{第六十話} すいません、そう言う体質なんです
深夜...
「マスター...ぐっすり眠っていますね」
「でも、あなたは起きていますよね?」
ネラは疲れて深い眠りについている昌に話しかけるが、ぐっすり眠っているのでまったく起きる様子は無い。
「いつから気づいていた?」
目は瞑っているし、起きた様子もない。
しかし、口だけは動きしゃべった。
「最初からです」
「確信したのはあの森での一件ですが」
「森の一件でやはり気づいていたか...」
「オレの名前はシュウ」
「しかし、最初からと言うのはどう言う事だ?」
昌はベッドで目を瞑り寝ているが、口は動いている。
違和感しかない。
「私は人の感情がその人から出るオーラの色等でわかるんです」
「京一様は私にこんな能力がついたのは「偶然だ」と言っていましたし、それにあまり使う場面がありませんでしたから、私もそこまで気にしていませんでしたが、こんな所で役に立つとは思いませんでしたが」
「なるほど...」
「それでオレは何色に見えた?」
「基本は「怒りの赤」「悲しみの青」「喜びの黄色」の3色が見えます」
「そこに「緑色」「紫色」「水色」などを含め全8色が見えます」
「そして体から放たれたオーラの量等で感情の強さがわかります」
「一番最初に会った時はマスターの「黄色」「水色」「緑色」「橙色」の4色が見えました」
「その4色はそれぞれ「喜び」「驚き」「不安」「警戒」です」
「ですが、その中にうっすらと黒いオーラが見えました」
「この色と感情の関係は「プルチックの感情の輪」を参考に色分けされています」
「しかし、そこに黒は含まれていない」
「人間の感情は例えば、怒りが一時的に強くなる事はありますが、不安や警戒等がゼロになることはありません」
「しかし、黒色のオーラが強くなったり弱くなったりする事は無くずっと一定の濃さを保っていました」
「ですが、あの森から敵を倒し出てきたマスターの色は黒色一色でした」
「オーラを見るまでも無く別人に見えたでしょうが」
「そして、今もマスターは黒いオーラ一色しか見えません」
「黒色か...」
「間違いないな」
「だが、オレはもう自分からは現れない」
「オーラとしては、本当にうっすらとしか見えないほどに」
「もう、オレが昌を守る必要は無いようだからな」
「私を信用すると?」
「ああ、オレよりお前のほうが肉体的にも精神的にも昌は安定するみたいだからな」
「そうですか、分かりました」
「最善は尽くしますが、もしもの時は...」
「分かっている」
その一言を最後に黒いオーラは水が入ったコップに一滴墨汁を混ぜた位の濃さになった。
いわゆる心なしか程度だ。
シュウも深い眠りに付き、この場で起きているのはネラのみとなった時ネラはつぶやいた。
「京一様にマスターの過去の一件は聞いてたとはいえ、実際にこう言う場面に会うとやはり...」
そして、ネラもベッドに入った。
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次の日 早朝
「おはようございます、マスター」
「昨晩はよく眠れましたか?」
オレはネラの声で目を覚ました。
「ぐっすり眠れたよ」
オレのベッドの横に立つネラは、スーツに着替えていた。
「そうですか...」
「では、着替えてください。今日は京一様と特訓をする事になっています」
「着替えはこちらに」
昨日、無造作に脱ぎ捨てたスーツはまるでクリーニングから帰ってきたかの様に見えた。
「そうか、ありがとう」
「ちなみに、今何時だ?」
「午前4時です」
ちょっと早いくない?
「そうか...スヤァ...」
オレは毛布に包まったが、ネラに毛布を剥ぎ取られた。
「二度寝は許しませんよ?」
「すいません、ちょっとした出来心だったんです...」
「早く着替えてください」
「はい...」
ネラにせかされスーツに着替えると扉をノックする音が。
「おはこんばんにちは、おじさんですっ!」
扉の向こうからおじさんの声が聞こえたかと思うと「ガチャ」と、扉のカギが開く音が聞こえた。
「は?」
スーツ姿のおじさんが何食わぬ顔で扉のカギを開け、部屋に入ってきた。
「特訓のお時間です!」
「準備はできたかい?」
「朝食がまだなんだが?」
朝はバナナ一本だけでも食べた方がいいって聞くしな。
「わかった、ブロック状のクッキー...」
「またかよw」
「の、ドリンクバージョンを!」
「そっちかよw」
カンのタブを起こすと「カッシュ!」といい音が。
「ネラ、いつもの平原までよろしく」
キンキンに冷えたコーヒー味を飲んでいと突然、床に魔方陣が現れた。
「ゑ?!」
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謎の平原
「ゲホッ!ゴホッ!」
コーヒーをむせるオレ。
「ん?どうした?」
「「どうした?」じゃねえよ!」
「唐突にテレポートすんなし、コーヒーむせただろ!w」
「悪い悪いw」
テレポートした先は見渡す限り平原で、木の一本も見えない。
「あ、ネラ」
「この前の昌が魔法を試すのはうまく言った?」
「はい」
「おk」
「昌、まずは魔力を使わない肉弾戦からだな」
おじさんは握った拳を前に出す。
「え?魔法があるのに?」
攻撃魔法とか使ってみたかったのにな...
「魔法があるからこそ、魔力を使わない戦闘技術が重要になってくる」
「剣等の武器も重要だが、一番は素手だな」
「と、言いますと?」
オレはてっきり「銃」とか言うと思ったのだが。
「以外と需要はあるんだぞ?身体検査に引っかからない利点は大きい、近付きざま頚椎をひとひねり」
「その気になれば、頭蓋骨を握りつぶせる」
「え?おじさんの中学の担任ってタコだったのか?」
そして、南の島でクラスメイトの一部が謎のウイルスに犯された。
「あ、バレた?w」
「当たり前だw」
オレだって結構マンガも読んでるんだぞ?
「さすがに、手の握力で頭蓋骨を握りつぶせとは言わない」
「まずは「防御技術」受け流したり、避けたりとかな」
「次に「攻撃技術」簡単に言えばキックやパンチだな」
「この二つを鍛える」
「どれくらい?」
さすがにおじさんに近接戦闘、それも格闘で勝てる気はしない。
ある程度耐えられるくらいで...
「そうだな...攻撃は俺にかするくらい」
「防御は俺の攻撃をかわせるくらいにはなってほしいかな」
「了解」
「じゃあ、はじめるぞ?」
「ちょっとまって...」
太陽が昇り、目を細めたくなるような強い光が平原に差し込んできた。
「ん?」
「ハッ!ハッ!ハックション!」
すいません、まぶしい光を見るとくしゃみが出る体質なんです。
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