1-13【お受験戦争 9:~つかめない状況~】
現場は混乱の極みに達していた。
俺もモニカも事態の詳細がつかめないまま地べたに這いつくばっているし、すぐ近くの人間2人もポカンと口を開けたまま固まっている。
ゴーレムたちですら何事が起こっているのか理解できないようで、お互いの顔を見合わせていた。
無線網に至っては現状の命令を問い合わせるゴーレム達の声でまともに聞けたものではない。
そしてその中で、その混乱の原因となった白服の魔法士の男は涼しい顔でその状況を楽しむように辺りを見渡していた。
” い や で す よ ”
その言葉が、まるで壊れたレコードのようにその場の全員の頭の中で何度も鳴り響いている。
”いや” とはいったいどういうことか?
それはひょっとして、この男が俺達を殺すことを拒否したということなのか?
でもなんで?
「〈静まれ!!!〉」
次の瞬間、まるで雷鳴のような大きな声が発せられ、その圧倒的な音圧にその場の全員が固まり、全員の視線がその声の主に集まった。
「〈どういうことだ! 説明しろ!!〉」
その声の主こと
だが、それに対しても白服の魔法士は涼しい顔を崩さなかった。
「はい? だからその言葉、私はエクシールや黒舌さんと違って分からないんですって」
そしてまるで馬鹿にするかのようにそう答える。
するとその返答を受けた
完全に怒ってるよ、こいつ・・・
その迫力にモニカの中の”恐怖心”が最大級の悲鳴を上げ、足に走る激痛もお構いなしに無意識に後ろへと後ずさろうとする。
その時、ゴーレム無線の回線が全て封鎖され、その代わりに新たな通信が全チャンネルに向かって放たれた。
《どういうこと? ”保証”はまだ届いていないけれど》
その声は若い女性のものだった。
発信ポイントと通信の”権限”からして彼女が、ゴーレム達の”総司令官”だと思われる。
だがその声は酷く冷たいものの、驚きに満ちている。
すると、白服の魔法士がその無線に応えるかのように、腰から通信機のような魔道具を取り出してそこに向かって声を発した。
「〈すいません、ちょっと間に合いそうにないんで、恥ずかしい話ですが勝手に動かさせてもらいました、”保証”の方は後少しでそちらに着くと連絡が来ているので、確認をお願いします〉」
白服の魔法士の声は、まるで郵便配達の連絡でもするかのような気楽さだ。
どういうことだ?
この通信の内容だとまるで条件が揃っていないことに驚いて、この白服の魔法士の行動自体は知っていたかのような印象も持てる。
というか”保証”ってなんだ?
その時、地面に手をついてモニカが白服の魔法師を見上げながら問いかけた。
「・・・あなた・・・”何”なの?」
その声には疑問だけではない様々な感情が乗っている。
すると、それに気がついた白服の魔法士は頭だけでこちらを見下ろしながら、口元を歪め、
「”何”だと思う?」
と、答えになっていない答えを返し、己の命を手の中に握る男のその返答に、俺とモニカが心のなかで不安と混乱を深めていく。
『モニカ・・・こいつ・・・』
「・・・ロン?」
俺は先程、思考同調を停止させた時のこいつの”右手”の映像を確認する。
何度見ても間違いない。
『この男・・・”人”じゃない・・・』
俺は全く何事もつかめないこの状況の中で、初めて一つできる確信した事を見つけた。
『・・・こいつも、ゴーレムだ』
俺の言葉にモニカが驚いたように目を見開く。
そしてまるで俺達がゴーレムであると気づいたことを知っているかのように、その男は面白そうに微笑んだ。
この男、見た目はどっからどう見ても人間だ。
肌の質感も、骨格の形も、一挙手一投足全てが自然で、ゴーレムとは明らかに異なる。
だがつい先程、こいつの右腕は機械的に
その機械を付けていたのは、俺の知る限りクーディと
そしてその2人は正真正銘、どこからどう見てもゴーレムだった。
こいつとは違う。
だが俺はその男の何ともいえない”異物感”に、恐怖心よりも先に何か根源的な”不快感”を感じざるを得なくなっていた。
◇
”現場”から数km離れた”指揮所”では、混乱した指揮官型のゴーレム達が次の行動の指針を求めて、その中心に立つ人物に向かって視線を送っていた。
彼等がかじり付いている無線機からは、まさに現場から送られてくる大量の確認の声が漏れていた。
そしてその中心に立つこの場の総司令官たる”黒舌のジーン”もまた、次の行動を決めかねているところだった。
ボルドの行動は分かる。
だが、その条件がまだクリアされていなかったのだ。
ジーンが”彼”が初めて”そのこと”を話した時のことを思い出す。
2週間前・・・・
ちょうど、ゴーレム部隊が行動を開始して最初の夜。
ゴーレム部隊の”人間用”の宿舎の一角でまるで闇夜に隠れるように、2人の人物が”密談”を行っていた。
1人はこの部隊に派遣されてきた監視役であり、真の指揮官である”監査官”ボルド・・・の皮をかぶったバケモノである。
そしてもう1人はこの部隊の”総司令官”という呪いの呪縛に捕まった
そして、黒舌のジーンはここでこの作戦の”裏の顔”を初めて知ることになった。
「では、”その時”になったらお願いしますよ」
未だ状況がはっきりとは掴めずに混乱するジーンに向かって、”ボルド”と呼ばれる監査官の1人が、涼しい笑顔のままで抜け抜けとそう言い放つ。
この男が伝えてきたのは、現在の”クライアント”に対する裏切りの提案。
そしてこの部隊もそのための策略の一部であるという”真実”だった。
これから自分達は”目標”とされる女の子を殺しに行く・・・・という名目で、ギリギリまで国を欺いたまま護るというのだ。
そのために、本来ならばまだ知らないはずの情報をこの時点で渡されていた。
例えばそれは、”目標”がまだ幼い少女であるということ、アクリラに逃げ込もうとしているということ、彼女が”この男”にとって重要な人物であるといったことだ。
そしてそれを知ったジーンは、可能な限りこの男の作戦に乗ることを決意する。
”彼”がこの件について嘘を言っていないことと、そのために動いていることはスキルの力で知っていたし、ジーンの
いや、これは対策ではなく、人質の移動というべきか・・・・
つまり、そもそもジーンは”彼”の提示した”保証”が立証された場合、今度は”彼”に従わざるを得なくなるのだ。
まあ、どちらに転んでも地獄であろうが、
ただし、
「わかってると思うけど、”保証”が間に合わなければ・・・・」
一つだけ譲れないものとして、ジーンの兄の家族の安全が得られないのであれば、協力する訳にはいかない。
その時は”本来”の任務を遂行しなければ、もう一人の、こちらは本当の
「ええ、全力で”彼女”を殺しにかかってください、むしろそれ以外はいらないです」
ジーンがその答えに怪訝な顔になる。
「本当にいいの?」
「ええ、下手に手を抜かれてバレてしまっては元も子もないですからね、適当にこちらで調整しますので、”その時”までは全力で任務に集中してください」
「”調整”?」
「ええ、少々足を引っ張ったりしますので、その辺は先に謝っておきます」
なるほど、そういう風に調整するのか・・・・
おそらくこの場所で”真意”を明かしたのは、先程準備した”保証の確認”がちょうどいいタイミングで届く様に計算してのものだろう。
あいにく仲間2人は隠し事には向いていないので、このことを伝える訳にはいかない。
これは心労が嵩みそうだ。
全ての確認を終えた”彼”が、その場を後にする。
だが最後にジーンが意味ありげにボルドへ向かって声を掛けた。
「
ジーンが”彼”の本名を告げ、ボルドが驚いたような表情を作りながら首を左右に振って周囲の様子をうかがう。
だが、今はこの周辺に誰も居ないので問題はない。
「なんで”その名前”を?」
「忘れたの? 私に嘘は通じない・・・いや、私は嘘は
「なるほど・・・本当に凄いスキルだ・・・」
そう言って
「わかってると思いますけれど・・・その名前は・・・」
「ええ、あなたが失敗するまではあなたの名前は呼ばないわ、”エリート”さん」
「おや・・・私が”エリート資格”持ちだとどうして?」
「あなたが言ったのよ?」
そこで今度こそローマンが本当に驚いたような顔になった。
そして直後にその表情が複雑な感情を孕んだものへと変わる。
それに対してジーンに様々な疑念が湧いてくる。
”彼”はあまりにも謎に満ちている。
彼の
「あなたは”何”? なんでその子を守ろうとするの? あなたにとってその子は何なの?」
そして気がつけばそんな質問をしていた。
答えるわけもないのに。
だが、意外にもローマンはそれまで見せていた軽薄な表情を潜め、見たことがないような誠実な目でこちらを見つめた。
「あの子は・・・・”彼女”は、私にとって・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「〈アルファ!!〉」
指揮官ゴーレムの悲痛な叫びでジーンは我に返って現状へと引き戻される。
見ればそれは、
おそらく、あの強烈な威圧感でもって無線越しに急かされたのだろう。
「〈何?〉」
「
ジーンが望遠鏡で”現場”を睨む。
そこでは望遠鏡越しですらハッキリと伝わるほどの怒気を背中から立ち上らせた
だが、一向に攻撃を加えようとはしない。
今更だがゴーレム達に”決定打権”は与えられていない。
確認のためという名目でもって、人間のスタッフ、具体的には2人の”監査官”にのみ”目標”を処分する権限が与えられている。
あの
彼等に出来るのは、その直前の”戦闘続行不能状態”までだ。
だが、見る限りあの子はもう既にその状態に陥っている。
つまりゴーレム達は私の許可がない限り、これ以上は指を加えて見ているしかないのだ。
「〈アルファ!! 早く!! ”任務”を放棄するのですか!!?〉」
なんという従順な存在だろうか、本来の”飼い主”である監査官の”裏切り”に対しても、その任務を続行しようと試みるとは。
だがジーンはそこでその問いかけに答えることはことはできなかった。
本音であればそんな命令は下したくはない。
だが、
「〈アルファ!!〉」
尚もゴーレムの指示を求める声が続く、見れば担当のゴーレムだけでなく、他の支援系ゴーレム達もその純粋な瞳をこちらへと向けていた。
皆、どうすればいい? と私に答えを求めている。
だが私自身どうしていいか混乱に陥っていた。
ローマンが私との取り決めを無視して”保証”の提示なしに露骨に止めに入ったのは間違いない。
ならば
だが、私の中の何かがそれを押しとどめていた。
そして、まるで私のその心を察知したかのように、一部のゴーレム達が行動を起こす。
「〈ガンマ!! こちら司令部、 ベータが任務の遂行を放棄! 裏切ったものと推定! アルファも沈黙!! 指示を乞う!!〉」
なんと驚いたことにゴーレム達は機能不全に陥った私を見限り、街の外に陣取る第3位命令権限保有者である
「〈!? 待って!〉」
私が慌ててゴーレム達へ止めに入る。
すると、指揮官ゴーレム達が期待に満ちたような目で再びこちらへと視線を向けてくる。
だが、その視線に応える言葉を私は持っていない。
ゴーレムの無線機の向こうに、エクシールの驚いた声が聞こえる。
街の内部の様子を問うているのだろう。
このままだと彼女が命令を下してしまう。
そうなれば自動的に私も裏切り者だ。
”処理”するならば、その前に命令を下さなければならない。
あと少しで来るという”保証”の連絡を待つ余裕もない。
もはや後には引けぬとジーンがその口を開こうとしたその瞬間・・・
「〈緊急通信!! CP9714がアルファへの緊急通話を求めています〉」
司令ゴーレムの一番奥にいた個体が、大声でそう叫んだ。
それに対してジーンの目が大きく見開かれる。
それは彼女が”保証”の運び屋として極秘に司令を出していた鳥型のゴーレムの識別番号だ。
「〈CP9714!! 報告を!!〉」
気がつけばジーンは叫んでいた。
そしてすぐに彼女の手持ちの無線機に直接回線がつながる。
「〈CP9714!! ”
《
それは幼いころ父の前で隠れて兄が自分の状態を聞く時の、スキルのせいで今はもう使えない暗号だった。
そしてその言葉を聞いた瞬間、彼女の中に渦巻いていた混乱が急速に消える。
「〈アルファより 全隊へ伝達!!〉」
そして指揮ゴーレムに向かって指示を飛ばした。
◇
ゴーレム達がものすごく混乱している。
だが一向に攻撃してくる気配がない。
ひたすら無線で”アルファ”とやらに攻撃許可を求めている。
ひょっとしてこいつら、自分たちの判断ではこれ以上攻撃できないのか?
だがアルファがその求めに応じることはない。
いったい事態はどういうふうに進行しているというのか?
そしていよいよ無線が”俺達を殺せ”の大合唱に染まりだし俺まで怖くなってきた。
そして何体かが機能していない”アルファ”に変わって外へと指示を求めだす。
いよいよおしまいか。
俺達の目には今にもゴーレム達が一斉に飛びかかってくる幻が見えるようだ。
そうなれば、この謎の白服の魔法士は俺達をどうするのだろうか?
というかこいつもゴーレムのはずだから少々ややこしいな・・・・
クーディとかの名前がわからなかった時のノリでとりあえず”魔法士くん”とでも呼ぼうか・・・・
その時だった。
《アルファより 全隊へ伝達!!》
無線の全てのチャンネルが、”アルファ”という女性の声で塞がれる。
《現状の命令は全て破棄!! 直ちに撤収作業に移れ!!》
その瞬間、それまで凄まじい殺気に満ちた表情をこちらに向けていたゴーレムたちから、一斉にその殺気が消え失せた。
「・・・・・!!?」
モニカがそのゴーレム達の豹変っぷりに息を呑む。
無理もない。
そういうのに疎い俺でさせ、まるで”殺気が消える音”を聞いたかのような錯覚に陥っていた。
そして今聞いた指示が間違いではないことの証明のように、ゴーレム達が剣を収めて順番にこの場を離れ始め、無線を聞けば、次々にゴーレム達を街の外へと誘導する指示が飛び交う。
ゴーレム達が疲れたように動き出す光景がまるで昼休みのオフィスビルのから出てくるサラリーマンのようで、かなり不気味だった。
「・・・どういうこと?」
モニカが目の前にいる、白服の魔法士に向かって現況を問いただす。
「そうだ!! どういうことだ!!??」
すると、それに続いて後ろにいた剣士と痩せた方の魔法士の方からも内容を問う声が続く。
どうやら彼等も事態が飲み込めていないらしい。
そしてそれに対して白服の魔法士が、痩せた魔法士の手に持っている無線機を指差した。
どうやら彼等は直接”上”に聞けということらしい。
すぐに魔法士の方が耳に無線機を当てて指示を請い、その返答に目を丸くしていた。
その様子から彼等にも”撤収命令”が下ったことが窺える。
「それじゃ、行きましょうか」
白服の魔法士が、肩を竦めながら改めてこちらに向き直りそう言う。
「・・・それは・・・どこへ?」
モニカが白服の魔法士を睨みながら改めて聞く。
このノリで”あの世”とかって言われたらどうしようか・・・
だが幸いなことに、俺のその場違いな不安は外れる。
「アクリラの境界ですよ、その足じゃ動けないでしょ? 私がそこまで連れていき、そこで”向こう”に引き渡します。」
「・・・殺さないの?」
モニカが核心をついた疑問を投げつける。
「まあ、そういうことになります、まったく・・・まさかあなたがここまで追い込まれるとは想定外でしたよ、慌てて手順を幾つか省略してしまったじゃないですか、もう少し慎重に動いてくれると思ってましたよ」
まさか返答でディスられることになるとは思っていなかったモニカが、面食らったような表情を作った。
どうやら、俺達はこの男の策略にまんまと踊らされていたようだ。
この一連の行動に何の意味があるのかまでは理解できないが、とにかく今の感じだとすぐに殺されるということは無さそうだ。
ほっぺをつねる手はないが、足の痛みのリアルさが夢ではないことを声高に告げていた。
・・・って、
「いっ!!?」
死の緊張から開放されたせいか、急に足の痛みが強烈になりだしそれにモニカが顔をしかめる。
「あ、すいません、半分切れてるんですよね」
そこで思い出したかのように、白服の魔法士が慌ててそう言いながら”左手”に真っ赤な魔法陣を作ってそれを足の傷口のあてがう。
すると急速に傷がふさがり、流れ出していた血が止まった。
どうやら治癒魔法を掛けてくれたようだ。
と、なるとこいつは本当に敵ではないのか?
いや、そもそもなんでゴーレムなのにもかかわらずこいつは魔法が使えるんだ?
というか本当にこいつはゴーレムなのか?
「私は治癒魔法が苦手なんで、歩けるまでは治せないですけれど、これで痛みは引くでしょう、まったく・・・普段は役に立たないくせに、与える傷は無駄に深い、これだから筋肉は・・・・」
最後の部分は俺達ではなく、すぐ後ろで混乱している筋肉の塊の剣士に向けて放たれた。
すると、その剣士が少しバツが悪そうな表情をこちらに向ける。
どうやら彼等もこの事態を想定していなかったらしい。
だが、無線で状況を察したのか先ほどまであった決意に満ちた敵意の色はすっかり鳴りを潜めている。
「急ぎましょう、外の監査官が動き始めれば厄介です、彼女は本当に敵だ」
白服の魔法士がそう言いながら、俺達の体を抱え上げる。
このまま鏡界の向こうまで運ぶつもりだろうか?
それに外いる監査官は敵?
そういえば無線で得た情報だと”エリート”は全部で2人だったはずだ、片方はこの白服の魔法士でもう片方は街の外に陣取っていたはずだ。
ということは・・・
俺は混乱する頭の中で、薄っすらと今までの情報からこのカオスな状況を察し始める。
『モニカ、どうやら俺達は何かとんでもないものに巻き込まれたようだ・・・・』
「・・・・?」
明らかに俺達を”消してしまいたい勢力”と”確保したい勢力”の2つがぶつかり合っている。
となると、この白服の魔法士を単純に”味方”として区分するのはまだ早い。
というか、俺達が危険な目にあっているのはこの衝突のせいかもしれないのだ。
だが今は
少々引っかかりを覚えるが、生きるためには仕方がなかった。
俺は助かったことに対する安心感と同時に、モニカを肩に抱えたこの男について不信感を強めていく。
それでも俺達はすっかり助かったものだという前提で動いていた。
だが、それを承諾しない”者”もいた。
「〈動くな!!!!!〉」
その瞬間、まるで大量の爆弾が一斉に炸裂したかのような巨大な声が、その音圧だけで以ってヴェレスの街にいた全ての者達をその場に縛り付けた。
俺達がその声の主である
恐ろしいことに、”命令”を受け取ったはずなのに、その体から湧き上がる怒気の混じった威圧感は全く減っていなかった。
いや、むしろ先程とは比べ物にならないほど大きくなっている!?
「〈”貴様等”は、また我等を”裏切り者のゴーレム”にしようというのか!!!〉」
そして
「〈ガンマアアアア!!! ”殲滅”の許可をだせえええええ!!!!!〉」
その声は半径20km圏内であれば聞き取れるほど巨大なもので、その凄まじい音量に反射的にモニカが自分の耳に指を突っ込んで塞ぐ。
どうやら今は
そしてまるでそれに応えるように、無線の中に年配の女性の訛りの強い、拙い日本語の音声が流れ込んだ。
《
俺がそのゾッとするような声に恐怖し、それと反対に
「〈了解した、これより”全ての敵”を殲滅する〉」
そして、
明らかに”本気”モードだ。
「〈この”裏切り者”め!! 今度こそ、その誹りを自分達自身で受けろ!!〉」
一方、モニカが自分を抱える白服の魔法士に向かって”これも計算の内?”と
問うような視線を送る。
だがそれに対して返答はなく、そのかわり俺達は白服の魔法士の顔に冷や汗が流れたような錯覚を起こした。
「あ・・・これ、まずいやつだ・・・」
そして白服の魔法士のその呟きに、俺達の感情は再び絶望へと落とされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます