66~対峙~・1

 カカオたちが合流した地点はテラの本拠地の目の前で、同時に本来彼らが降り立つはずの場所……ゲートのすぐ近くだった。

 妙な力に弾かれて離れ離れになったのは、この本拠地に張られた結界のせいだろうと時の女神は語る。


「結界か……そう簡単に入れてはくれねーよな」

『その結界も私の力を利用して作られたモノですから、今なら難なく入ることができますよ』


 そう言って彼女が見えない“何か”の形を確かめるように手を滑らせると、パキンと音を立てて淡い光が弾けた。


『ほら、このように。それでは、私はしばらく休ませてもらいますね』


 ひとまずの役目を終えたと判断した女神の姿が霧散し、メリーゼのもとへ集まる。

 契約者を依代として力を行使する、という形式はアラカルティアの大精霊と同じ……というより、彼女がアラカルティアを見て学んだ方法のようだ。


「い、いよいよだね」

「これから乗り込むのがテラの懐どころか、腹の中とはなあ……ぞっとしない話だ」


 モカ、ブオルがそれぞれ本拠地の入口を見つめ、口を開く。

 この不気味な建造物がテラの本体だとすれば、入口はつまり……


「大きく開いた品のないお口ねぇ」

「ちょっと! あんまそういうの考えないようにしてんだからね!?」


 あっけらかんとしたアングレーズの呟きにすかさず噛みついたのはパンキッド。

 外観上は生物に見えないのだから、気にしなければ不気味さも少しはマシになるだろうという思惑は、あっさり打ち砕かれた。


「わあ、中はちょっとじっとり湿ってるね」

「更に嫌になりそうな情報を足すな。というか少しは警戒しろ」

「どのみち入るしかないのでござるよ、クローテどの」


 ずんずんと入っていくシーフォンに呆れるクローテ、それをなだめるガレも内部へと続く。

 恐らくは最終決戦、そして後戻りもできないだろう状況で若者たちの空気は若干張り詰めながらも、基本的なノリはいつも通りだ。


『やれやれ、二十年前を思い出すね。ノリが彼らとよく似ているよ』


 と、かつての仲間たちの後ろ姿と重ねながらランシッドが呟くと、


『……時の調律者』


 契約者であるメリーゼの中で休んでいるはずの時の女神から、ふいに声がかけられた。


『なんだい?』

『話があります。時空を司る者として、内密の話が』


 メリーゼですらも何の反応もないところを見ると、どうやら他の者には聴こえないように話しかけているらしい。

 ランシッドは訝しみながらも、女神の話に応じることにした。

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