バイオ総武線フライ

作者 架旗透

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★★★ Excellent!!!

冒頭を読んだだけで、とんでもない作品に出合ったしまったと感じた。

何せ、【通勤電車が昆虫】なのだ!

アイディアが奇抜すぎる!

奇抜さゆえに、ユーザーの肌に合う合わないというジレンマはあるだろうが、それでも読んでいくうちに、この不思議な世界観にとらわれ、トワイライトゾーンに突入したような感覚に陥る。

その昔、「SFは現代の風潮や世相を取り入れなければ認められない」と、言った評論家がいたが、この作品はまさに現代日本のもつ特性や闇を体現した作品だ。

日本に暮らす【ヒューマン】に是非読んでほしい。

ともかく、ヤバい作品に出合ってしまった!!

★★★ Excellent!!!

これは社会のなかで、「人間を形づくる境界」が消失する過程を描いた物語だ。

そう言うと旧エヴァみたいに聞こえるかもしれないが、この物語にはそのようなカタストロフや秘密結社の陰謀など存在しない。

この物語の主人公(?)であるカブト1号は、人工的に製造された巨大な昆虫(?)であり、近未来の総武線を走る“車輌”でもある。
一方で、駅員たちも鉄道会社から「勤務啓発剤」や「抑制剤」を投与され、能率と引き換えに人間性を失っていて、生態を虫に近づけている。

そう、ここに書かれている世界では、能率を究極的に高めた結果、「虫が機械になり、人間が虫になる」のだ。

シュールなネーミングと設定にもかかわらず、違和感なくすんなり読ませてしまうところがこの作者のすごいところだろう。

そしてエピソードを読み切った読者は、自身の中でも「ヒト・ムシ・キカイ」の境界が消失しつつあることに気がつくかもしれない。

この作品はバイオな魔法によって、読者が画面を閉じたあとで、「バイオ総武線の世界」と「JR総武線の世界」の境界を消失させるのである。


イ、ギギギ。