2-19【穏やかな日常 6:~強化外装 vs 強化外装~】



 いきなり始まった戦闘テストという名の”無茶”。

 複雑な魔道具はさっぱり理解できないエリクだったが、流石にこれがモニカの”気まぐれ”によって急に繰り上げ実施された物だというのは理解できていた。


 それでも、エリクに不満はない。


 元々、モニカは自分が作る物が絡むと、唐突に何かを始める事は珍しくないというのは、この短い付き合いでも分かっていた。

 たぶん本能で生きる子なんだろう。

 とはいえ、彼女の知識や能力だけは信頼できるし、全身にみなぎるこの力が心を強く押している。

 エリク自身、この力を早く試してみたいと思っていたのだ。

 この魔力に満ちた外装は、幼い頃に父に聞いた寝物語の”魔導戦士”のよう。

 もちろん”中身エリク”は比較にならないけれど、これを作ったのは魔導装具と同じアクリラの人間だ。


 それにヴィオの声が頻繁に聞こえることで、これまでにない程に誰かの存在を近くに感じていた。

 何を言ってるのかはよく分からないけれど、ヴィオが”起動”や”発動”と言う度に、一気に何かが変わるのでそこだけ注意する。


『戦闘モードを”演習”に設定、駆動制御、支援制御、正常にモードを移行しました。 エリクも準備はいいですか?』

「その言葉の意味はよくわかんないけど・・・いつでもいいよ」


 エリクはそう答えながら腕を動かし、足を曲げて腰を落とす。

 すると全身に張り付いた黒い鎧が、特徴的な”軋み音”を上げて追従してきた。

 その感触は新品の布のように滑らかで、それでいて革で締め上げられるように固くもある。

 そしてその硬さが全ての動きを後押しし、自分の想像以上に想像通りの動きを実現していた。


『心拍数の上昇を確認、軽度の興奮状態ですね。

 でも、これくらいの方が動きやすいでしょう。 支援スキルの試しに、軽く素振りしてみましょうか』


 ヴィオがそう言うと、視界の端で【剣聖術】の文字が赤く点滅し、【剣術支援】の文字が中央に大きく表示された。

 と同時に、全身・・・特に剣を持つ右腕に魔力が集まる感覚が。


 次の瞬間、エリクは勢いよく剣を振り抜いていた。


「・・・っは!!」


 少し遅れて息を吐く。

 すると真っ黒な一筋の光として一瞬で視界の上から下を駆け抜けた剣先が、地面スレスレでピタッと止まる。

 その速度と精度にエリクは驚いた。

 今の一振り、”剣の加速”は発生している。

 それどころか、間違いなくこれまでで一番速い剣速だったのに、驚くほど簡単にそれを御し切っていた。

 これまでならば間違いなく地面を切っていただろう。


『制御の確認が完了しました』


 ヴィオの言葉が耳元で聞こえる。


「今のはヴィオが止めたの?」

『止めたのはエリクですよ、私は繋いだだけです』


 その言葉の意味をエリクは殆ど理解する事はできなかった。

 だが、その”重要さ”は本能でハッキリと理解する。

 ”この力”を御しきれるとするなら・・・


 エリクは震えるような感覚で剣を握る。

 ヴィオが宿るその剣身の黒さが、大量の魔力を帯びていつも以上に黒く輝いて見えた。


 視線を感じたエリクが、正面で待つモニカへと顔を向ける。

 ”この力”の生みの親であるその少女は、エリクの動きに興味津々な様子でいるが、既にその身は彼女の代名詞である黒い鎧に包まれていた。

 エリクのこの力と同じ輝きを持つ鎧を。

 モニカがエリクの視線に応えるように棒を前に突き出して構えると、その爛々とした顔を黒い兜が覆った。


「全力で打ち込んできて!」


 モニカにはそんな事を言う余裕すらある。

 それに対してエリクは虚勢を張るように努めて軽い口調で返した。


「こっちは剣だから、”打つ”じゃなくて、”切って”しまうかもしれないよ」


 もちろんハッタリだ。

 ヴィオは自分の刃を落としているので、あの鎧を斬り裂く力はない。

 それでも深く姿勢を落として剣を上段に置く自分の最も得意とする構えを取った。

 前回の遠征でヴィオはこの動きを見ている。


「・・・ヴィオ、全力でいくよ」

『【剣聖術:剣聖技:サイドストライク】準備完了、魔力充填開始』


 いつ間にそんな名前を・・・と思った瞬間には、エリクの意識は恐るべき勢いで急加速し、思考加速以前に発した思考が頭の端でゆっくり流れるのを横目に見送りながら、迷う事なく地面を蹴り飛ばした。


 音というよりは衝撃波と化した轟音が辺りに響き、蹴り飛ばされた土と草がエリクの身長の数十倍の高さまで巻き上がる。

 その爆発的衝撃で急加速したエリクは、更に剣に加速魔法陣を展開して速度を上げた。

 それは先週までエリクが使っていた”必殺技”と原理的には全く同じものだ。

 だが威力と速度が桁違いに凄まじく、更に驚く事にそれですら加速させられたエリクの意識は振り切れなかった。


 短い距離だというのに恐ろしく遠く感じる。

 だがそのおかげで、ギリギリまでモニカの様子を見ながら切り込む角度を修正できた。

 エリクの目の前に置かれた透明なレンズの上に、ヴィオが最適と思われるラインをいくつも表示し、それを常に更新し続ける。

 しかし、モニカはまるで動きを読ませないためのようにギリギリまで動かない。


 痺れを切らしたエリクは結局、最も使い慣れた”いつものライン”を選択すると、代わりにそこに向かってあらん限りの力を込めた。

 切っ先が音速を超え、間髪入れずにその3倍まで加速する。


 だがモニカはそれ以上の速度で持っていた棒を回すと、エリクの剣の横っ腹を叩いて外側に弾き飛ばした。


 全く予備動作のないその動きは幻術めいて、無防備に突っ込んでしまったエリクは崩された態勢に打ち込まれるモニカの2打目を躱す余力が無い。

 ただ、今のエリクはそれを認識できるだけの”思考加速”があった。


『【剣聖術:強制姿勢制御】を発動します』


 ヴィオの声と共に体が突然空中でグイッと動き、その場を離脱する。

 ヴィオはなんと、”剣の加速”の魔法を全身で使ったのだ。

 その暴力的な加速に身を任せながら、それでも考える余裕のあったエリクは、くるりと空中で姿勢を変える。


 ”剣と一体になれ”


 師匠の言葉が蘇る。

 暴力的で嵐のような剣を扱うために師匠が言ったアドバイス。

 これまでエリクはそれに愚直なまでに従ってきた。

 だからこそ不思議な感覚だ。

 まさか剣の方がエリクと一体になる日が来るなんて。


 エリクはそのまま後方に宙返りしながら、地面を掴んだ。






 左手で地面を掴んだエリクが、腕の力だけでまた強烈な加速を見せる。

 その速度たるや、魔獣のそれと比較してもなお爆発的だ。


『めんどくさい!』


 モニカが心の中でそう叫びながら、それを棒で弾く。

 だが、完全に横っ腹を叩いたのに恐ろしい反動だ。

 しかも弾いた棒が再び戻ってきた時には、もうエリクの剣が打ち込まれているときている。

 モニカは、もう棒をいちいち握る事を諦め、指の上で転がしながら”しなりと反動”で受け続けていた。

 こっちはこっちで超常的な反応だが、逆をいえばそれくらいモニカの能力を引き出されてるという事である。

 しかも、


『パワーじゃない。 エリクはからだの動きにまで”ベクトル魔法”つかってる!』

『俺の”苦手科目”は引き継がなかった訳か』


 俺がそう皮肉る。

 俺達にはどうもベクトル魔法のあの突発的な挙動が合わないが、ヴィオは違うらしい。


 続けざまに斬り込まれた一撃はどれも未設定のベクトル魔法を遠慮なく打ち込んだ”魔獣狩りの一刀”だが、向こうには御し切る余裕すら見えた。

 俺達が使えば必殺技でも、エリクとヴィオにしてみれば基本技とは。

 確かに二人共、今まで”それ”で生きてきたとはいえ、それを繋いだだけでこうまで使いこなすか。


 斬り込みと弾きが5回、6回と連続する。

 だがエリクの剣は弾かれても全く止まる事なく、全身を器用に回しながら次の攻撃に繋げていた。

 息をつかせぬ剣の嵐に、なんとモニカが後ろに引いたほどである。


 それでも剣の嵐の射程から一旦下がった俺達は、反撃のために剣戟の間にある無防備な瞬間に長い棒を突きこんだ。


 ほぼ完全な舞の様なエリクの動きは、見た瞬間それと分かる”弱点”がある。

 一撃が終わり次の一撃までの間、回転に翻弄されて無防備な体がガラ空きになるのだ。

 それはもう馬鹿らしくなるほどの大きな隙。

 意図的か翻弄されているかでかつてとは異なるが、それでもその性質は変わらない。

 ならば誰だって、”そこに長い武器で突けば終わり”だろうと思い至るだろう。

 事実、モニカも俺はそう思ったから突きこんだのだ。


 だが次の瞬間、エリクの体が僅かに動いて躱すと、捉え損なった棒の先端を彼の胴の端が逆に捉え、そのまま回転運動に巻き込む様に手繰り寄せたではないか。

 これでは、ど素人の横っ腹を突いたつもりが、刃のついたモーターの回転部に長物を突っ込んじゃったのと変わらない。

 良い子は絶対に真似しちゃだめだぞ。


 バリバリと音を立ててながら巻き込まれる俺達の棒は凄まじい力で引っ張られ、”グラディエーター”といえども態勢を崩した状態では引き剥がす事ができなかった。

 ベクトル魔法の加速が俺達のパワーで止まるわけが無いのだ。

 いや、そればかりか下手に引っ張ったせいで、エリクが飛び込む勢いを倍化させてしまっていた。

 眼前に迫るエリクの一撃、それを受ける為の棒は完全に抑えられている。


 それでもモニカは本能的に片手を離すと、それをなんとエリクの剣を握る手首に叩きつけた。

 間一髪、剣の直撃は免れたが、ただでさえベクトル魔法で加速され、その上で回転によって更に勢いづいた一撃で腕に走った衝撃は凄まじい。


『うぐっ!?』


 想像以上の負荷に全身の筋肉から負荷の警告が嵐のように巻き起こる。

 まずい。

 筋肉に負荷がかかったということは、外骨格の強化分で受け止めきれてない証拠だ。

 モニカが体を捻りながらその力を逃がそうとする、だがエリクの剣はそれよりも早い動きで力の向きを変え逃さない。

 蛇のように絡み合う棒と剣、それは斬り合いでも叩き合いでもなく、完全な”押し合い”になっていた。


 だがその状態は想像以上に俺達に不利だった。

 そもそも俺達が持つ最新技術で近接特化した”ハスカール”は”グラディエーター”よりも力が強い。

 ”グラディエーター”も同水準までアップデートされてるが、中遠距離向けに構成しているので分が悪いのだ。

 それに外部装甲の内側の筋肉量はモニカよりもエリクの方が多く、常に近くに俺達がいるので魔力は湯水の如く使える。

 先輩に教えてもらった魔力供給機構が想像以上に機能している証拠だが、こうなれば俺達の最大の強みである”魔力量の暴力”は完全に相殺された形になる。


 なにより、ヴィオの処理だけでなく思考速度が外部スキルで加速されていることで、エリクがベクトル魔法の強烈な押し込みを完全に制御しきっていることが大きい。

 これによって2人の連携は、今日初めて使う装備とコンビとは思えないほど上手く行っていた。


 完全に押し切られるか、俺が心の中でそう諦めかけた瞬間、モニカが手の中で棒をぐるりと回す。

 すると彼女の恐るべきセンスが他人では絶対真似のできない瞬間的な動きで棒の向きを変えると、片方で剣を抑え込んだ状態のまま反対側を叩き込んだ。

 流石にこの”速度”は想定外だったのか、エリクはつんのめる様に衝撃を逃しながら、俺達から離れる。

 だがモニカの追い打ちはそれを逃さんと苛烈な物だった。

 モニカに”絡め技”まで使わせるほど追い詰められているとしても、この棒の幻惑的な動きはそう簡単に破れはしない。


 一瞬にして形勢をひっくり返した俺達は、手持ちの【棒術】スキルの支援機能を全開にした。

 モニカに提案される大量の”攻撃パターン”。

 それを彼女の超常的なセンスが瞬間的に吟味し組み合わせた物を俺が読み解き、それ以上の一撃を繰り出す。

 相手の想像以上の連携には面食らったが、相手の希望の上を行き合う連携までは、”駆け出しコンビ”に真似のできるものではない。


 いつしか棒の形までもが、モニカの動きに合わせてグネグネと不定形に変化していた。

 ”フロウゴーレム製”ではなくなったので、魔法の実行は一部を除き事実上不可能になったが、それでも強度と変形速度は遜色ない。

 一方のエリクの剣は、完全な”フロウゴーレム製”だというのに剣の形も大きさも頑なに守り続けていた。

 おそらくエリクはもちろん、ヴィオにも自身を変形させるだけの余力がないのだろう。

 

 俺達だけがそれを使うのは若干気が引けるが、これも彼等の勉強だと思って受けてもらうとしよう。

 そんな風に俺は大人気なくも自分の優位点を押し通すことを決めた。


 誤算だったのは、ヴィオの学習能力を完全に甘く見ていたことだ。


 突然手応えが変わったかと思うと、俺達の棒が何か短い別の棒状のものに絡め取られていたのだ。

 モニカが一瞬だけ目を細めてそちらを見やると、それまで何もないシンプルなデザインだった筈のエリクの剣の鈍い金色の柄の両側から、何やら短い”棒”が飛び出していた。

 唐突に飛び出した隠し技に攻撃を弾かれたモニカが、焦った声を出す。


『これ何!?』

『すまん、俺が作ったやつだ!』


 俺が謝罪を叫ぶ。

 あれは間違いなく俺が夜のスキル整理中に暇になって色々作った中の一つ・・・【どこでもマジックハンド】の流用系だ。

 元々、色んな場面で普段遣いしていたフロウの触手をスキル化して強化した物だが、いつのまにこんなものまで・・・


『お父様のデータの中で見つけたのを、取り込んだんですよ』


 ヴィオの得意げな声が無線から流れてきた。

 あいつめ、どさくさに紛れて俺の廃棄ライブラリー没ノートまで漁ってやがったか。

 【どこでもマジックハンド】は現状のものを置き換えるだけの有用性を見いだせなかったので廃棄していたやつだが、俺と同じ動作ができないヴィオにしてみれば有用だ。

 こりゃ、他にも持ってかれてるやつがあるな・・・


 エリクの剣から伸びた2本の触手が、俺達の棒を絡め取らんと動く。

 その変幻自在の使い勝手は、俺達の棒の優位性を殺して余りあるものだった。


 防戦側にまわった俺達の棒の間を何度もエリクの剣がすり抜けそうになる。

 ”剣の柄”の働きで、こちらの防御が妨害されているからだ。

 しかもヴィオが直接動かしてるせいか反応が早くて振り切れない。

 棒と剣は、もはや殆どくっついているに等しい程に複雑に絡み合い、そうなると、エリクの持つ”パワー”という優位性がなお鮮明になった。 


 モニカが歯を食いしばりながら踏みとどまるも、押し込まれたエリクの剣はなかなか止まらない。

 ギチギチと音を立てながら、棒を上から押しつぶそうとするエリクの剣。


 こしゃくな!


 俺はそう叫びながら【魔力ロケット】を分解起動し、棒の中にその機構を入れて魔力を叩き込む。

 すると棒の両端が急に膨らみ、そこから轟音と共に噴射炎が飛び出した。

 唐突なその音と力にエリクの剣が一気に押し返される。

 どうやら、初めてまともに聞く減音されてない魔力ロケットの”生の音”にエリクが気圧されて力が抜けたようだ。

 そっちが”ベクトル魔法”なら、こっちは”魔力ロケット”である。


 その手応えに、俺達は”そのまま押しきれ”とばかりに、全身に一気に魔力を込めて反撃に出た。

 急造の小さなエンジンとはいえ、ヴィオのベクトル魔法相手でもパワーだけなら”魔力ロケット”は圧倒的だ。

 エリク達は、唐突に沸き起こった途轍もない力を前に完全に押し返され、ベクトル魔法の魔法陣ごと持ち上げられる。

 こうなれば、彼らに成すすべはない・・・いや、そんなことはなかった。


 ヴィオが何かの指示を出したのかエリクの発する気が変わると、それまで両手で持っていた剣から左手を離した。


「!?」


 何を考えているのか、両手で抑えられなかったものを片手で止められるわけもなく、押し込む速度が急加速する。

 だがエリクは同時に自由になった左腕を振り上げていた。


「【簡易インスタント魔法・マジック:掌底衝牙】!!」


 エリクがそう叫ぶと、左手の後ろから謎の器具が飛び出しその周りに魔法陣が展開される。

 はんこで作ったみたいな簡単で綺麗な魔法陣だが、そこに書いてることがヤバい。


 エリクはそれを殴りつけるように、俺達の胸元に叩きつけた。

 するとその瞬間エリクの左手の魔法陣がグシャリと潰れ、そこから漏れ出した魔法が衝撃波となって俺達の体を撃ち抜いた。

 その力はベクトル魔法や魔力ロケットとはまた方向性の違った突発的なもので、当然ながら俺達もそんな瞬間的に対応できるものではない。


 あっという間に棒から両手を引き剥がされた俺達の体は、地面に叩きつけられたかと思うと、そのままその反動で100m以上宙を舞ってから地面に無様に突き刺さった。

 

「・・・・」


 モニカが無言かつ無表情ですぐに土の中から半身を引き抜く。

 ”グラディエーター”を着ているのでダメージはないが精神的には中々のショックである。


『・・・あれは何?』


 モニカが何かを非難するような声を飛ばしてきた。

 どうやら俺を疑っているらしい、失敬な。

 答えはもちろん・・・


『すまん、あれも俺が作ったやつだ・・・』


 エリクが使ったのは、またしても俺が夜なべして組んだは良いが、使い所がなくて没にしていたやつだった。

 【簡易魔法機IMU】と名付けられたそれは、ピカ研謹製のインターフェースユニットにつけられている”拡張ユニット”をベースに俺が思いつきで作った代物だ。

 元々はカセット式で制御回路を丸々入れ替えるためのモジュールパーツだったのを、魔法の使用に特化してソフトウェア式で作っている。

 だが、使える魔法が簡単なものに限定されている上、そもそも俺はそんなものを使わなくてももっと複雑な魔法が扱えるので”いらない子”になってたのだ。

 ただ、どうやらそれをヴィオは勝手に ・・・”ハスカール”に組み込んだらしい。

 というか・・・


『どこからそんな物を持ってきたんだよ! ”ハスカール”の仕様書にも設計にも、渡した資材にも、そんなものはなかっただろ!』


 俺がヴィオに問を飛ばす。

 ”IMU”はデータではなく実体のある装置だ、当然使うには実物が必要になる。

 するとヴィオからは想像以上に予想外の答えが帰ってきた。


『今日、エリクの”次元収納”のアドレスが開いた時に、お父様方のアドレスから、いくつか使えそうな魔道具を転送しておいたんです。

 ほら、父様方の”次元収納”って、”使わない魔道具”がいっぱい入ってるじゃないですか、前に見た時にアタリをつけてたんですよ』


 あれ? もしかしてこの子、借りパク癖がある?

 唐突に明かされたかもしれないヴィオの思わぬ性癖に、俺の気分は一瞬だけ不良の娘を持つ親の気分がわかったような妄想に陥ってしまった。


 いや、それよりも大変なことがある。


『あの”ガラクタ山”から持っていっただ!? あの中にはとんでもなく危険なやつもあるんだぞ!?』


 ヴィオが言っているのは、間違いなく俺が”デバステーター”の破片で作った”試験品”の事だ。

 ”IMU”もその一つだし間違いない。

 とはいえ、中には非常に危険で俺もシミュレーションテスト以上の事ができない代物がゴロゴロしている超危険地帯である。

 間違っても子供が興味本位で持っていっていい物じゃない。


 だがヴィオはしれっとした姿勢を崩さなかった。


『もちろん、お父様の”管理部”の方に安全を確認してますよ。

 好きに持っていって良いって言われたのだけ持っていったのですが・・・』

あいつら ・・・・か・・・』


 俺は”夢街”が開いたときにだけ好き勝手に動く、警察や裁判所の面をした連中の事を思い出しながら仮想上の顔を押さえた。

 リソースの無駄を嫌う連中だ、きっと”リサイクル”のつもりだったのだろう。


『別にいいんじゃない?』


 そう言うなり、手元に棒を【転送】して構え直すモニカ。


『も、モニカ?』

『わたしもあの”ガラクタ山”はもったいないと思ってたから、エリクやヴィオが使うなら、ちょうどいいよ。

 使ってもらった方が道具のため』

『いや、そうはいってもな・・・』

『ほら、モニカ様もうそう言ってるんだし、良いじゃないですか』


 ”モニカ”という強力な後ろ盾を得たヴィオが既成事実を押し通そうとしてきた。

 したたかな奴め・・・

 一方のモニカといえば、IMUを使ったエリクに対し、爛々とした目の輝きを更に強くしている。

 どうやら、モニカ的には対戦相手が強くなるなら、それはそれで”アリ”らしい。


 まあ、確かにどこかで使えないか悩んでいたのは事実だし、”IMU”は危険なやつじゃないし、ざっと手持ちを確認しても”本当にヤバイの”は持っていかれていないし。

 俺はリストの中の”ディザスター災厄ユニット装備”の文字が消えてないことを確認すると、どっと不安が取れるのを感じ取った。

 流石に、あのスキルバカ共もこれを渡すほど耄碌はしていなかったか。


『いいか! 後で何を持っていったか全部のリストと管理状態のデータをよこせ! それと、この模擬戦中はそのIMU以外は絶対使うなよ! いいか絶対だぞ!』


 一応釘を刺しておく。 

 だがそれを聞いたヴィオは、本当に軽い声で返事を返してきた。


「はい。   ありがとう・・・・・ございます ・・・・・



 その瞬間、エリクの背中のジェネレーターから大量の魔力が流れ出し、それが左手のIMUの周りを渦巻き始めた。

 いくら”お許し”を出したとはいえ、それをいきなり使い倒すか。


 遠距離魔法を警戒したモニカが距離を詰めずにその場で構えを取る。

 100m以上離れているが、黒い魔力が漂うエリクの姿は禍々しく大きく見えた。


『ところで、”IMU”ってどんな魔法が使えるの?』


 モニカが聞いてきた。


『規格的には、俺が授業でつけてる”ノート”がそのまま入るが、あれの処理能力的に使える回路は単式で20、複式で5が限界のはずだ』

『じゃあ、”グラディエーター”のかたさなら無視してもいいよね』

『計算上はな』


 だが俺達は、その計算を否定するようにその場を動けなかった。

 するとそれを証明するようにエリクがいきなり、想定外の魔法を発動する。


「【簡易インスタント魔法・マジック:黒陣の短剣】」


 そう言って左手を伸ばす。

 すると左手のIMUの周りに漂う黒い魔力が、そのまま渦巻状に回転しながら形を取り始めた。

 しかもそれは魔法陣ではなく・・・完全な”短剣”の形ではないか。

 いや、それだけではない。


「【簡易インスタント魔法・マジック:黒陣の付与】」


 エリクが今度はそう言いながら、両手に持った”ヴィオの剣”と”魔力の短剣”を交差するように構えると、IMUから飛び出した魔力が”ヴィオの剣”の表面に流れ出しその剣身を覆う。

 真っ黒な魔力は、ヴィオの剣を覆うだけでは止まらずにさらに太く長く伸びていく。


 現れたのはエリクの身の丈を超えるほどの、炎のように蠢く魔力で出来た”黒い大剣”。

 そして同様の質感を持つ”黒い短剣”だ。 

 その二振りを両手に持ち、二刀流の構えへと変化したエリクの姿は元々黒い上に、炎のように揺らめく高濃度の魔力のせいでこれ以上無いほどに禍々しく見えた。


『・・・あれは?』

『すまん、あれは知らねえ・・・』


 間違ってもあんな禍々しい物を作った記憶はないし、IMUで扱える魔力で武器を生み出す魔法も作ってない。

 まさか、ヴィオがオリジナルで組み上げたっていうのか!?


 だがヴィオはそんな物は序の口だと言わんばかりに、さらに追い打ちをかけてきた。


『必要条件の達成を確認、【剣聖術Lv.1】が【剣聖術Lv.2】にアップデートされました』


「『・・・へ?』」


 俺達のそんな乾いた声が響いた刹那、エリクの体が横にぶれた。



『『はやすぎる!?』』


 俺達がそう反応したときには、もうすでにエリクは眼前まで迫っていた。

 モニカがたまらず横に飛んでそれを躱す。


 すると足のすぐ先を、真っ黒な閃光が一気に駆け抜けたではないか。

 真っ黒な魔力の炎を纏った大剣の斬撃は、元が片手剣だったとは信じられないほど巨大で破壊的に感じられた。

 だがそれに慄いている暇はない。


 観測スキルが一斉にアラートを発し、それにモニカが反応して腰を空中で曲げると間一髪。

 それまで俺達の胴が有った場所を今度は小さな黒い閃光が駆け抜けた。

 大剣のド派手な攻撃の中に紛れ込ませた、短剣の一撃だ。


『あの短剣なに!? どっから出てきたの!?』


 モニカが問いながら身を捩り、刈り取りに来た一撃を必死に躱す。

 もはや相手に合わせて棒を差し込む余裕もなく、逃げるように距離を取るので精一杯。


 【剣聖術Lv.2】の動きは計測上の速度こそLv.1と変わらないが、その動きの”質”が全然違った。

 今のエリクの動きは、参考にした”スコット先生”や”レオノア”をどこか彷彿とさせるほどの”キレ”に満ちており、一挙手一投足の僅かな緩急までもが感覚に対する危険な攻撃と化している。


『観測結果だと、あの短剣は単なる魔力の塊だが、どうやらIMUの簡易魔法陣作成機能を無理やり使ってるみたいだ。

 魔力量が見た目ほど多くないし、たぶん、”あれ”剥き出しの魔力回路じゃないか?』

『まじで!?』


 モニカがそう言いながら後ろに倒れると、眼前を件の短剣が駆け抜けた。

 長さは40cmくらいか、それに近くで見ると意外と太い。

 その状態からモニカはバク転の形に切り替えて反動でエリクの体を蹴り飛ばすも、スキルの支援でとんでもないことになっている膂力を前に、姿勢を崩すこともできない。


『【剣聖術】だっけ? ちょっと、つよすぎない?』

『俺もまさか、こんなに強いなんて・・・』

『ロン、こっちの【棒術】のレベルって、いくつだっけ?』

『えっと、”8”だ。 だが構造も目的も違いすぎて、比較にはならんぞ』


 俺達の使っている【棒術Lv.8】は結構なリソースをかけてるスキルではあるが、あくまでいくつもある支援系スキルの一つでしか無く、その内容も棒術を使う時によく使う機能を纏めたものと言う側面が強い。

 モニカの棒術能力の殆どは、モニカ自身の持ってる技能によって支えられていたのだ。


 対してヴィオに渡した【剣聖術】は、最初から”超剣士”の能力を完全再現することに主眼をおいて開発したものである。

 故に支援の幅も広く、与えられている権限も多い。

 なにより、開放するレベルを上げるだけで全ての戦闘技能をアップデートできてしまい、それまでと全く異なった戦闘スタイルだって使えてしまう。

 開発に投入したリソースが相当なものだっただけに、性能もとんでもない。

 ”あいつら”報われたな・・・


 とんでもない勢いで2本の剣を振り回すエリクの姿は、以前とは全く別の意味で”嵐”のような猛烈さを持っていた。

 以前なら付け入る隙はあったが、今は近づくのも正直こわい ・・・

 剣戟に魔力の炎が乗っているので見た目も10割増しで派手である。

  

 結果として俺達は気づかぬうちに少し距離をとっていた。

 モニカも棒の片側を持って槍のように扱いながら、常にエリクから5mの位置から突きこむスタイルに変わっている。

 こんな化け物染みた奴に迂闊に近づけるわけがない。 


 だがそんな様子を受けてか、エリクは急に俺達を追うのをやめると短剣の方を突き出して牽制しながら、大剣を背中の後ろに振り上げて構えた。

 するとIMUが唸りを上げ、大剣の魔力が急激に大きく濃くなる。


 なにか来る。


 俺達は本能的にそう感じ取り、両足に限界ギリギリまで魔力を込めて構えた。

 次の瞬間、エリクの右腕が文字通り・・・光となって消える。


『ひぃっ!!??』


 それまでのエリクを遥かに超越した動きで振り抜かれた大剣から、黒い魔力の”刃”が高速で撃ち出される。

 高密度に圧縮された黒い魔力が、進路上の全てを切り飛ばしながら俺達との間の距離を一瞬で駆け抜け、間一髪で躱したモニカの強化外装の表面を掠って傷を付けながら、勢いそのまま1㌔以上先まで飛んでいった。

 

 後に残った”爪痕”に俺達は盛大に肝を冷やす。

 一瞬にして地面にまっすぐ引かれた”溝”は存外に深く、その威力が見た目だけのものでは無いことを示していた。

 だがその表情も、続いて飛んできたエリクの”第二波”を躱すことに集中するために掻き消える。

 

 俺達が慄いている隙にベクトル魔法で距離を詰めたエリクが、魔力で作った”短剣”を強烈に突きこんできたのだ。

 モニカはそれをなんとか体を仰け反らせながら躱し、続くエリクの大剣の一撃を棒で弾いた。

 だが長短の二刀流に変化したエリクはそれで姿勢を崩すことなく、左手の短剣を引き戻しながら斬り込んでくる。

 変幻自在を誇るモニカの棒術も、速度の違う二刀流の早いリズムには間に合わない。


 モニカはまたもなんとか短剣を躱し、続く大剣を受け飛ばすのを繰り返す。

 余裕はまったくない。


 【剣聖術】のレベルが上ったことで、エリクに僅かに残っていた”剣の勢いに翻弄される場面”が完全に消失していた。

 これによって、エリクの剣はさらなる自在性を獲得する事になる。

 実体を持つ超攻撃力の”大剣”、実体を持たず変則的な動きを見せる”短剣”

 この2つの速度呼吸が入り混じった攻撃は、このスキルの”モデル”になった2人の剣聖を彷彿とさせるような”舞”に近いものであるが、そのどちらとも異なる新たなるエリクのスタイルでもあった。

 

 エリクが大剣の攻撃の角度を途中で変え、返す刀に合わせるように突っ込んで仕掛ける。

 これは躱せない。

 咄嗟に大剣の一撃をモニカが棒で受け止めると、剣に纏っていた魔力の黒い炎が吹き飛ばされてモニカの半身を激しく打ち付けた。


 それでもモニカは崩れること無く大剣の一撃を支えきると、続けざまに放たれていた短剣の突きを跳ね飛ばそうと棒を曲げて構える。

 だがIMUの機能により顕現しているため完全な魔力の塊であるその短剣は、実体物である棒の防御をするりと抜けてしまった。


「『っ!?』」


 その現象に完全に虚を突かれた俺達は、声にならない悲鳴を上げるしかない。


 その場にいた誰もが・・・少し離れて草を食いながら状況を俯瞰していたロメオを除いて、全員がエリクの勝利を確信した。

 そして”それ”が、結果的にエリクを襲う”悲劇”の原因になる。


 突如として、それまで戦闘に参加させず姿勢変化用のバラストに特化させていた、俺達の”ツインテール”が持ち上がったかと思うと、 そのまま俺達もエリク達も認識できない速度で振り抜かれ、エリクの後頭部に突き刺さったのだ。

 一瞬で視界から消えるエリクの体。


 今日一番の大轟音で巻き上げられた土砂は数百mの高さまで飛び上がり、大雨の様にしばらくの間その場を打ち据えた。


「え? え?」


 何が起こったか分からないモニカがキョロキョロと周囲を見回す。

 一方、何が起こったかは分かった俺は、”あちゃぁ”という思いで地面の”下”を見下ろしていた。


 俺達の足元には、身長よりも深い穴が穿たれ、その中央では壊れた”ハスカール”を着るエリクが俯せの状態で伸びている。

 よほど強い衝撃が走ったのだろう、ヴィオの剣身までもが曲がっていた。


『だ、大丈夫か?』


 いくら頑丈とはいえ、あの剣はヴィオの”脳みそ”に当たる機関だ。

 だが、ヴィオはそんな状態でも元気な声を返してきた。


『いたたた・・・、エラーの数がすごいですね、でもデータは大丈夫です』

『あぁ・・・それは良かった』


 俺の中に安堵が充満する。

 さすがヴィオだ、この程度じゃ死なないらしい。


『ごめんな、すごい攻撃だったから、【パッシブ防御】が反応しちまったみたいだ』


 俺は心の底から申し訳ない気持ちで謝る。

 横を見れば、モニカの頭の両側から伸びた”ツインテール”が自動修復されるところが見えた。

 どうも、エリクの最後の攻撃を危険と判断した俺の自動防御システムが、久々に反応して”ツインテール”を動かしたようだ。

 強化外装が完成してから久しく使ってなかったからな、俺達の余力に反応して投入したのだろう。

 エリクとヴィオの攻撃がいかに凄まじかったか。


 とはいえそこで迎撃に使われたのは、”ツインテール”の放つ自壊上等の”神速の拳”。

 当たったエリクの方はピクリともしない。

 あれ? これ大丈夫なやつか?


「・・・・死んでない?」


 モニカがそう言うと、俺達の頭の中からサーっと血の気が引いた。


『いえ、ショックで心肺が止まって、脳波が活動してないだけですよ』


 ヴィオがさらっとそんな事を言う。


『なーんだ、あーよかった』


 心肺と脳波が止まってるだけなら・・・・致命傷じゃねえか!!?


『おいおいおいおい』

『だめだめだめだめ』


 俺達が口々に慌てふためき、モニカがエリクに駆け寄る。

 とはいえ、外装が破損してるせいでどこから手を付けていいか。

 

『じゃあ、ちょっと起こしますね』


 だが、ヴィオはそんな軽いノリでそう言うと、次の瞬間エリクの体が”バシュン!”と音を立てて跳ね上がり、そのまま地面でムカデの様にのたくる。

 ログを見れば、恐ろしい事にヴィオは無理やり魔力で心臓と肺を動かし、マスクの中のコンプレッサーで高圧の酸素をエリクの肺の中に叩き込んでいる様子が見て取れた。

 恐ろしい子・・・


 ただ処置としては適切だったようで、エリクはすぐに息を吹き返すとそのまま膝をついて蹲りはじめた。

 まだ全身が痛いようだ。

 するとそれを見ていたモニカが気配を殺して手を伸ばし、回復魔法をかける。

 どうやらモニカなりに罪悪感が少しあったらしい。


 エリクの体の損傷は思ったよりも少なかった。

 というか心肺停止まで行ったことを考えるなら、全く無いと言ってもいいだろう。

 明らかに俺達の限界よりも速い攻撃をしていたことからしても、エリクの方が体が丈夫と見て間違いない、いやモニカの体が意外と脆いという可能性も・・・


 ”ハスカール”の方も機関パーツである骨格部分の損傷は殆どない、強度ではなく動きやすさのための骨格という設計が生きたのだろうか。


 ようやくエリクの容態が安定したのか、ハスカールの兜が開いて中から痛みのせいかしかめっ面のエリクの頭が出てきた。


「・・・だ、だいじょうぶ?」


 恐る恐るモニカが聞く。

 するとエリクはゆっくりと口を開いた。


「・・・ものすごく強かった気がしたんだけど、どう思った?」

「・・・え? おぼえてないの?」

「いや、ヴィオが頭の速度をすごく早くしてくれたおかげで、ずっと遅く見えてたから・・・分かんなくて。

 だからもしかしたら、ゆっくり動いてるのを誤魔化されてるのかなって・・・」


 あー、なるほど、どうやらヴィオの感覚のブーストが強すぎたのか。


「それで、どう思う?」

「どう思うって言われても・・・」


 口籠もるモニカに俺が答える。


『そりゃこんだけ強けりゃ、ラックBランク魔獣の前に放り出しても安心だ』


 正直、”やりすぎた感”が凄すぎた。

 いくらアクリラの外でこちらの制限が強かったとはいえ”グラディエーター”と渡り合ったのだから、単体での戦闘力なら同世代だとルーベンは置いといて、シルフィやアデルとも互角以上に戦えるんじゃないか?

 彼等には総合的には負けるとしても、この近接戦闘力はもし対処できなければ初手で封殺も十分に考えられる。

 モニカも同じ意見なので、俺達が”前衛”として求めていた戦闘力は完全に満たしただろう。


 するとそんな表情を読み取ったのか、足の下から見上げるエリクの表情が少し変わる。


「ひょっとして・・・・さっきの・・・ちょっと本気だったりする?」


 エリクがそう聞きながら身を起こす。

 するとモニカは手を伸ばしながら答えた。


「そんなことないよ」


 だがその声はものすごく軽く、それを誤魔化すようにエリクの手を掴んで引き起こすと、エリクの表情は何ともいえない物になった。


『いや、最後のはともかく、ちょっと”本気”だったのは事実だろ』


 今度は俺が指摘する。

 少なくとも途中から俺は、かなり全力で戦っていたつもりだ。

 モニカも内心では分かっていたのだろう。


『・・・ほんの”ちょっと”だよ』


 最後に俺にそう白状したモニカの心からは、なんとも悔しげな感情が流れていた。

 




 ちなみに、少し時間があったので今度はロメオと戦わせてみたのだが、


 手加減を知らない”ドラグーン”のパワーをまともに受け、それはもう、とんでもない勢いでボコボコにされていた事は、エリクとヴィオのプライドを守るために書かないで置くことにしたのだ。



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