2-15【流れ行く日常 7:~パーティメンバー~】




 スリード先生から連絡事項を聞き終わり、紹介状を渡された俺達は、早速その足で中央区の冒険者協会を訪れる事にした。


 どうやら月の締日と重なったらしく、凄まじい事になってる銀行の待ち列を横目に見ながら、仕事を求めてこれまた人で賑わう依頼斡旋のコーナーを横切り、この前パーティ申請をした窓口へと向かう。

 ご丁寧に、今日もあの・・獅子の獣人が座っていた。

 モニカが、流石に”今回はタライ回されないよな?”的な空気で窓口で紹介状を置くと、驚いた事に即効受理されてしまったではないか。

 この前との扱いの差はなんだ!?

 校長が書いたからか!?


 紹介状の内容を確認した獣人のおじさんは、一旦後ろに下ると、頑丈な扉付きの棚から何やら書類の束を取り出して戻ってきた。

 そしてその束の中から俺達がこの前出した申請書を取り出すと、窓口に置かれてる大きな魔道具に翳す。

 すると魔道具が特殊な模様の魔法陣を浮かび上がらせ、獣人がそれを読み解き小さく「ああ、これね」と呟いた。


「パーティ作成の許可は出てるよ、ちょうど今日みたい。

 校長先生が認めたみたいだね」

「あ、はい、メンバーを紹介してくれるって」


 モニカが半ば興奮気味にそう言ってずいと顔を寄せた。

 その様子におじさんが”待て”の仕草をして諌める。


「確かに、冒険者協会から君に紹介したい人が居るみたいだ、流石に指定通りとはいかないけれど」

「どんな人ですか?」


 モニカがそう言うと、受付のおじさんが魔道具を操作して協会の情報を取り出した。


「年齢不詳の凄腕剣士とその”弟子”の12歳の少年。

 この半年くらいで凄い活躍を見せていて、少年の方は近辺でも注目株らしい。

 でもお師匠さんの方があまり動けなくなってきて、代わりに少年と組んでくれる相手を探してる。

 異性だけど、君と同じくらいの歳の前衛でアクリラ生以外だと、たぶんウチで紹介できる中じゃ1番有望じゃないかな」


 ほう。


『12歳か』

『いっこ上?』

『もう誕生日来てるだけかも知んねえぞ、どっちにしても誤差みたいなもんだが』


 だが俺達と同じくらいの注目株か。

 その単語から、なぜかルーベンの姿が浮かんでくる。

 流石にそこまで強い訳はないだろうが。


「戦歴は?」

「協会からの依頼は害獣駆除が殆どだけど、魔獣討伐数が多いね、それも大物ばかり。

 あ、トルアルム地域の討伐軍への参加経歴もあるよ。

 今までのスコアは2人で30体以上、少年だけでもCランクが3体いる」

『へえぇ、スゲーじゃん』


 俺達と同い年でCランク撃破経験がある子なんて、アクリラ生でも滅多に見ない。

 しかも3体ともなればマグレではないだろう。

 となると、魔獣討伐のキャリア的にはシルフィ並で俺達やルーベンよりも上だ。


「すごく強いんですね」


 モニカが嬉しそうにそう答える。

 まさか、そんな強い前衛を紹介してもらえるとは思ってなかったからだ。

 正直、武器をなんとか振り回せるくらいのを想定していた。


 だが、おじさんの顔はなんとも言い難い感じに資料を見つめている。


「ただ、その子に会ったら言ってほしい事があってね」

「言ってほしいこと?」

「戦士学校に行って欲しいとのことだ」

「はあ・・・」


 戦士学校ねえ・・・


『まあ、それだけ強けりゃな。 経歴的にはトリスバルだって行ける』


 魔法士じゃないのでアクリラは無理だが、それだけの経歴があるならどこにでも行けるだろう。

 むしろ行ってない事の方が不思議なくらいだ。


「国立の騎士学校は駄目でも、こういう子には、せめて協会がやってる戦士学校は行ってほしいんだけどね」


 おじさんがそう言いながら困ったように頭を掻く。


「直接言ってないんですか?」

「言ってるんだけど、納得してくれないんだって」

「なんで?」

「さあ、個人の心情までは書いてないからね。 でも推薦したいと書かれてるからには、かなり有望なんだろう。

 君への紹介も、校長先生のものだし」


『確かに校長の目に止まるからには、相当目を引くなにかがあるんだろうけど』

『うん、どんな子だろう』


 俺達はそう言って、まだ見ぬ”仲間”へ思いを馳せた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 

 数日後


 朝。



「行ってくるね」

「行ってきまー」


 俺達が揃ってそう言う。


「う・・・・いってらー・・・」

「ん・・・・・・ませ・・・」


 するとルシエラとベスがそう言って眠い目を擦りながら手を振った。


「・・・今日中んい・・・・・帰るんだっけ?」

「うん、今日はそんな遠く行かないから」

「ヴェレスに行って、相手と打ち合わせして、もしかしたらちょっと郊外で演習でもするかもしれないけど。

 今日中には帰れるよ」


 上手く行けば、来週からでも1泊2日か2泊3日で遠征を始めるけど、流石に相手を知らねば無理な話だ。


「また・・・脚が早くなったこって・・・ふわあああああ」


 ルシエラがそう言ってライオンみたいなアクビをすると、それに釣られてベスも伸びる。

 その様子を見ていたモニカは幸せな気分のまま外に出た。


 扉を開けて外に出ると、まだ空が白んでるだけの早朝が俺達を出迎える。


 すると、待ってましたとばかりに庭からロメオが現れて相撲を求めてくるが、いつも下着一丁の時間なのにフル装備かつ制服でないモニカを見て不思議そうに首を傾げた。


「今日はこっち・・・だよ」


 モニカがそう言いながら、次元収納から取り出した”ワイバーンユニット”をロメオの背中に付けて展開する。

 すると”これはこれで”と思ったロメオが1回飛び跳ね、すぐにしゃがんで”搭乗”を促した。

 モニカが地面を蹴ってその背中に飛び乗ると、全体に魔力が流れ”ワイバーン”が展開される。


『DMPモードオン、AMU動作終了、BBS、BAS共に正常、RCASオン、WYクリア、WPクリア、WJクリア、FSS初期値に設定、Bフラップ、Gフラップ全開・・・』

『ねえ、それ必要?』

『何言ってんだモニカ、飛行前チェックリストは絶対だ! 飛行の安全を確保するものだ!』


 こういった一つ一つのチェックが、悲劇を未然に防ぐのだ。

 だがモニカは納得しない。


『でもそれ、半分以上必要もないのにロンが分けて作ったやつじゃん、FMISの補助スキルなら纏めて出来るはずでしょ?』


 とすぐに指摘を入れてきた。

 まったく、感情が伝わるからって・・・


『モニカはロマンがないなー』

『”ロマンで空は飛べん!”って言ってたじゃん』

「キュルル」

『わかったわかった、すぐに飛ぶよ』


 ”2対1”では流石に分が悪いと諦めた俺は、結局昨晩作ってた統合運用システムに操作を丸投げする。

 するとすぐに庭に広げられた翼が空気を孕んで俺達の体が浮かび上がった。

 もうここまでは完全に自動で動くほどスキルとしてまとめ上がっている。


 朝の寮と言うこともあって、一気に出力は上げずにエアドライヤー程の騒音を維持して離陸し、しばらくしてから徐々に出力を上げ始めた。

 既にこの形で数日運用しているが、苦情は出てないので問題はないだろう。

 いつも”朝相撲”を見ている隣の部屋の3人が、”何だ今日はやんねーのか”的な顔で去っていくのが苦情といえば苦情か。


 そのまま俺たちは東山の朝霧を切り裂くように空を飛び、高度と速度を上げて山の上へと顔を出した。

 残念ながらまだ東山の”カラフルな林”に日は差してないが、霧のヴェールが薄っすらと街を覆う様はこれはこれで乙なものである。


 それを見ながら俺達は、”ワクワク”という表現が似合う気分を抱えて街を飛び抜け、アクリラの郊外を北へと抜けていった。

 思ったよりも往来は多いが、それでも空はやはりスカスカだ。

 他に飛んでる相手は場所も違うし、高度も違う。

 時折接近しそうな相手には、教習所で習ったハンドサインと魔力光による信号でやり取りしながら避けてく。

 スカスカではあるが、迂闊に速度は上げられない感じかな。

 まあ、元々アクリラ行政区内は速度制限があるので変わらないのだけれど。


 それでも広い広い行政区の北の端の近くまで飛んでくると、進行方向に見える飛行物体は片手で数えられるレベルになった。


『かいてき♪』

『こんな早く行政区の端が見えてくるとはな』


 速度制限下とはいえ、それでも地上の倍以上は出ているし、交差点や渋滞のない空をまっすぐ進むというのは、やはり次元の違う移動手段の様だ。


 そのまま俺達は行政区の境界線をなんの躊躇もなく突き抜けると、全身を舐めるように駆け抜けた違和感に若干震えつつも、ついに得た自由を謳歌するように一気に速度を上げた。

 眼下の地面の流れる速度が一気に上がり、何人かの先に飛んでいた魔法士を追い越す。

 速度制限も騒音制限もアクリラ行政区内での話だ。

 多少の配慮は必要だが、ブースターに火を入れなければ少々飛ばしたところで問題はない。

 そのまま俺達は”ワイバーン”の飛翔能力に物を言わせて空を突き進んでく。


『どこまで出せる?』

『手応え的に、全開なら音速は余裕で超えるな』


 普段使いの”巡航モード”でこれなのだ、”戦闘モード”や”高速モード”を解禁したらどうなるか。

 少なくとも、もう飛竜より全然速い事は間違いないだろう。


 そうこうしていると、あっという間にヴェレスの街並みがちょっと怖い勢いで迫ってきた。

 初めて来たときのあの永遠に長く感じられた距離が嘘のような短さだ。

 俺はロメオに着陸の指示を伝えると、彼は姿勢を起こして翼を立て、更に俺がすべての羽を広げる事で一気に減速を始める。

 流石に空飛んだまま街の中心部に乗り付けるのもどうかと思った俺達は、待合場所であるヴェレス南区の冒険者協会近くの人のいない公園へ舞い降りた。


「キュルルッ」


 ”ワイバーン”を解除すると、ロメオが名残惜しげに首を振る。

 どうやらまだ飛んでいたいらしい。

 その気持ちは分かるが時間がない俺達は、ロメオのお尻を軽く叩いて移動を始めた。


 ヴェレスのこのあたりを彷徨いたのは、アクリラについた日の朝のことか。

 あの時はゴーレム達に追い回されて本気で死ぬかと思ったものだ。

 ちょうど、足を切り落とされかけた市壁の場所が左手に見える。

 だがアレはモニカも嫌な思い出なのか、軽く一瞥するだけで何も言わない。


 ”あいつ等”どこに行ったのかな?

 あの時、奇妙な経緯で共闘する事になった3人の事を思い出す。

 ”勇者ゴーレム”と渡り合った、細身の男は別にして一緒に逃げた2人組は無事に逃げられたのか。

 もしかしたら、まだその辺に居るのかな。

 そんな事を考えながら後方視界から路地を眺めていく。


 この辺りの景色は、すっかり”普通の街並み”の空気をまとっていた。

 本当にここで俺達は戦ったのだろうか?

 あの角から、ゴーレムが何体も湧き出してきたのは夢ではないのだろうか。

 あのゴーレム達も今はどこに行ったのだろう。

 興味ないし聞くのも怖いので聞いてないが、校長辺りは把握してそうな気がする。

 ・・・聞いて教えてくれるかは別だけど。


 魔力で吹き飛ばしたビルの壁は、元通りというか、おしゃれなバルコニーのような物が追加されていた。

 しかも、どうやらそこで喫茶店をやってるらしい。

 ぶち抜かれたのなら、その穴を使ってやろうじゃねえかという、転んでもタダでは起きない商人魂を感じたものだ。

 以前、実験のために来たときにも見ている記録があるが、あの時はそれどころじゃなかったせいか、殆ど印象の方には残っていない。


 思い返すと、ヴェレスっていい思い出が無いな。

 だが、こうして落ち着いて見ると、中々どうして良い街並みじゃないか。


『味気ないアクリラって感じ?』


 モニカはそうでもないようだが。





 南区の冒険者協会にやってくると、意外なことに、あまり商業的な空気を感じなかった。

 それよりかは、もっと”冒険者”っぽい方を専門にしているフシすらある。

 前に北の方の協会を利用した時は、完全に銀行の類という雰囲気だったが棲み分けでもしているのだろうか?

 受付前に沢山のテーブルの食堂が併設されており、そこで厳つい男達がくだを巻いていた。

 とりあえずRPGに出てくる”酒場”を思い浮かべてくれ、まんまあんな感じである。

 ちゃんと”クエスト”の受注まで出来るんだぜここ。

 わざわざ窓口にもそれっぽい・・・・・受付嬢を配置しているし、そういう拘りでもあるのだろうか?


「こんにちは」


 とりあえずモニカがその窓口に向かい、受付嬢のお姉さんに元気よく挨拶する。

 するとそのお姉さんがキリッとした表情を返してきた。


「おはようございます。 本日はどのようなご用件で?」


 お、このお姉さんできるぞ!?

 モニカの姿を見て”嬢ちゃん”方向ではなく、”手練れ”の臭いを嗅ぎ取りやがった。

 まあ、これだけ”ザ・アクリラ生”みたいな格好をしていればそう来るか。

 

「うんと、これ」


 そう言いながらモニカが懐からスリード先生に貰った校長の紹介状を窓口に置く。


「拝見します」


 お姉さんがそう言って封を開いて中を見る。

 すると事前にある程度合点がいっていたのか、手早く事務処理を行ってくれた。


「ご紹介の方はもう来てますよ」

「本当ですか?」

「ほら、あそこのテーブル。 見える?」


 受付のお姉さんが食堂の一角を指差す。

 だが角度の問題か、沢山の人の中から特定するには至らない。


「エリクさーん!」


 するとお姉さんが大声で呼びかけ手を振りだし、それに釣られて奥のテーブルでくすんだ金髪が動いた。


『あれか』

『どれ?』


 モニカが自分の目で確かめようと後ろを振り向く。

 するとその”少年”と目があった。

 聞いていた通り、同年代の男の子だ。


 だがその印象は、同年代と聞いて想像するよりかはしっかりしている。

 背はルーベンと同じくらいか、だが肩幅とか筋肉の付き方がしっかりしていて、既に”戦士”の風格すら漂わせていた。


『うん、合格』


 モニカが初見をそう評した。


『おお、モニカが認めるとは優秀じゃないか』

『肉の付き方がきれい』

『ほうほう、どれどれ、ちょっと失礼』


 モニカの見立てに興味を持った俺は【透視】を使って少年の”服の下”を透かして見る。

 すると表面的にも内部的にも派手さはないが、よく締まった良い筋肉が現れた。

 おお、見た目に反して結構いい体してんじゃん。

 明らかに全身を使い込んでる筋肉だ。

 すると俺達の視線を感じたのか、その筋肉が一瞬で緊張する。

 勘も鋭い、っと。

 脂肪の割合も健康的で、胃の内容物にやや偏食の気があるが内臓の動きも問題ない。


『ただ、Cランク魔獣を討伐できる様には見えないな』

『何かあるんじゃない?』


 なかなか俺達好みな体をしている少年だが、そのくすんだ様な印象は決して強そうな雰囲気ではなかった。

 武器は腰に下げてる剣が一本。

 それほど大きくも太くもないが・・・


『ん?』

『どしたの?』

『いや、あの剣・・・・』


 【透視】による解析だと、あの剣の組成は金属ではない。

 恐らく何らかの魔力素材だろう。

 となると、”魔剣”の類の可能性があるか。


『あの剣、何か・・あるな』


 そのなんとも言えない存在感に、俺の興味が一気に向かう。


『とりあえず挨拶してみよ』


 モニカはそう言うと、受付のお姉さんにお礼を言ってエリク少年の下へと歩み寄っていく。


「えっと・・・エリクさん?」

「はい、はじめまして、エリクです」


 そう言うとエリク少年が立ち上がって握手を求めて手を伸ばしてきた。

 モニカがその手を握る。


「モニカです」


 だがモニカはそう言うとその手を反対の手で掴み取り、そのまま両手でエリクの腕を弄り始めた。


「え!? えっと、なにやって!?」


 突然腕を弄られ、エリクが驚きに満ちた声を上げる。

 そりゃ、いきなりはビックリするわな。

 だがモニカは止まらない。


「でも”変な付き方”はしてる・・・本当に剣士?」


 モニカがそう問いかける。

 実際、彼の腰に下げられた剣の大きさを勘案すると、ちょっと不思議な筋肉だ。

 普段はもっと大きな力を使っているかのよう。


「えっと、鍛冶屋の手伝いをしていて」

「あ、なるほど!」


 モニカが合点がいったように、そう言ってエリクの手を離す。

 するとエリクはまるで生娘のような感じに恥ずかしがりながら手を引っ込めた。

 少年のこういう反応はモニカは好きだろうが、俺は違和感が大きいな。

 まあ、この世界のセクシャルバランス的に、今のは完全にセクハラである、仕方がない。


 だが鍛冶屋か・・・


 この世界で単純に標準的な筋肉量を比較した場合、戦士以上に強いのが”職人”である。

 日頃から超重量の工具や素材を振り回しているだけあって、その力はかなりのもの。

 特に鍛冶屋は馬鹿みたいに重いハンマーを振り回し、素手で曲げ加工までやってしまう。

 エリクの筋肉もそうやって鍛えたのだろう。


 だがモニカが”よしよし”と心で頷きながら、エリクのニの腕を擦っているとき、その彼女から”あれぇ?”的な感情が漏れてきいた。


『ねえ・・・この子と、どこかで会ったことある?』


 そう聞きながら今度はエリクの顔をじっと見るモニカ。

 すると、エリクの表情が異性に見つめられたせいか緊張した。


 ただ、この顔に見覚えね・・・


『気のせいじゃねえの?』


 言っちゃ悪いが、どこにでもいる普通の顔だし、特に目につく特徴もない。

 強いて言えば、この子も俺たちと同じで魔力傾向が髪に出ない体質か。

 だがモニカは違うようだ。


『うーん・・・そうかな?』

『こんな顔に、”エリク”って名前もどこにでも居るだろ?』


 俺はそう言って素気なく可能性を否定する。

 去年まで”交友関係ゼロ”の子供が、早々都合よく過去の知り合いにばったり出会うことなどあるわけ・・・


『・・・あれれ?』

『どうしたの?』

『なんでか知らないけど・・・検索結果にヒットが有った・・・』

『ほらやっぱり!』


 モニカから、どうだ! とばかりの感情が流れ込んでくる。

 ええ? でもおかしいな、こんな子の記憶なんて・・・

 そう思いながら俺が検索結果を表示する。


 するとそこに表示された情報に、思わず「あ・・・」という俺の声がモニカの口を勝手に使って飛び出してしまった。


「・・・? どうしたんですか?」


 その声にエリクが不審げに聞いてくる。

 と同時に、向こうも何かが引っかかったように怪訝な顔で俺達の顔を見てきたではないか。

 

 いかん!? ごまかさんと!


「いや、なんか思ってたよりも小さいなって、ははは・・・わたしもちっちゃいけど・・・」

「・・・・」


 モニカの言葉にエリクがジト目で返す。

 だが、流石に”こちらの正体”までは思い至らなかったようだ。


 一方、今のやり取りで完全に相手の正体に思い至ったモニカが恐る恐る確認してくる。


『この子、”あれ”だよね? あの”ヒドラ”の時の・・・』

『ああ・・・あの”コイロス・アグイス”に襲われたときに、俺達の戦果をおっ被せた少年だ。 まさか、まだこの街にいたなんて・・・』


 それは本当に久々の・・・そしてまったく予想してなかった再会だった。



 そしてこれが、”俺”にとっての大きな転換点となっていく・・・


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