第26話最近の課金ゲームは確立表示が基本らしいですね。あの0の数は気になりますが
俺の手の中に現れた青い毛玉。
青空のように綺麗な背中側にお腹の方の白い毛が雲のようにマッチしており、とても可愛らしい。
だが待って欲しい、何でこの子は俺の手を執拗に舐めるんですかねぇ? まぁ手だけでなく体をどこでも舐めてくるんだが。
「ご、ご主人。えらく懐かれておりますね…」
「あれは懐いているというより、きっと食糧と見られておるぞ」
…そうだね。
ペロペロキャンディ並みに舐められてるもんね。
「多分この毛皮に引き寄せられてここまで来たんだと思うんだけどな」
落ち着かせるために撫でていたら膝の上で寝転んでしまった。
離すと可哀想なので取り敢えずは現状維持かな?
「なぁ。この子この森に住んでたのかな? 私最初にこの世界に来た時、ここにいたんだけど…」
この子の住処がここならば俺はかなり危なかったのではなかろうか? そう思うと冷や汗が流れる。
すると、また青い毛玉が起き出しその汗を舐めにくる…ん?汗を舐めるとな?
「あ!この子、私の魔力を舐めてるのか!」
そう考えれば納得出来る。
今この中で一番魔力が多そうなのは自分だしな。
「ヒャン!ヒャン!」
喜んでいるのか、もっと汗を寄越せと言われているのかは分からないがこれでこの子が魔力不足なのは分かった。
俺は魔力を分け与える中級魔法の(マナ・トランス)を使う。
「ドラゴンファンタジア」ではMPを100渡す魔法だったのだが、想像以上に減っていく気がする。
半分くらい抜かれた気が感覚でようやく魔法の効果が終わったが、かなり疲れた。
「な、何という魔力を動かしておるのじゃ!大丈夫かえ?おかしい所はないか?」
えらく心配されている気はするが、今の所問題はない。
それよりは眠い…これはヤバイ…
「ちと先に風呂に入るわ。もう眠たくてたまらん」
俺は青い毛玉を抱いたまま風呂場へと向かった。
着替えを持ってバスルームに入る。
シャワーで終わらすつもりなのでさっさと服を脱いで浴室へ青い毛玉と一緒に入る。
何故か嫌がらない毛玉を先に洗うべくシャワーの温度をぬるめにして尻尾の先からゆっくりと掛ける。
暖かなお湯に慣れた頃に背中にも掛けてやり、耳を抑えて頭には手で少しずつ掛けてからシャワーを掛ける。
ぐでーっとなっている毛玉を動物用シャンプーでゆっくりと手を櫛のようにして洗う。
殆ど寝ているお湯に濡れた毛玉をお湯を入れた桶に入れ、さっと自分の体を洗っていく。
「ご主人。私がお洗いしますので!」
「我の洗いは癖になるでな。覚悟してな」
何故か二人も入って来たが、眠たい俺は手加減なしで動物用シャンプーを手に塗りたくり、シロの身体をくまなく洗う。
ついでに湯舟も張っておこう。
俺の特技は動物のお風呂入れだ。
何故か俺が動物をお風呂に入れるとその動物はお風呂好きになってしまう。
手洗いで動物達を洗ってやるのだが未だ俺のお風呂入れで逃げ出した動物はいない。
このハンドパワーを味あわせてやろう。
「ちょ⁈ 何ですか!…ご主人、ちょっと手加減して…」
力の抜けて来たシロの身体を流して人間用シャンプーで頭も洗う。
頭皮マッサージもしておこう…
「何これ気持ちいい!痛いけど気持ちいい!」
動かなくなったシロを湯を張った湯舟に突っ込み、家鳴りの腕を取る。
「マスター、私急用思い出した。残念だけどお風呂はまた今度にするから手を離して!」
いつもの口調が壊れているがそれはそれ。
人間用ボディソープを手に塗ってくまなく洗ってやる。
途中で泣いていたが仕方がない。
入って来たら洗うのがお風呂場なのだ。
頭も洗ってはい完成!ちょっと人に見せれない顔になっているがまぁいいか。
俺も肌寒くなったので三人同時の入浴。
その内二人は失神してるがどうでもいい。
ゆったりと浸かった後は、寝ている毛玉から身体を拭いて乾燥させ先に俺の布団に入れておく。
残りの二人は適当に拭いてやりリビングまでは運んでやった、後は知らん。
最後に風呂場の水を全て抜いてクリアだ。今回は乾燥を意識して掛けてみたが予想以上に水気がなくなった。
お股が弱いのでトイレで用を足す。
そういやウォシュレット付いてたな。
久々の紙のトイレットペーパーに感動し部屋に入って布団に入る。
毛玉のお陰であったかだ。
…もう限界、おやすみなさい…
「ヤバイ!ご主人マジヤバイ!」
「ちと、手慣れ過ぎてはいまいか?その様な技、どこで手に入れた?」
朝からいきなり質問攻めである。
あまり昨日の事は覚えてないので適当に相槌を打つ。
起きた理由が、顔を舐めてくる毛玉の所為である。
顔を洗い、歯を磨く。今日の朝食は昔沢山作っていたサンドイッチだ。
賞味期限が気になるがアイテムボックスの中に腐ったものは無かったから大丈夫だろう。
腹を壊すならシロか家鳴りが先になりそうだしな。
「それでご主人、今日はどうするんですか?多分ですけどこの子を探している人がいると思うんですけど」
シロが毛玉を転がしながら話し掛けてくる。
おぃフェンリル、お前の誇りはどこにある?そんなに嬉しそうに尻尾を振るんじゃない。
「そうだね、問題なのはこの子を連れて行ったら私達の命の保証が無いという事なんだが」
助けた挙句、殺されるのは遠慮したい。
どうしようかと思っていたら向こうから厄介事はやってきた。
「おぃ、こんな所に家なんてあったか?」
「家?今日まではここには何も無かったのは確かよ。あの木に見覚えあるもの」
…なんか懐かしい声である。
毛玉を手にとって外へと向かう。
家鳴りには一応警戒してもらう。
こんな近くまで誰も気づかなかったしな。
シロの察知系をくぐり抜けれる奴はまともな人間だと思わない方がいいだろう。
「昨日から私、自分に自信が無くなって困ります」
俺はシロの頭を軽く撫でてやり玄関を開ける。
そこには3m近い熊が斧と鎧を身に付けてこちらを見ている。
その横には皮の鎧に身を包み、弓を担いだ女性が目を見開いてこちらを見ている。
やっぱりカルパスさんとクレアさんだ。
「あれ?私ついに幻を見るほどジルア成分切れちゃったのかしら?」
「お前は真顔でそんな事いうな。あれはジルアだろ…相変わらず無茶してるようだし」
二人が何か言っているが俺は毛玉を持ったまま二人に走っていく!本当に久しぶりにあった所為か、目から涙が溢れてくる。
きっと魔力の所為なのだろうと思いながらカルパスさんの鎧が無い足に飛びつく!もふもふが戻ってきたよ!
「じ、ジルアちゃん!そんな熊公に何かほって置いてお姉ちゃんと再会のハグをしましょう!」
「…ほんとクレアはブレねえな。ジルア元気にしてたか?」
その言葉にうんうんと頷き、俺は久しぶりの再会を熊の臭いで味わうのであった。
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