第89話進化や強化などソシャゲにとって重要な能力強化ですが、天井辺りの必要アイテムや資金などを見てみると気が遠くなりませんか?

今回は某ドラゴン様に了解を得て登場して頂きました。私はあの母性溢れるドラゴンさんが大好きです。







 洞窟の中は思ったよりも暗く俺とケットシーの明かりの魔法で中を照らすこととなる。


 洞窟の内側はかなり滑らかに舗装されており、俺達はその無骨ながらも洗練された内壁を感心しながら奥へと進む。




「この洞窟って自然に出来た訳では無いんですかね? かなり滑らかな感じで道になってますし、急な勾配もありませんし……」


「いや、恐らくだけどこの洞窟の主人が移動で使っていたからこうなったんじゃないかな? 幅や高さが均一過ぎるんだよね……体で道を作ったって感じ? 」


 シロの疑問に俺は自分の考えを話してみるが、シロの顔色が青褪めていくのが俺にも分かる。


「それって……こんな巨大な竜がいるって事ですよね? 無理無理無理無理帰りましょうよ ⁈ 」


「帰るといっても……私達帰れないのよね」


 シロが急いで回れ右をするが、セシルのため息と共に吐き出された言葉で動きを止める。


 俺だって他に方法があればそちらを選ぶ……何でダンジョンの二層目で上位ドラゴンと会う羽目になるのやら。




 魔法の明かりで照らされた洞窟を警戒しながら進んでいくが、あまりの魔力の濃さにライアとアクトは気分が悪くなったようで時折口元に手を当てている。


「ライア……無理しない方が良いよ? 今なら戻る事も出来るからアクトと一緒に入り口で待つようにする? 」


 青褪めたライアは俺の言葉に首を横に振りながら小さな声で答えてくる。


「ここで逃げても何も……変わりませんわ。私は強くなる為に……ここに来ましたの。何度も守られてばかりのこの状況は……好きではありませんわ」


「俺も嬢ちゃんに同感だ。あんまり俺らを舐めないでくれるかな? これでも伯爵令嬢と歴戦の戦士だぜ? 」


 強い意志を持ち自らの道を進む少女と、虚勢を張りながらも少女を支えていく青年……二人の意志の強さを感じた俺はそれ以上口を出す事も出来ずに黙って前を進み始める。






 永遠と続くかと思える洞窟の通路の先に強大な広場を見つける事が出来たのは、それから30分後のことであった……




「これは……想像以上ですね。世界の財宝が全て集まっているみたいです」


「何この宝の山は? これ全部竜の持ち物だというの……」


「ふぉぉぉぉ……あそこにあるのは伝説のマタタビにゃ! まさか本当にあるにゃんて! 」


「おい……ライア。勝手にあっちち行こうとするな! 絶対ドラゴンいるんだから一人で行動しようとすんな」


「あの楽器見た事もない形ですわ! それにあの棺桶のようなものは何かしら? あちらの絵画も気になるわね……あの絵ってもしかして日本画では ⁈ 」


「みんな……目の色を変えるのも良いけれど、手を出したら絶対戦いになるからやめてよね。私、怒れる竜となんて戦いたくないよ? 」


 広場には縦横無尽に積まれている金銀財宝や貴重品の数々……まさに財宝と呼ぶに相応しい品々が俺達の目の前に存在している。


 みんなの目がそれらの品々に向かう中、俺はこのフィールドに溢れんばかりの魔力の主を探してみるが、財宝の中にある魔力を秘めた品々の所為で未だ見つける事は出来ていない。




 《そうじゃぞ、この財宝に手を出されては儂も相応の対応をしなければならんからな。気をつけるのじゃぞ? 》



 不意に聞こえた女性らしき声に俺は無意識のうちに腰にある聖剣に手をかけようとしてしまい、慌ててその動きを止める。


 《おぉ、驚かせたようで悪かったの。お前達に攻撃するつもりは今の所無いからの。それにしてもこの世界に来て初めての訪問者がエルフとは儂としても感慨深いの……》


 その言葉と共に、俺たちの目の前の空間が歪みだしそこから圧倒的な生命力が感じ取れるようになる。


「なっ ⁈ 」


 いきなりのんびりとした女性の声が聞こえてくるとは思わなかった俺達は目の前に現れた強大な生物の存在に目を奪われてしまう。


 紅玉のような透明感のある鱗は、その中に炎が封じ込められているかのように薄っすらと光輝いておりその美しさをきわだてている。


 全体的に赤い姿でありながらも胸や腹にかけては白磁のような鱗で赤と白銀のコンストラクトが絶妙なバランスで成り立っており、美術品のような完成感を醸し出している。


 その手や足に鋭く伸びる爪さえも傷一つない水晶のような形をしており、竜という存在が俺達のような存在とは別次元の存在である事を実感させられる。




 《やれやれ、儂に見とれるのも構わんが何か知りたくてここまで来たんじゃないか? 儂も此処の事を知りたいから話し相手にでもなって欲しいのじゃがの》




 口からの息吹が炎を纏うそのドラゴンはやれやれといった感じの雰囲気を醸し出しながら、俺達との対話を望んで来たのであった……







 人? の良いドラゴンのお陰で平和的に対話することが出来た俺達は、ここに来た経緯を話して何故ここに強大な力を持つドラゴンがいるのかを尋ねてみる。




 《いや、儂はここに来たくて来たわけでは無いぞ? 恐らく財宝の中にある魔道具のどれかが暴走してここに来たのじゃろ。確かここに何か居たような気はしたが、儂が丁度この場所に来た時に下敷きになってしまったようでの? 気がついたらあそこに門が出来ておったのじゃ》


 ドラゴンが首を向ける方向に俺達も視線を向けると、第1フィールドからここに来る時に使った古びた門の姿がそこにはあった……どうやら第2フィールドのボスは迷い込んで来たこのドラゴンに踏まれて亡くなってしまっていたようだ……南無〜


「良かった〜ドラゴンさんがここのボスじゃなくて。このフィールドに来た時には本当に死を覚悟しちゃったから本当に良かったよ」


 《それは悪かったの。儂としてもまさかこんな世界にまで来る事になるとは思わなかったからの……次の配信までに帰れるじゃろか?》



 ……どうやらこのドラゴンさんは配信をする程の現代的な世界から来たようだ。


 ドラゴンが配信する世界って一体どんな世界なんだろうかな? 少しだけ興味が出て来たぞ。




「ドラゴンさんは配信って一体どんな事をしているの? 私が知る限りネット配信しか思い浮かばないんだけど」


 《おぉ! ネット配信を知っておるのか。この世界も中々良い世界のようじゃな。人間ども触れ合ってみると中々面白いものでな? 今では儂にも『ドラ友』がいっぱいじゃぞ? 洞くちゅ……洞窟の中で財宝を守るだけの日々とは違って世の中というものを知ることが出来て儂も満足じゃな……洞窟じゃぞ?》




 何やら洞窟を強調するドラゴンにほんわりとしたものを感じながらも、俺達はドラゴンと他愛のない話を少しばかり続けるのであった。

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