6~まぼろしの再会~・1

 王都の城下町にある屋敷、ティシエール邸の倉庫にて。

 巨漢をめいっぱい小さく丸まらせて、冬眠の準備をする熊……ではなく、自分の遺品を漁る、過去の世界から来た男がひとり。


「なんか変な気分だよなぁ……あ、この服もまだ取っておいてくれてるのか」


 生きているうちにそんな物を見ることになるとは思わなかったブオルは、複雑な心境でこれから着る服を探していたが、


「……ん?」


 ふと、その手がある服を見付けた時に止まった。


「なんだこれ、俺こんな服買ったっけ?」


 そこにはまだ袖を通された形跡もない、けれども確かにブオルの体格にあった衣装がひとつ、アクセサリーと一緒にしまわれていた。

 持ち上げた拍子にひらりと落ちた手紙を開け、ブオルは首を傾げる。


「『入り用だと思ったので』……ホイップの字? ってか、書いてあるのこれだけ?」


 現代の曾孫、クローテの話では数年前に天寿を全うしたらしい妻の筆跡で書かれた手紙は、紙のサイズにしては小さい文字で一言だけのものだった。


「いい匂いだなあ……手紙に香りなんて、あいつそんなことする奴だったのか。可愛いなあ、へへっ」


 とりあえず手紙はしまうことにして、この服なら丁度良さそうだ。


 ブオルはその衣装を一式持ち出し、着替えることにした。



――――



 と、いう訳で。


「おぉー!」


 着替えを終えて居間に待たせていたカカオ達のもとに戻ったブオルは、まずモカの喚声に迎えられた。

 かっちりした印象の騎士団の服から一転、ゆったりとした異国の……東大陸あたりのものだと思われる、青を基調とした風変わりな衣装。

 金色の腕輪やネックレスを飾り、顔のあたりをターバンやマフラーで隠した姿は、もう騎士団の人間には見えないだろう。


「お前、そんな服持っていたのか?」

「それがですね、何故かホイップが用意してくれていたみたいで……けど記憶にないんだよなあ」

「何はともあれ、これでもうお化けって言われないね! おじちゃんやっぱかっこいいなぁ……」


 目をキラキラさせるモカに「ありがとな」とその小さな頭を撫でてやり、


「待たせちまってごめんな」


 そう言うと、


「いいよ、ボクもアンに手紙書いてたから」

「いろいろ事件続きで、ようやく一息つけましたしね」


 女性陣からはそんな言葉が返ってきた。

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