二部一章十二話
溜息をついてから、老人は言った。
「無念だが、その通りだ。時間を巻き戻す能力と、ネルに干渉する能力を持っている。儂は不老不死だが、大怪我を負うのは面白くない」
紘知が香弥の方に目配せをする。『そのような能力者がいられるような環境か?』『ありえない。そんな能力持ちがいるとすれば、死ぬまで監禁されるような惑星だった』
「君――そういえば、まだ名前を聞いていなかったね――は、その能力について、もっと詳しい情報を知らないかい?何かしらあれば、こちらで対応策を考えよう。困っている人を放っておけるほど寛容でなくてね」
言いながら、紘知はPCの方を少しだけ見る。未来予知を駆使して能力をデータベースで調べているのだろう。ある程度のことはこの時点で掴めているだろうに、いつも紘知は「未来というものはこの手の中にはない。だから、触れる時までは分からないのさ」と言う。揺らぐことなどほとんどないのに、飽きもせず、彼はずっと未来を見続けている。
「ホワイト、でいい。儂の名などそれで十分だ。能力の情報か……この時代から見れば、古代魔法に分類されるだろうな。古い、強力な術式だ。同じ魔術師として判断すると、通常の術よりも幾分か、金属質だな」
それを聞いて、紘知は頷いた。
「うん。確信が持てたよ、ホワイト。君を撃退する人間は青銅の鍵を持っている。あの惑星は強い術者が少ないから、青銅の鍵を扱う技術も粗末なものだ。未来を少し変化させて、時間を巻き戻しているのだろう。……君の『手』を取り戻すまでに、何回時間が巻き戻っている?」
指折り数えてから、ホワイトは口を開いた。「時間が巻き戻され、繰り返されている」と確信が持てるのだから、ホワイトもやはり異常だと香弥は思う。そんな魔術師は、協会にも両手に収まる数しかいない。
「最大で五回だな。青銅の鍵だとすると、とっくの昔に耐用限界は過ぎている。壊れているか、あと一回使えるか」
紘知は首を横に振った。資料を数枚、ホワイトに手渡す。それをホワイトが読むのを見ながら、紘知は言った。
「その予想は甘いだろうと思う。あそこには『門』が出現しているんだ。事実、あの星の住民は全て魔力を有している。魂を対価にすれば、敵はまだまだ戦えるだろう」
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