第38話事前登録でキャラが手に入るのはわくわくしますよね?でも事前抽選に中々入らない…

 世界の守護者との激闘も終わり、仲間に(ヒール)をかけ終えてから我が家をもう一度見てみる。


 基礎は大丈夫なようだが壁や窓ガラスがボロボロになっていたり、割れたりしている。


 部屋の中もガラスの破片や、ゴミなどでいっぱいだし、タンスや家具も散らばっていて人の住める家では無くなっている。


「はぁぁ…こりゃ掃除と補修ででどの位掛かるのか想像も出来ないや」


 溜め息と共に言葉を吐き出し他のみんなを確認するも、こちらもみんなボロボロの為すぐに動ける者がいないのが実情だ…


 いや、セシルは行けるか?


「セシル、取り敢えず君は盗賊ギルドの件があるから街に帰りなよ。こちらは何とか私達でするからさ。後、今回の誘拐については私も口添えするから何かあったら言ってくれれば良いよ」


 俺が無影を召喚し、無影にセシルを街まで送るよう頼むとセシルも自分のやる事を思い出したのか俺に真剣な目で話しかけて来た。


「今回のの件はこちらこそ助かったよ。口添えしてくれるなら俺達も多少は楽になるしね。もし捕まりそうになったら頼っても良いかな? 」


「悪い事をしてなきゃ擁護はするよ」


 俺の素っ気ない言葉にセシルは俺を抱き締めて耳元で囁く。


「転生者の話は今度会った時にするからまた会おうね」


 それだけ言うと無影に飛び乗り走り去るセシル。


 いつの間にかシロが隣に来てシャーシャー言っているが、君は猫じゃなくて山羊の獣人でしょうが…




 さて、気を取り直して家の片付けをしようと家を見て腰を抜かす!


「はぁゎゎゎゎゎ…」







 あれほどボロボロになっていた家がジュワジュワと音と泡を立てながら修復している ⁈


  壁は元より、窓のガラスまで黒い手が何処からともなく現れて、割れた場所に欠片ををつけていく。


 するとその場所が膨れ上がったかと思いきや、血管のようなものが浮かび上がり欠片と融合している修復していく…


 部屋の家具やらタンスなども黒い手の働きによって瞬く間に手直しされていっている ⁈






 ………チョロ、チョロ…ピチョ………







 いかんて! 気が抜けた所にホラーはいかんて!




 履き替えたパンツも黒い手が用意してくれました。


 白とピンクのストライプだよ!







「中々…変わった家だったんですね」


 シロもドン引きだよ!


 家鳴りは慣れた様子で黒い手に指示までしてるしどうなっているんだよ ⁈


「マスター忘れたのか? 我らが守りし家もこんな感じで治っておったぞ? 大体普通に考えて自動的に治る家なぞある訳無かろう? 」


 ローンしてまで買った家がまさかのモンスターハウスだった!


 どんな設定作ってたんだよあのゲーム会社め!


  お陰で、えらい目にあったよ!


「私、別に家を作ってそこで暮らす。夜中にこんな姿見たら間違い無く漏らす…」


「ま、マスター。それではこの家が可哀想じゃ、ほれ見てみよ! 」


 正直見たくはなかったが嫌々見てみると、黒い手達があわあわと右往左往している姿が目に入った…


 何処かのゲームのモンスターかよ ⁈


「わ、分かったよ、この家に住むからそんなに慌てるな。その代わり夜中には絶対に出るなよ? 出るならまずは家鳴りに相談しろよ、な?」


 俺のお願いにどうやら納得したらしい黒い手は手首を上下に動かす。


 昼間の状態ならそんなに怖くは無いがそれでも念のために必要な措置だ。


 パンツが足りなくなる。


「ご主人、本当にここに住むんですか?夜中にあんなことやこんなことされてしまうかも…ぶへっ ⁈ 」


 馬鹿な事を言い出すシロをはっ叩いて部屋の中に引きずって行く。


 皆には休養が必要だ。


 流石に今日は疲れた…


 お前は気楽でいいな、このももふめ!






 簡単な夕食を食べた後は、(クリア)を使ってすぐに寝た。


 まだまだ治ってない所も多いらしく家としての機能は60%以下だそうだ。


 あちらこちらでしゅわしゅわと泡を立てているが気にしない気にしない気にしないー!







『ジルアちゃん大丈夫なの ⁈ 』


 朝からハイテンションな俺を呼ぶ声が聞こえる。


 シロと家鳴りに挟まれて寝ている俺の部屋の扉が吹き飛ぶように開けられて、汗を湯気のように変えながらクレアさんが無断で俺の部屋に入ってきた!


「何か街まで轟音は響くは、森に来たら大穴空いてるは、心配でしんぱ…ジルアちゃん? 」


 俺の寝巻きは大きいTシャツ一枚とパンツである。


 男の頃の癖が抜けずにいつもこんな格好だが、どうやらクレアには刺激が強すぎたようだ。


 因みにシロは下着だけ、家鳴りにいたっては褌一丁である。


「ジルアちゃん…恋をするなとは言わないけど二人同時はどうかとお母さんは思うわけよ…お母さんにさえ任せてくれれば「…(ブロウ)」


「ドガッ! 」


 クレアに生活魔法の風を起こす(ブロウ)を遠慮なしでぶち込み、部屋から追い出す。


 朝から無断で乙女の部屋に入る奴には容赦はしない。


「何だ? またクレアの病気が出たのか? ジルア大丈夫か? 」


 カスパルの確認する声が聞こえるので、クレアの足を引きずってカスパルの下まで運ぶ。


 途中でいい音がしたが、寝起きの悪い時の俺はこんなもんだ。


「これ…返す。昨日は流石に疲れたから静かにして…黒の手。悪いけどお茶でも入れてあげて」


 俺の言葉に気配もさせず黒の手が現れお茶を入れ始める。


 まさか本当にしてくれるとは思わなかったが丁度良いから任せよう。


「ク、クレアこれどうなってんだ?ジルア無茶苦茶機嫌が悪いじゃねーか! 何したんだよ? ついでにこれは何なんだよ? この家呪われてるのかよ? 」


 カスパルの叫びが聞こえるが今は眠い…また後で…




 次の目覚めは快適だった。


 クレアが何故か正座させられていたがそれはそれで問題無いだろう。


 黒い手が二人の世話をしている事も気にはならないし、どちらかと言うと黙り続けているカスパルの方が不気味だ。


「ごめんね? ちょっと昨日は色々あり過ぎて私達死に掛けてたから…まぁ何とかしたんだけどね」


 驚く二人を安心させる為、何とかした事にしてしまう。


 何時か『世界の守護者』が来るかも知れないがそれはその時考えよう。


「本当…なのね? ごめんね、大事な時に足止めされちゃって…」


「トリフ男爵に無理難題を言われてな…男爵の屋敷にほぼ軟禁状態だったんだ。後から真相を聞かされたがまさか盗賊ギルドの副団長がトリフ男爵の家族を攫って脅してたとはな…」


 二人が謝るがそれは筋違いだ。


「それは仕方がないよ。男爵もしたくてした訳じゃないし、今回は全てブヒルが悪いんだって。詳しい話は出来ないけど大きな力も動いていたし…」


 俺がそう言うと一応納得してくれたのか落ち着いてくれた。


 因みにシロと家鳴りは未だ爆睡中である。


 青い毛玉を俺の代わりに置いてきたから今頃もふもふを堪能しているであろう。




「それで…だな」


 カスパルがやけに言いにくそうにこちらを見ながらおどおどしている。


 隣のクレアも同様だ。


 何があるのか分からないので黙っていると意を決したのかカスパルがこちらを見て話し始める。


「実は今回の件で領主様がお前に会いたいと言ってきてな…」


 戦闘後は戦後処理の方が大変そうです…













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