異世界の騎士、紳士服を着る。

作者 板野かも

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★★★ Excellent!!!

祖国を救うため現代日本から勇者を召喚していた青年騎士アルスターは、召喚魔法の事故によって現代に飛ばされてしまう。銀座で老舗の仕立屋を営む少女・市松巴と出会ったアルスターが、現代のファッション文化に驚愕する姿が面白く、中世の騎士とスーツという組み合わせが絶妙でした。

異世界の住人が現代にやってきてしまう、いわゆる「逆召喚もの」も最近は定番になりつつありますが、異世界人が異世界より進んでいる現代の文化を盛大にダメ出しするパターンは珍しい。

現代の正装であるスーツも、中世のお洒落感覚をもつアルスターにしてみれば、装飾もなく色や柄にも乏しい粗末な服装に見えてしまい、「そんなものが着れるか!」と頑なに反発すればするほど、若者文化に批判的なお年寄りを相手にしているかのようで可笑しくなってきてしまう。

そんなアルスターでも伝説の職人と称された祖父の手ほどきをうけた天才少女・市松巴の神業とも言える仕立て技術は認めざるを得なくて、彼女の元でスーツのトレンドを学んでいくところが興味深い。

私たちが普段から着ているけれども意識しないスーツの魅力を再発見できました。

果たして騎士アルスターはスーツの価値を認めて着てくれるのか。もし着せるとしたら何がいいだろう。やはり王道はスリーピーススーツだろうか。そういう想像も楽しい作品です。

(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)