第87話 思い込み

「先ほど201を使ったんですけど…腕時計落ちてませんでしたか?」

(腕時計って落ちるモノなのか?)


「今、丁度清掃中で、その部屋に居りますが、どこら辺で外したか覚えてますか?見たところ、無いようですが」

「いや、ソコ以外考えられないんです、高い時計なんです、7万したんです」

(時計で7万…高くはないだろ…)

「大概、洗面台か枕元に置いて行かれる方が多いんですけど見当たりませんよ」

「外してないんです、落としたんです、風呂場とかないですか?」

「風呂場?したまま入ったんですか?」

「外してないんで」

「ありませんけど…勘違いじゃないですか」

「ソコ以外に考えられないんです!!」

「解りました、こういうことですね、我々が盗んだと、そうおっしゃりたいんですね、その7万程度の時計を、それなら警察入れて、この部屋調べてもらいますか?なんなら、このままにしておきますから、御自分で、これから探してもらっても結構ですよ」

「いえ…その…また電話します」

「また電話?されても無いモノはありませんよ、この先、不特定多数の人間が出入りするんです、仮にこの部屋にあったとしても絶対に出て来ませんよ」


 フロントに戻って、一応、利用時間と車のナンバーを控えておく。

「あっ、桜雪さん、酒呑んでるわ」

「そりゃ警察呼べないね」

「ホント落としたんですかね?」

「さぁ、無意識に外して鞄の中とかさ、あるいは、したつもりで鼻っからしてないとかさ、大体、時計したままするかね、邪魔じゃない?」


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