22~英雄《ヒーロー》~・4

 カカオ達が駆けつけた時には、全てが終わった後だった。

 彼らはオアシスの見るかげもない姿に絶句し、傷ついた……といっても治癒術のお陰でほぼ癒えているガレと、ぐったりと意識のないクローテに駆け寄った。


「おい! クローテ、しっかりしろ!」

「ガレっち、何があったの!?」


 ブオルとモカ、他の仲間がガレ達に詰め寄る中で、ランシッドだけはこの場にいたもう一人……デューに視線を向けていた。


『デュー……君がここに来ていたとはね』

「たまたま近くを通っただけなんだが、水辺の乙女にオアシスまで引っ張ってこられてな。たぶん、ここの水を通してこいつらのことを知ったんだろう」

『会って話をしたら面白そうだと思っただけだったのですが、まさか襲撃を受けるだなんて……』


 と、水辺の乙女がさらに続けた言葉に、一同の注目が集まる。


『ストーリーテラーを名乗る“テラ”……アラカルティアを掻き乱すあの不快な者が、今回の敵なのですね』

「テラだって……!?」


 ずっと手懸かりを掴めなかった黒幕の名に色めき立つカカオ達だったが、


「……いや、あんまここで長話してられない。ふたりを休ませてやらないと……」

『それが懸命です。水の適性が高い彼には私のマナを分け与えましたが、ひどく消耗していることには変わりありませんから』


 ブオルの腕に託され、これだけ騒いでも目覚めることのないクローテに配慮して場所を移すこととなった。

 ふたりだけでなく他の者達も、荒らされたこのオアシスでは休まらないだろう。


「っていうか、パパいたんだ……」

「おいおい、いたんだはないだろモカ」

「デュランダル騎士団長、お久し振りです」

「ようメリーゼ、母ちゃんに似て美人になったな」


 すっかりあわただしくなってしまった、親子や上司と部下の再会。

 そんな会話を繰り広げながら、ぞろぞろと移動を始める。


 そして、後方には仲間達の背を見つめるガレとアングレーズのふたり。


「……かなわなかった。せっかくこの時代に来たのに、ヤツの分身にすら……っ!」

「違うわ、ガレ君。貴方は確かに“守りきった”のよ。こうして生きているクローテ君と、あなた自身をね」


 生きててくれて、よかった。


 震えるガレの獣の腕に己の白い手を重ね、アングレーズはそう言った。

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