第216話 アンタはエライ

「301のお客さん。いい客なんですよ」

「そうなの?」

「はい、ビール10本頼むし、フードも食うし」

「そういう意味で?」

「はい、いい金になってますよ~」

「僕が掃除することになるからな~、僕にとっては迷惑な客かな…」

「そんなこと言っちゃダメですよ」

(うん…そうなんだけどさ…絶対部屋汚いじゃん…)


「桜雪さん」

「ん?」

「Kさんていい人ですよね」

「そうだね、地味だけどさ、真面目な人だよ、このホテルでは珍しく真面目な人だよね」

「そうですよね、あの人はホントに客のためにって感じが出てますもん」

「だよね、僕には無いよ」

「解ります、それが普通ですよ」

「まぁね、バイトだからね、楽に稼ぎたよね、時給安いし」

「桜雪さん減給されたんですよね」

「うん、社長とケンカしたから」

「なんで?」

「僕、正直なんだよ、お客様のためなんて考えたことねぇ、ヒマで清掃1部屋もしなくてよければそれが最高だ、全員、本音はそう思ってるはずだって正直に言ったからかな」

「その通りですけど、言える桜雪さんが凄いです」

「そうだろ、クビになってないのが不思議だよ自分でも、嫌々やってるんだって言いきってるんだけどね」

「そりゃそうですよね」


「Kさん、アンタはエライ!!」


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