二章十一話
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部活が終わり、萌子と侑里である程度の資料を分担して持って帰ることになった。あと数日で大学以外も長期休暇に入る。早い内に決める必要があった。
萌子と侑里の二人がいつもの電車に乗っている時に、萌子が口を開く。
「侑里ってさ、二年生になっても神徒研究の協力をするの?」
「そりゃそうだよ。長期休暇中も何回か研究所の方に顔を出すように言われてるもん」
何でもないことのように言う侑里に対して、萌子の表情が少し暗い。
「そっか……。ねぇ、私も研究所について行っちゃったら、ダメかな?」
少し考えてから、侑里は答えた。
「んー…。中学生とかは保護者同伴で来てるし、高校生とかでも友達と一緒に来てる人もいるけど、研究所の中には入れてくれないと思うよ?私なんかは誰かいても能力に支障は出ないけど、そうじゃない人だっているから」
侑里の手を握りながら、萌子は更に続ける。
「それでも良いから、一回行ってみたいなって思って。だって、神徒と一緒じゃないと研究所の敷地にすら入れないんだよ?そんなところで何してるのか気になるじゃん」
照れたような顔をして侑里が返す。
「萌子が良いなら別にいいけどさ……。研究所に入るだけなら神徒と一緒ならいいんだし、わざわざ私の研究についてこなくてもいいんじゃない?選抜クラスにも神徒くらいいるんでしょ?」
わざわざ研究についてきて一時間くらい暇してるほどじゃないって……、と萌子を説得しようとするが、萌子は聞く耳を持とうとしない。
「ユリ、お願い。私はあなたと一緒に行きたいの」
萌子の必死な様子を感じ取り、説得を侑里は諦めることにした。それに、丁度次の停車駅は萌子の降りる駅である。これ以上引き延ばせばメールや電話でも連れて行くように言うだろう。萌子の口の方が侑里よりも優れている。舌戦になれば勝ち目はない。
「ん。分かった。今度の週末に研究所に行くからじゃあ途中で待ち合わせね」
やった!とやけに喜んだ表情を浮かべて、萌子は電車から降りる。それを手を振って見送ってしばらくしてから、侑里は気がついたことがあった。
「……もしかして、なんか心配されてる?」
――三章に続く。
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