企んでみるのも悪くないか、とシヴァは考えた。



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