二章九話
萌子が本の山から一冊とってめくりながら、言う。
「それにしても、やっぱり多くないですか?なんだか雑誌でもチラシでもないものもまぎれこんでますし」
「折角だから部活動もしっかりしようって話になって、近くの資料館だの土地の歴史だのの本もあるのよ。目的地出身の作家とかのまであるわ」
そう言いながら、菊川もPCで何かを調べている。
「なるほど」
萌子は会話しながらいくつか手に取ってページをめくっていた。その内に、タイトルや作者名から判断できる本選びのセンスで何かに気がついた。
「これ、全部菊川先輩が見繕ったものですか?」
菊川がニヤリと笑って答えた。
「ユリは言われるまで気づかなかったけど、萌子は察しが良いわね。それ、集めたのは斎藤と榊なのよ。私が取捨選択してそこまで減らして、ようやくそれだけになったのよ。あいつ等面白がって増やしてばっかで吟味もロクにしないから手がかかったわ」
電子書籍で寄越したのやらほとんど関係ないのやらまであって本当に男どもは……と更に続けた。
「それを聞いて少しやる気が湧きました」
「嫌味?」
萌子と菊川の趣味は食い違うところも多い。全てが菊川の趣味であった場合目を通すのが苦痛だという意味に受け取ったのだろう。
萌子は苦笑しながら、
「そんなことないですよ。先輩方から押し付けられたと思ってたのが誤解だったという意味ですか」
と言って、ふと斎藤の定位置の方を見た。
「斎藤先輩はどこですか?」
「講義がなくて暇してる大学生の知り合いに声かけて勉強会してるってさ。他の日にすりゃ押し付けたのに」
萌子と菊川の会話を聞きながら図書室から持ってきた本を読んでいた侑里に、菊川が雑誌を数冊手に取って渡す。
「ほら、ユリも少しは手伝いなさい。中学生に決定権委ねる必要があるんだから」
「榊先輩もいらっしゃいませんけど、やっぱり勉強会ですか?」
萌子の言葉に、菊川がため息をついて返す。
「あいつは風邪引いたんだってさ。その山のいくらかは榊が持って帰ってるから気になったらメールしてやって」
「わかりました」
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