2-X5【幕間 :~事後処理~】
「・・・はい、それではガブリエラの魔力は”安全レベル”まで希釈されたのですね?」
珍しく慌ただしい執務室の中に、校長の声が響く。
その耳には通信用の魔法陣がいくつも展開され、アクリラ中に散らばる教師たちとリアルタイムに情報のやり取りを行っていた。
「・・・はい、・・・はい、ということは追加の応援は必要ないんですね?」
校長がそう聞き返しながら、ハンドサインで近くにいた助手に指示を送る。
すると、それを見た助手が別の通信魔法陣で連絡を取り始めた。
「わかりました。 念の為にもう一度安全確認を行った後、建物や土壌の調査を行ってください、それでは」
校長がそう言って通信を終了すると、ちょうど執務室の扉が開くところだった。
「校長、ここに居ると聞きましたが・・・」
「ああ、スコット先生!」
扉の向こうから現れたスコットに校長が大きく反応する。
「あなたも巻き込まれたのですから、検査を受けなけないと!」
「現場の医療班による簡易的な検査で、取り敢えず直近の問題は見つかりませんでした。 一応精密検査を受けろとのことですが、それは後でもできます。 今は状況を収めないと」
「相変わらず真面目な方ですね。 でも安心してください、今はもう大きな問題は残ってませんよ」
「そうですか」
スコットはそう答えると、少し肩の力が抜けたような表情を見せ、それを見た校長がスコットに聞かなければいけない確認事項を思い出す。
「ところでモニカさんの様子は?」
「アクリラ北病院に入院してます。 本人はいたって元気ですが、ロザリア先生のあの様子では1週間は入院させるのでは・・・校長?」
その時、校長が口を手で抑えながらスコットにズイと顔を寄せた。
「魔力が”混合”していたとのことですが?」
そう言って真剣な顔でスコットを睨む。
それに対しスコットも校長に耳打ちするように返答を行った。
「モニカがガブリエラの胸に腕を挿し込んで調整している間は、その現象が続いていたのですが、それが終わってモニカが手を抜いた瞬間元通りに、髪や目の色もその時に戻りました・・・それ以上の事はまだ」
「その辺は”当事者達”に聞くほか無いですかね」
「なら最低でも2日は空けてください。 それまで彼女の同室の者以外は”面会謝絶”だそうです」
「ロザリア先生らしいですね」
校長はそう言って仕事熱心な医師のことを思い浮かべながら微笑んだ。
「むしろ、よく同室の者の面会を認めましたね」
「彼女の同室の先輩・・・ルシエラ・サンテェスが面会を強く求めましてね。 その剣幕にロザリア先生も折れたというか・・・」
校長はその言葉で何かを思い出した様に納得の表情を浮かべた。
「ああ、彼女にもフォローもしておかないといけませんね」
「それも少し時間を置いてください。 彼女、今相当気が立ってるので」
そう言いながらスコットは上着を軽く引いて見せる。
彼のその一張羅日には、ガブリエラの魔力で付いたものとしては少し不自然な焦げ跡がついており、それを見た校長はそこからスコットがここに来た”本当の理由”を察する。
「ルシエラに追い出されましたか」
「私が逃げただけです。 2,3発攻撃を受けましたが、責めないでください。 妹分が危機に陥って彼女も驚いているのでしょう」
そう言ってスコットはなんでもないように、両手を軽く広げる。
それを見た校長はスコットの服に焦げ跡が残る攻撃を放ったルシエラと、それを受けて尚何でもないと言い張るスコットの両方に感心した。
「ということは、今モニカさんは、ルシエラさんとベスさんと一緒にいるんですね?」
「はい、彼女達がいればモニカも安心でしょう」
スコットはそう言うと、一旦息を吐いて間を区切った。
「それで、ガブリエラは?」
スコットは真剣な表情でそう問うてきた。
モニカとガブリエラが”離れて”すぐにモニカを連れ出した彼は、ガブリエラがどうなったか知らないのだ。
「通信魔法越しですので詳しい事は分かりませんが、報告によると”彼女の専門家”チームの働きで一旦全部のスキルを”停止状態”にした後、彼女の”王球”内にて安静にしているとのことです」
「まだ”現場”に?」
「いえ、”いつもの場所”に」
「あの”サイロ”ですか・・・」
スコットはそこでアクリラ西部に設けられた、”ガブリエラ専用”の特殊な施設の事を思い出す。
膨大な魔力に耐えられるように設計されたその施設は、中にいるガブリエラに直接触れなくても”あらゆる処置”が可能な場所だった。
「あそこなら”王球”の能力も最大限発揮できますし、医療スタッフが居るのでスキルの調整だけでなく治療も行えますから」
その言葉にスコットがハッとなる。
「そういえば”傷”の状態は?」
ガブリエラの胸にはモニカが調整用に開けた穴が空いていたはずだ。
もちろん”あの程度”の傷であれば、この街では本来問題にはならない。
だが傷を負ったのがガブリエラである以上、その治療にも細心の注意が必要になる。
「応急的に塞いだそうですが、治癒魔法の干渉が怖いとかで、まだ”完治”はさせないそうです」
「それは大変だな・・・」
スコットが染み染みとそう漏らす。
こういう時、強力なスキル保有者は本当に厄介だ。
「ただ、内臓などに傷はなく完全な”外傷”なので、応急手当だけでも問題ないとの話ですね」
「ただ、ああ見えてやせ我慢をする子だ。 本当に問題なければいいが」
スコットはそう言って顎に手を当て、その様子に校長は意外な顔をする。
「あら、授業を持ってましたか?」
校長の知る限り、ガブリエラが天文学を取ったという話はない。
「授業はありませんが、学園の行事やモニカの付き添いで何度か見ているので」
「それだけの事で?」
「
スコットはそう言って肩を竦める。
「さすが元”魔導剣士”・・・ということでしょうか」
校長がそう言うとスコットは露骨に苦い顔をした。
「今も昔も、肝心な事は何一つ分からないんですがね・・・今回も彼女達の”変化”に気づけなかった」
そう言うと、大きく息を一つ吐く。
それを見た校長は、彼程の男でもその能力を使い切ることの難しさに悩むのかと驚いた。
きっと”過去の事”も含めて己の無力さを嘆いているのだろう。
「ですが、そう気落ちしてられませんよ、人は完璧ではないのですから」
そう言って慰める。
だがそれでもスコットの表情は晴れない。
「せめてもう少し・・・もう少し教師らしい事ができれば・・・」
「スコット先生は十分によくやっていますよ。 モニカさんも上手くこの街に馴染めましたし、安心して過ごしています。 それはあなたの様な、”しっかりとした大人”が付いているからこそですわ」
「だと良いのですが・・・・」
スコットは校長の言葉にそう項垂れる。
今回の”一件”はどうやら、彼にとっても大きな”心残りに”なったのかもしれないと校長は心の中に注意した。
「校長先生!」
その時、校長室にいた助手の一人が校長を呼びかけた。
「グリフィス先生が面会を求めています」
そして通信魔法陣を耳に当てながらそう伝え、それを見た校長が即座に声を返す。
「入ってもらってくださ・・・」
「もう既に来ておる!!!!」
その時、校長の指示の途中でいきなり扉が開け放たれ、見るからに熱苦しい獅子のような教師が大きな足音を立てて入ってきた。
そして、それを見た全ての教師に緊張が走る。
大柄でエネルギーの塊の様なその教師は、いつにも増して険しい表情だったからだ。
「あ、グリフィス先生、お疲れ様」
校長がその剣幕に若干腰を引きながら声を掛けると、グリフィスは無言で校長に歩み寄る。
その間、1度だけ僅かに意味深な視線をスコットに送ったものの、それ以外はずっと校長を睨みつけたままだ。
そしてそのまま、呆気にとられるその場の全員の視線を受けながら近づくと、そのまま腰を折って校長の眼の前に憮然とした顔を寄せる。
身長の低い校長に合わせたせいか、その腰の角度はかなり急だった。
「生徒全員の安否を確認した。 避難途中に足を擦りむいた生徒はいたが、それ以外は全員無事である」
そしてまるで脅すような声で報告を始め、それに対して校長の目が一瞬点になる。
「あ、は、はい、ありがとうございます・・・」
そこで校長は、今回の避難の指揮をこの男が取っていた事を思い出した。
どうやら彼はその報告に来たらしい。
「それと避難指示が出た地区の住人も全員無事だ、今はグリセルダの指揮のもと、安全が確認された地域から戻っている」
「は、はあ・・・なるほど・・・」
「物損については、貴族院の建物以外に確認はされていない。 貴族院についてもガブリエラの屋敷がほぼ全壊したのを除けば、建物の壁がいくつか壊れたのと、王族用の建物がいくつか半壊した程度。 巻き込まれた物品も保護魔法入りの物は無事だった」
「あ、そうですか・・・なら被害はいつもより少ないくらいですね」
グリフィスの報告に校長がそう答える、だがその姿は完全にタジタジだった。
そしてグリフィスの表情も、問い詰めるかのように険しいまま。
まだ”本題”は終わっていないと暗に宣言しているかの様である。
「それでは校長・・・・」
グリフィスが勿体ぶるかの様に一拍おいて、大きくいきを吸い込み、
「納得行く説明を願おうか!!!!!!!」
その言葉を一気に言い放った。
突如、執務室の中に響き渡った大きな声に、その場にいた全員の手が止まる。
「説明・・・と、いいますと?」
「”あの魔力”についてだ!!!」
「はあ・・・それは今調査中です」
校長は努めて冷静を装ってそう聞き返した。
だがそれに対しグリフィスの眉間のシワが更に深いものになる。
「そういう事ではない!!!」
「よせ! グリフィス!」
校長の言葉に納得できないグリフィスに対し、スコットが彼の腕を掴んで止めに入る。
だが、それでもグリフィスは止まらなかった。
「スコット・グレン! 貴様ともあろうものが・・・いや貴様だからこそ、それを無力化する”あの魔力”の脅威は無視できんはずだろう!!」
「だから何だというのだ!?」
依然として怒りを収めぬグリフィスにスコットが言い返す。
「貴様こそ、少し様子がおかしいぞグリフィス」
「あの2色の混じった特殊な魔力・・・あの様な反応を見せる魔力は私の知る限り”1つ”しかない!」
グリフィスはそう言うなりスコットと校長を交互に睨んだ。
「あれは”聖王”の・・・」
「『グリフィス先生!! そこまでじゃ!!』」
その瞬間、執務室の中にグリフィスとは別種の、それでいて同じくらい凄まじい音量で雷の様な音が鳴り響いた。
更にその場にいた全員が”謎の恐怖”に身を竦め、部屋の中のある一点に吸い寄せられるかの如く目を向けた。
すると今度はそこに真っ白な光があつまり始め、すぐに人の形に纏まる。
「あ、アラン先生・・・」
獅子のようなグリフィスも、さすがの白の精霊の本気の”威嚇”を前にその声は僅かに震えていた。
だがそれでも追及は止まらない。
「あなたが
「『左様・・・だが仕方のないことじゃ、その事について申し開きはせぬ』」
「私は”説明”が欲しいだけです・・・この街がその性格上多くの”秘密”を抱えているのは重々承知している・・・ですが教師として・・・このアクリラを守る者として、今回の私が見た”現象”は、到底看過できる”謎”ではない」
グリフィスは絞り出すようにそう言うと、念押すようにアランを睨みつけた。
アランの放つ”世界からの保護”を直に受けてなお歯向かうその胆力に、その場に居た全員が驚嘆し、
それを見た校長が諦めたように息を一つ吐き出して、アランに向かって語りかけた。
「アラン先生・・・あの魔力にグリフィス先生が心当たりがある以上、話した方が良いかもしれません」
「『・・・なるほど校長がそう言うならば、そうかもしれん。 だがこの場には聞く準備のできておらぬ者も多い』」
校長の”決断”にアランが力なく答える。
彼もグリフィスの心が読めるだけに、隠し立てする訳にいかないことは理解できたからだ。
「皆さん、すみませんが暫くの間、私達だけにしてください」
校長が周りに居た助手たちにそう言って退出を促すと、彼等はすぐに荷物をまとめ始める。
校長の助手を務めるにあたってこの様な”秘密のやりとり”は日常茶飯であり、そのことで退出を求められたことに不満を上げる者は居ない。
そして手早く必要のある連絡だけ済ませると、皆一斉に扉に向かって歩きはじめ、その様子をグリフィスとアランが無言で見送る。
「もう既に状況は終了しているので私が必要になる場面はないと思いますが、もしなにかあったらすぐに”直接通信”で」
「分かりました」
最後に校長がそう言って必要事項を伝えると、それを聞いた助手が返答し魔法陣の校長と通信用の魔法陣の確認をしながら扉を後にした。
そしてその助手が部屋を出ると、先程まで戦場のように忙しなかった執務室に嘘のような静寂が訪れる。
残ったのは校長とアラン、それに当然ながら説明を求めたグリフィス。
・・・・そしてスコットの
「スコット・グレン・・・貴様も説明を求めるのか? それとも貴様が説明してくれるのか?」
グリフィスが当たり前のように部屋に残ったスコットに怪訝な顔で問いかける。
「私も当事者として説明を聞きたいですね。 特に今回のことは
スコットはそう言うなり、校長とアランを見つめる。
すると校長はどこか納得したような表情を作った。
「なるほど・・・確かにスコット先生も知っておいたほうがいいでしょうね・・・」
「それでは、今回何が起こったのか・・・話してくれますか」
グリフィスが急かすようにそう言うと、校長が軽く頷いて”説明”を始めた。
「まず今回の件について、”2つ”注意しておくことがあります。 まず私達もまだ何が起こったのかちゃんと把握はできていません。 ですので今回の事態がグリフィス先生の憂慮する事態であるかは断定できません」
「御託は結構!!」
校長の言葉に対しグリフィスが声を荒げる。
だが校長はそれを聞いても表情一つ変えず、それを見たその場の全員が今の校長が”外向き”の顔でないことを悟った。
「次に・・・この説明で”個人が特定できる情報”は開示できません」
その言葉にグリフィスの眉が歪む。
「なぜ?」
「あなたの”立場”、この情報の”意味”を考えれば仕方ないことです」
「私はアクリラの教師だ!!」
「そうである前にアルバレスの”元勇者”です。 そしてその縁は未だ切れていない」
「信用出来ないということか?」
グリフィスが脅すように校長を睨みつける。
だがそれに対して校長が視線を逸らすようなことは無かった。
「いいえ。 むしろ、あなたを”アクリラの教師として”信用しているからこそ、
そう言うと、校長は強い眼差しでグリフィスを睨み返し、その迫力に獅子のような教師は一歩後付さる。
「・・・ぬぅ・・・では聞かせてもらうか、私の信用でなら話してもいいという、その情報とやらを」
だがグリフィスはその場で踏みとどまると、一息にその言葉を校長に向かって投げ返した。
それに対し校長はアランの顔を一度見つめて覚悟を決めると、その”本題”を話し始めた。
「グリフィス先生の懸念のとおり・・・・状況からしてあの魔力はおそらく・・・”聖王の魔力”と呼ばれる特殊魔力の一種でしょう」
「つまり・・・少なくともガブリエラの”王の因子”は本物だということか?」
「状況的に言えばそれは間違いないでしょうね。 まさかこんな形で”王位スキル”の構成に使われた”大呪”が、本当に”王の因子”だと証明されるとは・・・」
それはこの17年間、関係者が確信を持って認識していた要素ではあったが、結局、誰もそれを証明できなかった”王位スキル”の”名前の由来”であり、同時にその”力の根源”でもあった。
だがこれで、少なくともその”説”が間違いではなかったことが証明されたのだ。
「
だが僅かに漂った”アカデミックな空気”をグリフィスが一蹴する。
「ガブリエラが持っているのは”黄色”の魔力だけだ。 だがあそこに混じっていたのは2色・・・それも”黒”! つまりガブリエラは、黒の魔力でさらに”王の因子”を持った存在と魔力的に接触したことになる!」
「ええ・・・そうなりますね」
「おそらく校長が隠したい”個人”とは、その”者”のことではないか?」
「・・・・はい」
「ぬぅ? 隠さぬのか?」
校長があっさりとその存在を認めたことにグリフィスが不審がる。
「アクリラはこれまでもこれからも、ここで”学ぶべきすべての者”に門戸を開き、その存在を守る。 それだけのことですから、そのこと自体を隠す必要はありません」
「それは”王の因子”を複数抱え込む危険を犯してでもか?」
「グリフィス先生、このアクリラで教師を続けたければ知っておいてください。 その”信念”に例外はありません」
校長はそう言うとグリフィスの目をじっと見つめ、グリフィスも見つめ返すことでそれに応じる。
暫くの間、執務室の中に校長とグリフィスが無言で見つめ合う、なんとも言えない緊張状態が展開された。
そして先に折れたのはグリフィスの方だった。
「はあ・・・その生徒の存在は公表できないんですね?」
「
「とりあえず、”いる”ということを認めてくれただけでもマシと思うことにしましょう・・・それでこちらも生徒を守る準備はできる・・・」
グリフィスはそう言うと、踵を返して扉へと向かった。
だがその途中で足を止めると、顔を向けずに言葉を発した。
「スコット・グレン・・・
それに対しスコットは小さな声で答える。
「・・・言われるまでもない」
するとグリフィスは小さく「フン」と鼻を鳴らし、そのまま扉を開けて執務室を出ていってしまった。
獅子のような教師がいなくなったことで再び静寂に包まれる執務室。
その静寂を破ったのはスコットだった。
「あれは、”モニカのこと”も判っていますね・・・」
そう言いながら扉の向こうを見つめるスコットの目は、油断のない”剣士”のものだ。
「『スコット先生、そなたが巻き込まれた時点で、グリフィス先生はおおよそ事態の見当はつけておった。 ここに来たのは確認のためでしかない』」
「なら、なぜ”モニカの存在”を認めたのですか?」
スコットが静かではあるものの、問いただすようにアランに迫る。
「『スコット先生、安心なさい。 あれは誰であれ生徒を害するような男ではない』」
「彼の義理堅さ・・・それに縋るような形になったのは心苦しいですが、我々が”特定”しなかった以上、本国にも隠してくれるでしょう」
「つまり、あの男が
「『”元魔導剣士”として、”元勇者”は信用ならんかね?』」
「私の”心”が読めるのに、その質問は少し配慮がなさすぎませんか?」
アランの言葉にスコットが露骨に不機嫌な表情を作る。
だがそれが”表面的なもの”で、それがバレることも込みであることをアランは理解していた。
「ただ、これでモニカさんの”マーク”はキツくなるでしょうね。 グリフィス先生の授業は多いですし、彼の助手の目もある」
校長が少し疲れたようにそう言う。
するとそれに対し、スコットが少し心配そうに問いかけた。
「彼は助手に漏らすでしょうか?」
「モニカさんのスキルについては大丈夫でしょう。 漏らそうとすればアラン先生がすぐに気づきますし」
「『”この街の中では”という制限はあるがの』」
その言葉にスコットがアランを品定めするように見つめる。
まるで、この精霊の能力を見極めようとしているかのようだ。
「なら大丈夫でしょう。 グリフィス先生も、校長とアラン先生の信頼を失うようなことはしないでしょうから」
スコットがそう言うと、校長が軽くスッと肩から力を抜いて緊張を解いた。
その言動から、もう険悪になるようなことはないと判断したからだ。
だが、スコットの心が読めるアランだけは、その顔が依然として硬いまま。
そしてアランのその”確信”を裏切ることなく、スコットはこれまでにないほど真剣な表情と声で校長とアランに向かって声を発した。
「・・・では、私にはもう少し詳しい説明をいただけるんでしょうね?」
そしてそう言うなり、全身に今までにない強さの覇気を纏う。
「『”中途半端な説明は許さない”・・・ということですな・・・』」
その様子を見たアランがそう言うと、それに続いて校長の顔に緊張感が戻る。
そして改めてスコットの顔を真剣な眼差しで見つめた。
「ええ、もちろん。 今回のことでモニカさんの”成長予定”が我々の予想よりも早いことがわかりました。 これでは”説明”では間に合いません」
「?」
スコットが校長の言葉に怪訝な顔になる。
「なのでモニカさんについて、私達で”相談”しませんか?」
校長はそう言うとニヤリと笑みを浮かべ、その後、3人の教師によるモニカの成長に関する”相談”は、その途中でやってきたスリードを加え真夜中まで続き、モニカやガブリエラに関する分かっている限りの情報が共有されたのだった。
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