再会!
食堂に着いた私は、何度も目を擦るハメになった。なぜかって? だって、そこで私を待っていてくれた人が——
「ただいま。……メグ」
「ぎ、ギルしゃん!」
夢じゃない! 本物だぁ!! 嬉しくなって私はギルさんに向かって駆け出した。昨日声を聞いた気がしてたけど、夢じゃなかったのかな? それとも、正夢ってやつかしら。ううん、そんなのどうでもいいや! とりゃあ、ダイブじゃあ!
「ギルしゃん! おかえりでしゅー!」
「ああ。……いい子にしてたか?」
「してたでしゅよー!」
駆け寄った勢いのままジャンピングアタックをした私を軽々と受け止め、そのまま抱き上げて左腕に抱えたギルさんは、柔らかな笑みを浮かべながら話しかけてくれた。この安定感のある抱っこは間違いなく本物のギルさんだ!
ついついはしゃいでしまったけど、ハッとした。私は慌ててギルさんの身体をあちこちペタペタ触る。決してやましい気持ちがあるわけではない。素晴らしい筋肉だったけど。
「なんだ……?」
「んと、ギルしゃん、怪我してないかなって」
そう。お仕事だったのだから、どこか怪我などしてないか心配になったのだ。でも、ギルさんがすごく強いこと知ってるから、そこまで心配はしてないけどね。でもほら、身内を亡くしてる私としては、信頼出来る相手の安否がとにかく気になるのよ。
「ふえ?」
じっとギルさんを見上げながら返事を待ってたんだけど、大きな手で後頭部を抑えられてギルさんの胸に顔を埋める事になってしまった。何事か。
「……問題ない。怪我など、していない」
「それなら良かったでしゅ!」
そのままポンポンと頭を優しく撫でられた。照れ隠しかな? 心配されるのが気恥ずかしかったのかも。しかも私みたいなチビに言われてもって感じだよね。
「ギルさんが照れてるのです……!」
近くでメアリーラさんが、珍しいものを見たとばかりに驚いていた。やはりレアな反応なのね。しっかり堪能しておこう。役得、役得!
「朝飯はこれからか?」
「そうでしゅー! ギルしゃんは?」
「これからだ」
とくればここは一緒に食べるよね! という事で、本日の朝食はメアリーラさんとギルさんと3人で食べる事になりました! ギルさんならメアリーラさんも文句を言うことはなかったし。やはりジュマくんが特別ダメって事なんだろうなぁ。哀れジュマくん。
「おはよう! おや、メグちゃん今日はギルさんと一緒かい?」
「はよーごじゃいましゅっ! そうなんでしゅよー」
「嬉しそうだねぇ。さすが保護者は違う」
どうやらギルド内ではギルさんが私の保護者として定着しているようだ。私を連れてきてくれたのがギルさんだもんね。
「メアリーラはメイドって感じだし、シュリエさんは師匠でしょ? あたしは飯炊き婆ってとこかな」
あははと笑いながらそういうチオリス姐御は今日も元気である。そして大体合ってる気もしなくもないけど、チオリスさんは婆じゃないよ! 姉御肌だけどまだまだ若いでしょうにっ!
「わ、私メイドなのです? お姉ちゃんがいいのですよう!」
「んん? 姉ポジションはサウラさんじゃないかい?」
「むむーっ、姉ポジを狙うのです! 諦めないのですよー!」
よくわからない闘志を燃やすメアリーラさん。十分優しいお姉さんだと思ってるよ……生きてる年数は私の方が遥かに少ないけど、なんて言うの? 人間と同じ年齢にしたら私の方が年上な感じはするけどね。だから気持ち的には妹ポジが近いのよ、ごめんね。
「はいっ、お待たせ! 今日の朝食はコンソメスープとサラダにソーセージ、クロワッサンサンドだよっ!」
「おいししょーでしゅーっ!!」
「溢れやすいから、メグちゃんのは一口サイズにカットしておいたからね」
「ありがとーごじゃいましゅっ」
相変わらず美味しそうなメニュー。今までの食事も美味しかったから間違いないよね! それにしてもなんか、食器とか子ども用サイズになってない? 今まではティースプーンとかでお皿もただの小皿だったけど、これは間違いなくお子様用プレートってやつだ。スプーンやフォークも小さな手に持ちやすいように可愛い持ち手がついてるもん!
「気付いたかい? ふふ、みんなメグちゃんが可愛くて仕方ないのさ! 食器や椅子、他にも小さな子ども用に必要なものを鍛冶担当のカーターと、装飾担当のマイユが用意してくれたのさ。椅子もあっただろう? あれもそうだよ」
なんと! それはちゃんとお礼を言わねば。聞けばカーターさんとマイユさんは、それぞれ担当のリーダーなんだとか。トップがわざわざ作ってくれるなんて贅沢だなぁ。
「サウラの奴……本気だな」
「ですねぇ。メグちゃんの使うものだからと妥協を許さなかったんじゃないかい?」
まさか、指示出したのはサウラさん? ……ただの過保護でしたとさ。もちろん、ありがたいけどね!
クロワッサンサンドは口に入れて噛むと、期待を裏切らないサクッとした歯ごたえ。そのすぐ後にふわっとした食感とバターの風味が口いっぱいに広がって幸せでした。パンの間にはレタスと卵とチーズが挟んであって食べ応えも十分! でもどうしてもこのパンの生地はボロボロと溢してしまう。一口サイズにカットしてあるというのに私ったら! だけどそれをすかさずギルさんが綺麗に片付けていく様子はとてもシュールでした。
「わ、私の手を出す隙がないのです……!」
メアリーラさん、敗北宣言。ギルさん、お世話上手っ!
それから丸々太ったソーセージちゃん。パキッて音がたまらない! もっと食べたいけどスープとサラダもあるからお腹いっぱい。大満足で食後にミルクを飲んでいると、メアリーラさんに今日の予定を聞かれた。
「んと、今日はケイしゃんとでぇとなんでしゅ!」
元気にそう告げると、食堂にいた人たちみんなが一斉に動きを止め、それから冷気を漂わせ始めた。な、何事……?
「安心しろ。俺が護衛に着いていく予定だ」
ギルさんのその一言で冷気は霧散し、あちらこちらで安堵のため息が聞こえてきた。メアリーラさんも良かった、本当に良かったと涙を流さんばかりの勢いである。……なぜだ。
しかし、私はそれを気にしている場合ではないのだ!
「ギルしゃん、一緒に行ってくれるでしゅか!?」
「ああ。昨夜、報告を行なっている時に護衛を探していると聞いたからな。急いで戻ってきた」
本当は明日戻る予定だったらしいんだけど、残っていた仕事を片付けて夜中に戻ったのだとか。……仕事が早くて有能なのはわかるけど、過保護もここまでくるといっそ賞賛に値するよ。
「でも、ギルさんが一緒なら安心なのです! メグちゃん、楽しんで来てくださいね」
「あいっ! たのしみー!」
でも嬉しいのは間違いない。ケイさんとギルさんと3人でデート!
ん? ケイさんと、ギルさん……? 2人の会話があまり想像出来ないんだけど。ど、どうなる? ギルさんもイケメンだから、ケイさんはあの調子なのかな。仲は悪く、ない、よねぇ?
……今日も無事に終わりますように!
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