65~交わり、集う~・1

 時の女神と出会い、その力を託されたメリーゼとカカオがランシッドが待つ元の場所へと転移すると、他の仲間も勢揃いしていた。


「カカオ、メリーゼ! よかった、無事だったんだな!」


 真っ先に声を発し、安堵の顔を見せたのは熊のように大柄な一行の保護者、ブオルだった。

 次いでふたりに詰め寄ったのは小柄で最年少のモカ。


「何があったのさ? ランシッドおじちゃんにも事情は聞いたけど、なんか混乱してるしさ。大丈夫だと思う、って自信なさげでハッキリしないし」


 ズバズバと容赦のない言われように高位の精霊であるはずのランシッドも形無しで、うぐっと声を詰まらせる。


『お、俺にもよくわかんなかったんだよ……突然のことで、それに“彼女”が現れるなんて……』

「彼女……?」


 と、仲間たちの視線がメリーゼに注がれる。

 ひといきついたところで彼女が手にしているもの……分断される前までは見たことがなかった、いつもの彼女が扱うには少々大振りで儀式に使われるような装飾が施された剣の存在に気づいたからだ。


「そういえばメリーゼ、その剣はなんだい?」

「あ、ええとですね……」


 青白く透き通った刀身がほのかに輝く、そんな剣をメリーゼがそっと掲げた瞬間。


『私から説明いたしましょう』


 剣が輝き、女性の姿に変わった。

 毛先にブロンドを溶かした、床につくほどのエメラルドグリーンの髪、きりりとした銀色の目。

 白を基調としたどこか月光の女神を思い出す装束には、オレンジのリボンと時計のような装飾……よく見れば、髪にも同様のものが飾られている。


 しかし、一行を最も驚かせたのは……


「あれっ、なんだかテラの顔と……?」

『もとは同じものです。あの者が醜く……それはもう醜く歪めていてもはや別のものとなっていますが』


 似ているような、というパンキッドの疑問を遮って話し始める女性の面持ちは一見すると静まり返った水面のように落ち着いているようだが、同時に声音からは内に秘める怒りが感じ取られる。

 テラの分身はもともとは自分が喰らった“ある者”の姿を自分好みに改造したもの……以前ガレが話した内容から、他のメンバーにも彼女の正体の察しはついた。


 それにしても改めて見ると、髪の色から服装にプロポーションまで相当好き放題変えられており、残っているのは元の顔立ちぐらいじゃないかと思われるが。


『やはり貴女はテラに最初に襲われた世界の“時の女神”……テラに喰われたと聞いていたけど……』

『その通りです、アラカルティアの“時の調律者”よ。ここにいる二人のお陰で、テラの体内から脱出できました』


 時の女神は微笑むと、ここまでの経緯を彼らに語り始めた。

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