2-12【新たな日常 3:~楽しい?初夢~】

sideロン



 新年の最初の夜。

 

 ほんの少し前まで馬鹿騒ぎしていたせいか、寮の中は全体的に水を打ったように静か。

 木苺の館の中では住人2人の小さな寝息が、やけに大きく聞こえている。

 俺はその静かで平和な光景を確認しながら、今夜も意識だけの世界へ潜っていった。


 夜、俺ができることは意外と多いということに気づいてからは、昼間よりもむしろ夜の方が忙しいという生活を送っていた。

 スキルの再調整や、新たな技術のシミュレーション、時にはフロウを伸ばして外で実験することもある。

 だがその中でも、特に”特別な時間”というのがモニカが”夢”を見ている時だろう。


 夢を見ている間、人の脳というのは本当に特殊な動き方をする。

 特に俺にとっては”仮想化”系のシステムが、起きている時と比べても圧倒的に高性能化するのだ。


 それを利用して今ではこんな事も・・・



 ”ウィーン”という、近未来的だがどこかチープな音を立てて、総ガラス張りの自動ドアが開かれる。


「こりゃ、今日はまたすごいな」


 そのドアの先に広がっている光景を見た俺は、思わずそんな感嘆を漏らした。


 現れたのは、一面コンクリートと怪しげなネオン輝く巨大都市の光景。

 これは事前に作った”スキルマップ”を”夢パワー”で仮想世界化した空間。

 それは時にメルヘンだったり、時にSFチックだったりと、毎度全く違った姿を見せるが”街”という姿を見せるところだけは一緒だった。

 強いて法則性を上げるなら、その時モニカが見ている夢の内容に左右されやすいというくらいか。 


「こりゃ、”初夢”の内容はあまり期待できないな・・・」


 俺は上を見上げながらそう呟いた。

 煤煙で真っ黒な空から、なんとも陰険な雨が零れ落ちるその街は、どう見てもディストピアSFの暗黒未来都市そのものである。

 人々はビニール製の唐傘を差し、紙パックから汁の少ないラーメンを啜り、その間を健康に悪そうな煙を噴き出すタイヤのない車が往来している。

 ご丁寧なことに街に中心には、”FMIS”とデカデカと印字されたピラミッド型の”悪の大企業ビル”まで・・・まさに俺が今しがた出てきたビルだが、少なくとも”ハッピー”な見た目ではない。


 この街に存在する全ての建物が、俺達の持っているスキル1つ1つを表している。

 中には外には向かわず、体調だけを整えたり他のスキルが利用することを前提とした物も多いため、それが”街”という形態をとって表現される所以なのだろう。

 歩き回る人々はさながらスキルを構成する”力”か、いや他のスキルへの連絡も行うから一つ一つの”要素”というべきか。


 俺はそんな”夢の世界”の中を慣れた足取りで歩く。

 別に目的地までの道筋を知っているわけではない。

 何故か適当に歩いていると目的の場所に、やたらすぐに着くのだ。


 ちなみに今日の俺の身体はモニカの体をちょっと男的にした感じ。

 ”アタリ”の方だろう。

 他にはモニカそのものだったり、カミルやスコット先生、メリダなんて日もあるが、”ハズレ”だと気体だったり、液体だったり、身体がないなんて事もある。

 この辺はモニカのその時の気分次第なので、人の形があるだけマシなのだ。

 

 そして”予定通り”、俺はすぐに目的の場所にたどり着いた。


 そこは1軒のボロボロのアパートの様な建物。

 その前にはステレオタイプな浮浪者がケミカルなタバコを吹かして、虹色の痰を吐き続けており、壊れかけて地面に落ちている看板には申し訳なさそうに【剣術Lv3】と記されていた。

 フランチェスカの中では比較的高レベルなその数字も、この打ち捨てられた外観に掛かっていれば皮肉に見える。


 俺はそんなボロアパートの立て付けの悪い扉を無理やり開けて中に押し入った。


 現れたのは外観同様、ボロボロの剣道場のような内装。

 しかも、この街に合わせてどこか”これじゃない感”を漂わせている。

 ゴテゴテの謎の漢字が彫り込まれた刀が剥き身で刀掛けに4本置かれ、そのうえに”心が斬る”と書かれた掛け軸が掛かっていた。

 そして肝心の住人は、やさぐれた熊みたいな男が酒を飲みながら不貞腐れ、その後ろでマッチョな大男がひたすらダンベルを持ち上げている。


「おや、こんなところに・・・お偉いさんがなんのようですかい?」


 酒を飲んでいる男が俺に声をかけてきた。

 この街で俺のことを知らない奴はいないが、こんな風に不遜な態度を取ってくるやつは珍しい。

 俺は何とかその迫力に負けじと踏みとどまると、努めて平静な声で切り出した。


「”仕事”を頼みたくてね」

「仕事ぉ?」


 男は不審そうにそう言うと、手に持っていた小さな酒瓶を懐にしまい、近くのテーブルの横に腰を下して、そのテーブル上に乱雑に散らばっていたガラクタを腕で床に掻き落としてから、反対側の椅子をこちらに勧めてきた。

 俺はその様子に今度こそ圧倒されながらも、なんとか威厳を保ちながらその椅子に座る。


「新スキルの組成だ、これを見てくれ」


 そう言って、いつの間にか手に持っていた鞄から取り出したのは、大量の書類の束。


「レオノア戦で獲た、”剣を使う勇者”の情報・・・それを元にシミュレーションを重ねて練り込んだ【剣聖術】の草案だ」


 それを広げながら俺は、さらに大まかな内容を説明していく。

 すると目の前の男は興味深そうな顔で書類の内容を見つめた。


「なるほど、たしかにこいつを10分割した”Lv1”は、現行の【剣術Lv3】より遥かに高度で強力ですな」


 やはり”現場”の者は反応が早い。


「やってくれるかな?」


 俺は確信を込めてそう問いかける。

 だが、その男の表情は晴れない。


「これは、身長190cmで手足の長い男が長い剣を振り回すための仕組みだ。

 142cmの手足の短い子供の女が使う物じゃない」

「その為の”君達”だろう? ”だからできない”ではなくて、”やるためにこうしよう”ってのを教えてほしい。

 その為にわざわざやって来たんだ」


 これは一種の”実験”だった。

 スキルの内容に対する積極的な干渉というのは、”フランチェスカ2.0強化計画”の3本の柱の内まだ取っ掛かりすら見えていない内容である。

 だがこうして、仮想的とはいえ直に会って話せる環境であれば、例えうまく行かずとも何かの切っ掛けくらいは見えるかもしれない。

 そして幸運な事に【剣術】を司るこの男は、【剣聖術】を前に考えて・・・くれていた。


「・・・うーん、おい”神経図”持ってこい」


 男が後ろでダンベル上げ下げしてる大男にそう言うと、大男が「へい」と返事して、ガラクタにまみれた中から2m四方はある巨大な紙を何百枚と拾い上げ、それをテーブルの上にドサリと広げた。

 衝撃で大量のホコリが舞い上がる。


「うへえ、すげえ量だ」

「当たり前ですよ、人の体を何だと思ってんですか」


 紙に書かれていたのは人の形の枠に描き込まれた、凄まじい量の”線”。


「運動神経、感覚神経、魔力神経、血管、リンパ網、生体魔力網に筋肉配置、脂肪配置、魔膿状況表、全部に全体図と細部図があって、更に諸注意が並ぶ。

 これら全てに目を通して、問題ない動作を作らないといけない」

「大変だな・・・何とかならないのか?」

「死にたいならどうぞ。 どこの世界でも上は”なんとなく”や”適当”で済むかもしれないが、”現場”は違うでしょ?

 ウチらは”それどうなってる?”と聞かれて、”細かい所は分かりません”じゃ済まないんですよ、ボスのあんたと違って」

「あぐっ」


 現場から飛んできた”毒”に俺が呻く。

 そんな風にボスと言ってくれるなら、もうちょっと俺を立てないと職を失う・・・そうかこいつ等、クビにできないんだった・・・


「あー・・・・ん、こりゃ駄目だ」


 しばらく図面を眺めてた男が、突然吐き捨てる様にそう言う。


「なんでだ?」


 俺が聞き返すと、男は即座に図面の一角を指す。


「ここ、起動魔力用の回線が細い、反応が届かないか、”主”の直接命令と干渉する」

「じゃあ、こっちの太いのは・・・」

「そりゃ心臓用の回線だ、死ぬぞ?」

「え? じゃあこっちは・・・」

「戦ってる最中に漏らしていいなら」

「んぁあ! なんとも行かないな」

「そりゃ、元々の体でできない事をやるわけですから、やりたい事の100分の1もできませんよ」


 はぁ、なんだかカミルの事が神様の様に思えてきた。

 いや実際、フランチェスカの大部分を作ったのは彼だし、俺にとっては創造神みたいなものなんだけど。


「それよりも、この命令をこっちで変換させて・・・」

「ほうほう」

「これなら、512回の所を1024回命令で記述できるので、こっちの神経でもいける」

「時間は倍になるけどいいのか?」

「倍ですが、一瞬過ぎてたぶん気付ける差じゃないですよ? それよりも・・・」

「ふむふむ」


 それから俺達は、2人してモニカの”解剖図”全身を指で突っつきながら、ああでもないこうでもないと議論を交わしあった。

 オリジナルのスキルを1つ拵えるというのは、なかなか骨が折れる作業で、俺が”これはいけるか?”と問えば、すかさず男が否定を入れる。

 安全基準がどうだの、命令順番がどうだの、その動きはできないだの、本当に注文が多い。

 だがそれは、”スキル”というものがどういう物で、どういう風に動作するのかという何気ない疑問が解消されるようで大変勉強になった。


「だから! 感覚神経に運動命令は入りませんて!」「この動きだと手が干渉します!」「これじゃ目が追いつきませんよ!」「殺す気ですか!?」「骨の強度は・・・」


 ああ! うるさい!

 気づけばダンベル上げてた大男の方まで混じって、文句を付け始めているではないか。


 予想以上の現場のクレームに、俺は必死に解決策はないかと脳を絞る。

 この草案だって、祭りで空いたリソースをほぼ全てシミュレーションにブチ込んで得たものなのだ。

 それで何も得る物が無いじゃ、担当部署にもリソース管理部にも顔向けできない。


「なんとかリソース回すから」

「魔法系に影響が出ますよ?」

「それも折り込んでの”必殺技”なんだよ!」


 俺はなんとか彼らに気に入られようと、言葉を捻り出し続ける。 

 実際、【剣聖術】は完成すれば十分必殺技級なので、多少のリスクはご愛嬌だ。

 それに実験の意味合いが強いので駄目で元々。


 そうやって、どれくらいの時間が経っただろうか。

 ”夢の世界”は時間の流れが恐ろしく速いので、外はまだ数分かもしれない。

 だが、それでも俺達はついにやり遂げた。


「まあ、これならどうにか起動許可の申請はできるでしょう。 結果は保証しませんが」


 という言葉を男の口から引き出したのだ。

 やったぜ俺! ついに・・・遂にオリジナルスキルの組成という野望の達成の第1障壁を突破した!

 あとはこれをFMISのシミュにかけて、起動テストに合格すれば晴れて【剣聖術Lv1】の完成だ!

 まあ、その後さらに実地での”微調整地獄”が待ってるんだけど・・・


 だが男達の表情はなんとも晴れない。


「どうした? まだ無理なのか?」


 俺が絶望気味にそう聞く。

 すると2人の男達は揃って首を横に振った。


「いや、ボスが”やれ”というなら、それに従うしかないのが俺達”1スキル”の本分だ。 みんなそういう覚悟はできている」

「”本音”は違うと?」

「・・・・」


 男達が気まずそうに押し黙る。

 だがすぐに何か意を決したように表情を固めると、重そうな口を開いて彼等の心中を吐露した。


「・・・はあ、”主”は”棒術”を使うでしょ?」

「まあ・・・そうだな」


 俺はそこで、彼らが何を心配しているのかを察した。

 ”使われない”事だ。

 モニカは戦闘においては現実主義者だ。

 特に危険と近い近接ともなれば、強力なスキルよりも長年親しんだ棒術を使うだろう。

 実際、使われている近接スキルはどれも棒術と組み合わせられるものばかり。

 この”夢の世界”でも、【棒術】と関連補助スキルは摩天楼の様に表現されていた。


「もともと俺達【剣術】は日陰者だ。 身体補助系でも花形の【棒術】と比べて信頼が無いのは理解してる。

 だが、ここまでやっても使われないんじゃ、俺達も張り合いがねえ・・・

 リソースを食い散らかすことになるから肩身も狭くなるしな」


 なるほどな・・・これが日陰者の悲哀というものか。

 俺はそのなんともいえない空気の中で、どうしたもんかと身を縮める。

 彼等を【剣術】なんていう”死にスキル”に押し込めたのは、他ならぬ俺達”管理スキル”なわけで。

 それが必要な事だとも思ってるし後悔はないが、その弊害と向き合った時の後味の悪さはいかんともし難かった。

 それと同時に、やっぱりなんとか彼等に活躍の場を与えられないかという気持ちにもさせられるのだ。

 単純にリソースの無駄だし、ここまで一緒にやった仲間意識みたいな物も強い。

 ・・・とはいえ、【剣聖術】ねぇ・・・せめて剣を当たり前に信頼できるようにならないと・・・


「・・・いや、これは余計な考えだ。 済まねえボス、俺達を発展させようと考えてくれた事は素直にうれ・・・」



 その時、部屋の中が突然グラリとゆれ、辺りのガラクタが盛大に飛び散る。

 何事かと俺達が身を屈めると、ちょうど外の方から雷のような轟音が聞こえてきた。


「なんだ!?」


 慌てて俺が窓辺に駆け寄る。

 すると真っ暗な筈の空が、光りに包まれているのが見えた。

 轟音は尚も続いている。

 すると部屋の中で突然、電話の様なベルが鳴り始めた。

 さらに男がそのベルの音源をほじくり出せば、本当に受話器のような物が出てきたではないか。

 男はそのまま、受話器の相手に向かって応答した。


「・・・ああ・・・いる・・・ちょっと待て、ボス!」

「え? おれ?」


「”FMIS中枢管理部”だってよ、お偉いさん方だ」

「まったく、たかがイメージのくせに変な部署をいくつも・・・もしもし、お電話代わりました”人格層兼統括”のロンです」


 俺は男から受話器を受け取ると、即座に向こうから中枢部に戻れというヒステリックな声が聞こえてきた。






「ありゃ、なんだ!?」


 【剣術】改め、”【剣聖術】準備室”の建物から顔を出した俺は、視界に広がった光景にそう叫んだ。


 ”夢の世界”の真ん中に鎮座する巨大ピラミッドの先端から、巨大な光の柱が天に向かってそそり立っていたのだ。


「ありゃ”アーク”絡みの光だぞ!!」


 後ろで【剣術】担当の男が血相を変えてその光景に瞠目している。


「”アーク”!? ”アーク”ってあの”王球”の中にあるっていう!?」


 たしかカミルの書いていた、フランチェスカの外部制御装置の名前がそんな感じだったはずだ。

 スキルの状態が不安定になったとき、王球の中に入って巨大な制御機器で無理やり抑え込む。

 ガブリエラなんか今でも日常的に使っている、超高位スキルの生命線である。

 だが俺達のアークは何千kmも北にある筈だ。


「その”アーク”への通信用のスキルの動作なんだよ! あの光は!」


 その言葉を聞いた俺は、”夢の世界”故に都合よく無線化していた受話器を耳に当て、その先にいるFMISの中枢部に叫ぶ


「何が起こってる!? ”何”と繋がってるんだ!?」


 道行く”要素”達が光の落ちるピラミッドを指差す。

 だがその光は、ピラミッドの先端では止まらずに、その内部・・・つまりFMISの内部にまで続いていた。


『ボス! この反応は”アーク”じゃない! 何か”別の物”です! しかも外部からの通信で一部機能が乗っ取られてる!』

「被害状況は!? 何が乗っ取られた!?」

『FMISのスキル間伝達機能の一部と・・・感覚系の強化スキルがいくつか・・・・・それと【予知夢】です』

「んだと!?」


 どこの誰だか知らないが、なんてものを乗っ取りやがった!


『落ち着いてボス! 時空系魔法反応はありません! 動いているのは”夢に干渉する機能”だけです』

「じゃあ・・・あの”光”が、モニカに”何か”を見せてるっていうのか!?」






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sideモニカ



 気がついた時、そこは小さな部屋の中だった。


 なんともぼやけた意識を振り絞り、あたりの様子を探る。

 やわらくて高度な縫製だけど、全く魔力の通っていない背もたれの倒れた椅子に座り、ギリギリ身を伸ばせるかくらいの位置にある、黒い板で仕切られた空間で眠っていたらしい。

 ビックリするくらい無機質で、この世界のものとは思えない質感だが、その光景には見覚えがあった。


「・・・また”ここ”か・・・ってあれ?」


 喋れてる?

 驚いて手で喉を押さえる。

 すると今度は、ちゃんと手が動いた事に驚いた。


「うご・・・ける?」


 そんなバカな。


 そう思ったわたしは、辺りをもう一度見回した。

 間違いない、わたしの世界・・・・・・じゃない。

 ここにあるものは全て、ビックリするくらい高度で洗練されていて、なのにひとかけらも・・・・・・魔力のことを考えて作られてなかった。

 金具は無駄に大げさだし、そのくせ内装の抑えは呆れるくらい薄っぺらい。

 間違いなく、”あの時”乗った、おっきくて馬の付いてない長い馬車だ。 


 だが、この”世界”に生きていたのは”わたし”じゃない。

 それを確かめるように下を見下ろす。

 そこにあったのは知らない男の大きな体ではなく、”見慣れた”わたしの体。

 それが大きな椅子の中央にちょこんと置かれているのは、なんとも奇妙な光景だ。

 

「また、”あのひと”の中にいる夢じゃないの?」


 おかしい、3度目になってついに自分で動けるようになったのか?

 初めて人に会ったときに見た夢や、この間ガブリエラのところで見たのは、知らない世界の知らない人の中で、その人が死ぬ瞬間をただ眺めているしか出来なかった。

 いや・・・前回はそうでもないかもしれないが、少なくともこんな風に好き勝手に体を動かすことは出来なかったはずだ。


 わたしはそのまま何ができるかを確認するように、自分の顔や体をペタペタと触る。

 胸が薄い・・・うん、わたしだ。

 

 それを確認すると、今度は窓の外に目を向けた。

 前回は、広くて真っ黒で均一な石畳の空間に止まっていて、その向こうを沢山の色々な馬車が走っていたり止まっていたりした。


 だがそこに見えたのは、ひたすらどこまでも真っ白な空間だけだ。

 上を見ても下を見ても、先の方を目を凝らしても何も見えない。

 唯1つだけ、前回自分が気に入った”魔力自転車もどき”だけが、白い空間中にポツンと浮かんでいた。

 わたしは、それを少しの間しげしげと眺める。


 へえ、そうなってるんだ・・・


 よく見ればフレームの中央部に付けられた、ゴーレムコアのような部品が心臓部であることがわかる。

 ということは、あれは走行型のゴーレム機械かな?

 あの大きさで、あんな太い車輪を付けて重くないのだろうか?


 それから少しして、わたしはそれ以上何も得るものがない事を悟ると、視線を自分のいる大きな馬車の室内に戻した。

 それと同時に、目の前の妙に質感の薄い大きな革製のポケットの中を探る。


「たしかここに・・・あった」


 出てきたのは、紙にしては妙に硬い印象の1枚の紙。

 そこにはわたしには読めない文字が数種類と、この小さな部屋を描いた絵が記されている。

 前も思ったが、全体的にどこかロンの作るものに似てる気がした。

 ”お面インターフェースユニット”に映している、小さなメーターとか絵とか、それの配置とか。

 

「”アケメセテオメッット”・・・ロンが言っていた”東にある国”の言葉って、これのことなのかな?・」


 そう呟きながら紙に書いてある文字に触れる。

 絵が分かりやすいというのもあるが、以前・・ここに来たとき”あのひと”の内側から読んだときは、この一番上の大きく書かれている文字だけは内容を理解することが出来たので、おおよそ内容はわかる。


 書いてあるのはこの小さな部屋にある設備の説明だ。

 わたしは暫くの間、そこに書いてある内容を確認しながら、椅子や他の物を触ることに夢中になっていた。

 全く思想の異なる機械を触るのは面白い。

 この軽く押しただけですぐ付く明かりはなんだろうか? 魔力灯にしては応答性が高いし火みたいに暖かくもない。

 それに見たことがないほど光が安定している。

 だがこれも、魔力的な物は微塵も感じられなかった。

 それとも漏魔対策がしっかりしているのかな? 見た感じ工作精度こそ”並”以下だが、かなり高度な基礎工学思想が感じられるので、そうかもしれない。


 そのとき、不意にすすり泣くような声が耳に入ってきた。


「・・・やっぱりか」


 どうやら今回は、”自分で”行かなければならないらしい。


 わたしは、少し名残惜しげに今いじっていた滑らかな質感の軽材製のテーブルを元に戻し、重たい足取りで椅子から立ち上がる。

 この狭い小部屋も、小さなわたしの体にはそれなりに広く感じた。

 そのまま簡易的に仕切っているだけの扉を開けて廊下に顔を出す。


 だがわたしはそこで、そこにあった予想外の光景に息を呑んだ。


「・・・え?」


 そこに居たのは、前の時にいた乗客たちではなかった。

 ボロボロの服に細くて小さな体、クリーム色の髪に真っ黒な瞳。


 小さい頃の”わたし”がそこにいた。


 あ、今でも小さいけど、そうじゃない。

 2歳か3歳か、それくらいの頃と思われる大きさの”わたし”がいたのだ。

 しかも1人ではない。


 わたしは目の前にいた2人・・から視線を後ろに向ける、するとそこには本当に生まれたばかりの状態から、3歳くらいまでの大きさの”わたし”が何人も廊下にうずくまり、馬車の前方を見ながら震えていた。


「・・・これって」


 わたしの頭の中に、ガブリエラとロンから聞いた”自分の正体”の情報が流れ込む。

 彼女たちが、もう死んでいないわたしの”おねえちゃん達”か・・・

 いや、その話を聞いて想像した存在だろうか・・・


 そうだ、ここは”夢”の中だった。

 今更ながら、そんな肝心な事に思い至る。


 これは、ロンたちから聞いた事を思い出して見ているだけの”夢”だ。


 わたしは心の中で自分にそう言い聞かせる。

 だが、あまりにはっきりとした彼女たちの姿や、震える息遣い、何より湧き出す”恐怖”の存在感に、そんな考えがあっという間にぐらついてしまう。


「・・・何に怯えているの?」


 気づけばわたしは、一番近くにいた3歳くらいの、この中では大きめの”わたし”にそう聞いていた。

 その子を含め、その場の全員はわたしの事など気にもかけずに怯えているだけだったので、反応が返ってくるとは思っていなかったのだが、驚いたことにその子は震える手をゆっくりと持ち上げ廊下の前方を指さしたのだ。

 必然、それにつられるようにわたしの視線も前方に向かう。


 ”あの場所”


 そこからは、今回も誰かが啜り泣く声が聞こえてくる。

 だが前回と違って、その声は随分と幼く・・・まるで女の子のように聞こえる。


 ・・・ゴクッ 


 夢にしては随分とリアルな生唾が喉を滑り落ちた。


 馬車の制御台があるはずのその場所・・・・

 そこに行けばこの”夢”は終わる。


 わたしは吸い込まれるように廊下に歩み出ると、何かが粘りつくような重さを感じる足取りで前方へ一歩一歩、進んでいった。

 耳に入ってくるすすり泣きが、どんどん大きくなり、同時に強烈な”血の臭い”が鼻の中を刺激し始める。


 その”声”と”臭い”の正体はなんとなくわかるような気がしたが、わたしはそれを無理やり無視し続けた。

 まるで悟った瞬間、本当になるような気がして・・・


 だが、そんなわたしの小細工など意味はないとばかりに、そこに居たのは前回とは違う顔ぶれだった。



 御者台の丸い制御装置の上に突っ伏して死んでいたのは、当たり前のように”わたし”。

 しかも、歳も見た目もほとんど変わらない、本当に複製の様・・・・な見た目をしている。

 ただ、着たことがないはずの服を着て、水分と魔力を失った目が乾いているのが、数少ない違いだった。


 わたしは、その”わたしの死体”から視線を横にずらす。

 階段状の廊下に腰掛け、肩を震わせて啜り泣いていた”もう1人のわたし”を見るために。


 そこに居たのは、異様な”わたし”だった。


 包丁のような刃物を手に取り、布切れと呼んだ方がいいほど質素な衣類の上から、全身に真っ赤な返り血を浴びたその”肌”は、ボロ人形の様にツギハギ・・・・だったのだ。

 ここから見える首筋や腕にはびっしりと、皮膚と皮膚を無理やり縫い合わせた様な、そんな跡が幾つも刻まれていた。

 ロザリア先生の跡の残らない優しい治癒魔法じゃない。

 くっつけばいい、ただそれだけの治癒魔法で無理やり直したみたいな。

 そしてそれを見た瞬間、わたしの中を冷たい恐怖がゾゾゾっという音を立てて駆け抜けた。


「・・・ひっ」


 ビックリするくらい情けない声を出して尻もちをつく。

 そのドスンという音に反応したのか、”その子”の肩がビクッと一瞬だけ跳ね、啜り泣きがそこで止まった。


「・・・・・」


 ”その子”の首がゆっくりと動く。

 わたしは、その滑らかな動きを見ているしかできない。

 あまりに怖くて、指1本まともに動かすこともできなかったのだ。


 その子の顔がこちらを向き、その目がわたしの所で止まる。

 だがすぐに、まるでわたしが見えていないかのように視線が再び動き出し、それがわたしのまわりを探るように動き出す。


「・・・だれかいるの?」


 ”その子”の問を、わたしは震えながら聞き流した。

 わたしの中の”本能”が、応えることを拒否したのだ。

 それくらい、”その子”は恐ろしい存在だった。


 目はわたしよりも遥かに黒く、周囲に漂わせている魔力も濃い、それこそガブリエラと比べても遜色ないほどに・・・


「どこにいるの? ・・・誰かいるんでしょ?」


 ”その子”がそう言いながら立ち上がり、顔を左右に振りながら馬車の廊下の階段を1歩1歩ゆっくりと登ってきた。

 時折、声でも聞こうとしているのか、少し立ち止まり耳をそばだてている。

 それを見たわたしは、見つかるまいと必死に動きを止め、口に手を当てて必死に息を止める。

 だがそんなわたしの思いとは別に、早鐘のように打ち鳴らされる心臓の鼓動を恨めしく感じた。

 そして”その子”はまるで、その心臓の音でも聞いているかのように着実にわたしの方に近づいてくる。

 心なしか、顔の動きもこちらを捉え始めている気がするくらいだ。


 そしてついに”その子”が目の前で足を止め、まるでその場を探るように顔を近づけ始めたではないか。

 すごく近くに見えるツギハギだらけの”わたしの顔”。

 その視線が、はっきりとわたしを捉えた、その瞬間・・・


 ”みつかった!!”


 頭の中がその考えで埋め尽くされ、まるで防衛反応のように自分の中の魔力に手を伸ばした。


 ”その子”との間に噴射される大量の魔力。

 ガブリエラに教えてもらった、魔力による”制圧”。

 濃密で力強いわたしの魔力が、押し潰してしまえと”その子”に襲いかかる。


 だが、その魔力が”その子”の周りの魔力に触れた瞬間だった。


 突然、わたしの魔力が一斉に言うことを聞かなくなり、その感覚が消えてしまう。

 と同時に、わたしの中に何かとても熱くて冷たい圧倒的な”何か”が流れ込んできた。

 それが”その子”の魔力だと気づいたのはその直後。


 そして今度は間違いなく、”その子”の強烈な視線が”わたし”を撃ち抜いて捉えた。




    み

        つ

            け

                た

                    」



 突然”その子”の魔力が急に重みを持ち、わたしの体を床に叩きつける。

 その力は容赦なく、以前ガブリエラにされた物より遥かに強烈。

 全身にかかるその圧力に息もできない。

 そしてそんなわたしの胸の上に、覆いかぶさるように”その子”が伸し掛かって来た。


「みつけた! みつけた! みつけた!」


 まるで小さい子供のように”その子”がはしゃぎ、飛び散ったヨダレがわたしの顔にベチャベチャと降り注ぐ。

 これじゃまるで、獲物を捉えて興奮している獣そのものではないか。

 そしてわたしは、捕まって食われるのを待つだけの獲物に過ぎない。

 なんとか”その子”を押しのけようともがくが、押し付けられる魔力の圧力があまりに強過ぎてビクともしない。


「ああ・・・わたしの”お姉ちゃん・・・・・”。

 とってもおいしそうな・・・・・・、お姉ちゃん。

 もう、逃げられないよ」

 

 全身に激痛が走る。

 体中から、魔力が勝手に抜け始めたのだ。

 それを止めようと思っても止められない。


「うふふ・・・うひひ、うははは! わたしの方が”上位”みたいだね」


 ”その子”がそう言って禍々しい笑みを浮かべる。

 間違いないこの感じ・・・この子、【制御魔力炉】を使っている!?


 わたしはその事に絶望した。

 今”この場所”にロンの声はない。

 おそらく来てもいないだろう。 

 これは”わたし”の夢なのだ。


 わたしの【制御魔力炉】はロンなしでは起動もできず、圧倒的上位の魔力を前に為す術がない。


 さらに”その子”は、手に持っていた刃物を振り上げると、それをゆっくりとわたしの胸に降ろしてきた。

 刃物の先は葛藤するかのようにブレにぶれ、その動きを見つめる”その子”の表情は恐怖を感じるほど様々な感情でぐちゃぐちゃに歪んでいる。

 それでもその切っ先は確実に下に降り続け、ついに動けないわたしの胸に接触した。


「・・・うっぐ!・・・ぅあああ!!」


 既に血がこびり付いて鈍らと化していた刃先が、力だけで無理やりわたしの服を突き破りその下の肉に食い込む。

 胸の僅かな肉と脂肪を切り分けながら肋骨にぶつかった刃先は、さらに小刻みに何度も骨に当たって削っていく。

 その痛みにわたしは、必死に暴れもがこうと動かない体に”動け”と力の限り叫んだ。


 ”その子”がわたしを見ながら何かを言っているが、そんなことはどうでもいい。

 ゆっくりと体の中を進んでいく刃物の冷たい感触と、その切っ先がゆっくりと確実に”わたし”を切り裂いていく熱い感覚。

 今、ゴリッっという感触と盛大な激痛で、刃物の切っ先が肋骨を突き抜けた事を悟る。

 そしてそのまま切っ先は、いくつかの筋を切りながら心臓の内部へとゆっくりと進んでいった。


 ” いたい ”


 ” くるしい ”


 ” ここから出して! ”


 ” 助けて!!! ”


 ” 誰か、助けて!!!! ”



 突然、視界が真っ白に染まる。

 ついに夢の中で死んだのか。

 だがそれでも”痛み”は消えなかった。



 助けて!


 たすけて!


 タスケテ・・


 タスケテ・・・・



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※





side ロン



「うわああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」



 闇夜を切り裂くような叫び声と同時に、俺の意識が”夢の世界シミレーション領域”から強制的に引きずり出された。

 目の前に現れる、いつもの視界、いつもの表示。

 叫び声の正体はモニカだ。

 そしてその向こうには、モニカが叫ぶのと同時に反射的に少量ぶち撒けた魔力が吹き飛ばした布団が宙を舞っている。

 隣では、突然の大きな音に驚いて飛び起きたベスが、寝ぼけた表情で何事かと目を剥いてこちらを見ていた。

 だが、モニカの方はそれどころではない。


「うわああああ!!!!!いたいいい!!!!いたいよおおおお!!!!たすけてええええ!!!」

『落ち着けモニカ!! って、うわああ!?』


 モニカに語りかけた瞬間、流れ込んできた凄まじい”痛み”と”苦しみ”に、危うく俺の方まで意識が持っていかれるかと思った。

 明らかにただ事ではない。

 なんだこの”苦痛”は!?

 俺は、感じたことのないその感覚を必死で頭から切り離し、コンソールを引っ張り出して異常を探る。


 異常箇所・・・損傷なし!? じゃ、なんだこの痛みは!?


 俺は必死に”その感覚”の出処を探ろうと、体中のスキルを叩き起こして総チェックプログラムを走らせる。

 だが何処を探しても苦痛につながる異常は見つからない。


「たすけて・・・たすけて・・・たすけて・・・たすけて」


 その間もモニカは、壊れたレコードのようにそう呟き続け、苦痛から意識をそらそうと必死に布団の上でもんどり打ちながらベッドから転げ落ちた。

 変な体勢で床に腰をぶつけた痛みなど、物の数ではない。


『いいか! 落ち着けモニカ! ”これ”は本当にある苦痛じゃない!』


 俺は必死にそう呼びかける。

 既にこちらでは、この痛みの出処が頭の中で勝手に作られたものという所まで絞り込めていた。

 すなわち”幻痛”だ。

 モニカは今、脳みそが勝手に作り出した全身の痛みにもがいているのだ。


「たすけて・・・誰かたすけて・・・ロン・・・ベス・・・ルシエラ!!」


 その時、モニカがまるで地獄に下りる蜘蛛の糸を見つけたかのような反応を見せ、まるで餌をぶら下げられた獅子のように一点を目指して床を這い始めた。


『モニカ! 落ち着け、もうすぐ痛みは対処できるから!』

「モニカ姉さま! お気を確かに!」


 俺とベスが必死にモニカに呼びかける。

 だがモニカはこの”苦痛”から逃れることしか頭になく、俺達の声は耳に入っていなかった。


 そのままモニカは自分の机の所まで這っていくと、その上に置かれていた書きかけのルシエラへの手紙に手をかけ、それを握りしめて再び地面に倒れ伏す。

 あの校長にもらった、ルシエラへの”緊急連絡用”の魔法紙だ。

 既にそこには、昨日の内にほとんど終わり近くまで書かれていた、”俺達の経緯”が記されている。

 モニカはその魔法紙を虚ろな視線で認識すると、ありったけの気力を振り絞って、下半分の空欄に注意を集めた。


「たすけて・・・たすけて・・・あぅぐっ!」

『おい!馬鹿やめろ!?』


 モニカは突然、自分の人差し指を口の中に突っ込むと、その先端を躊躇なく噛み切ったのだ。

 頭の中に”幻”ではない、”本物の痛み”と異常を知らせるアラームが成り始める。

 だがその痛みですら、未だモニカを苦しめる”幻痛”の前では感じ分けることすら難しいほど小さい。


 噛み切られた指の先端から赤い血が噴き出し、それを見たベスが悲鳴をあげる。

 するとモニカはなんと、その指を紙に擦りつけ文字を書き出した。


 中途半端だが比較的まともな文章のすぐ下に突然現れた、”助けて”という真っ赤で大きな汚い文字。

 モニカはその最後の文字を書き終わると、確認もせずに魔法紙上部の魔法陣に魔力を流す。


「ルシエラ! ルシエラ! たすけて・・・たすけて!!」


 苦しみに溢れた涙がボタボタと床に落ちていく向こうで、効力を発揮した魔法紙が上部から光りながら消え、ルシエラの下に向かって転送されていく。

 こうなればもう俺達に止める術はない。


 かわりに俺は、ようやく”原因箇所”の特定に成功したという報告を受け取り、即座にこの”苦痛”をモニカの体から切り離した。

 その瞬間、それまであれほど猛威を奮った”苦痛”が嘘のように晴れ、正常な感覚が戻ってくる。

 だが痛みに苦しみ抜いたモニカはそれだけでは済まなかった。

 突然失った・・・感覚に全身がビックリしたようにショックを起こし、痙攣のように全身がバタバタと暴れたかと思うと、そのままあっという間に気を失ってしまったのだ。


「モニカ姉さま!!」


 その衝撃的な光景に、ベスが完全に血の気を失いながら駆け寄ってきた。

 まあ、こんなものを見せられれば無理もないだろう。


「大丈夫だベス、ちょっと気を失っているだけだ」


 俺はとりあえずベスを宥めるように、外部スピーカーでそう声をかける。

 だがその言葉では効果は薄かったらしい。


「”気を失ってる”ですって!?」

 

 ベスの血の気がさらに引いたのだ。

 これはまずい、2人倒れられるのは本当にヤバイ。


「だ、だ、だいじょうだ! 本当だから! さっきの原因は特定して対処済みだから!」


 と必死に宥めすかした。

 その説得のおかげか、ベスの様子はそれ以上の悪化を見せず、この場はこれでとりあえずの”収まり”を得る。


 だが、”この件”で落ち着けるのはしばらく先になりそうだ。

 たぶん明日は”ロザリア先生の精密検査”は避けられそうにないし、モニカに変な後遺症が残る恐れもある。

 それくらいの”苦痛”だった。

 なんなら再発のリスクと対策も練らなければならないだろう。


 ああ・・・大変だ、新スキル組成どころではないぞ・・・


 それに何より・・・・


『こりゃ、大事になるな・・・』


 ちょうど”助けて”の部分が光に消えるのを感覚器越しに見た俺は、そんな物を見せられたルシエラの反応を予想して心の中でそう呟いたのだ。

 

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