47~再び、聖依獣の里~・1

 森の地下に広がる遺跡、その奥にひっそりとマナを湛える光の泉。

 思い切って飛び込んだ先にあったものは……


「浮いている……島?」


 たとえるなら、そんな表現になるのだろうか。

 大地の欠片のようなものがあちこちに浮かぶ不思議な空間。

 カカオ達の足元の地面もまた、ふわふわと浮かぶ小島だった。


「ここが、聖依獣の隠れ里……」


 この中で唯一初めてこの地に降り立ったシーフォンが、辺りを見回す。

 いくつかの浮かぶ小島は橋で繋がっており、その上には人影……カッセのようなヒトに近い姿の聖依獣や石造りの建物も見える。


 シーフォン以外のメンバーにとっても、平常時の穏やかな里をじっくりと見るのは初だ。


「こないだ来た時はそんな余裕なんかなかったけど、改めて見ると変わったとこだねぇ……落ちたらどうなるんだろ?」

「こ、怖いこと言わないでよ、パン姐……」


 ここに来る時に飛び込んだマナスポットのように、足元には穏やかな光の海が広がっていて、その底がどうなっているかはパッと見ではわからない。


 一応簡易的な柵は設置してあるが、あまり積極的に覗き込みたくはないだろう。


「この前は時空転移で直接来たからわからなかったけど、ここ、わたし達が暮らす地面の下なんですよね……?」

「そういえば、地下なのに暗くはないんだなあ」


 と、見上げれば優しく降り注ぐ光のカーテンが、ほどよい光源となっているのがわかった。


「ゆったりしていて時間がわからなくなりそうねぇ」

「まあ、聖依獣自体そんな感じの種族でござるからなあ。長命であまり見た目も変わらぬゆえ」

「ガレっちとかクロ兄もそうなの?」

「さあ、そこまではそれがしにも……」


 二十年前まではアラカルティアに聖依獣がほとんど姿を見せなかったため、人間と聖依獣の狭間の子は長い間生まれていない。

 おそらくはクローテがここ最近の時代で最初に生まれた子だろう。


「けど、ガレはあのちっこいのから十五年でデカくなったよな?」

「むー、途中までは成長が遅れ気味でござったが、確か二十歳を過ぎた頃から急ににょきにょきと伸びた記憶が……もしやあれは遅い成長期だったのでござるか……?」


 カカオの言葉に記憶を手繰り寄せて考え込むガレ。

 そのすぐ横で、そんな彼を見上げながら「ということは私もそのうちきっと……」と小声で呟くクローテの目は、心なしか希望に輝いているように見えた。

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