{第五十四話} エルフの森の悲劇
「そう言えば、まだ何が聞いてなかったな」
「君達の身に何があったんだ?」
「いやじゃなければ聞かせてくれないか?」
彼女達の事は、森に住んでいてあの国王の命令で兵士に城までラチられ連れてこられた位しか知らない。
「私たちはなにもして無いんです...それなのに突然、兵士達が村を私達を襲て来ました」
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帝国領地内 場所不明 エルフの森
「見て見て!アマフ!上手に出来たの!」
笑顔で走ってきたフレムの手には白い花で作られた冠があった。
若干、楕円になっては居るがとても良い出来だった。
「上手に出来てますね」
駆け寄ってきたアマフとフレムのあいだを強い風が通り過ぎ、その強い風によって冠はフレムの手から離れ上空高く舞い崩れ散った。
アマフは少し険しい表情を浮かべ耳が「ピクッ」っと動く、第6感が反応したのかもしれない。
そこへ、男達が走ってきた。
「緊急事態だ。森を散策していた連中から怪しい兵士達がこっちに向かって来ていると言う情報が入った」
「念のため村の若い連中は爺さん婆さんを連れて例の小屋の地下に隠れていてくれ」
やってきた男達は武装して、剣や弓を手にしていた。
「でも...」
「こういう事は男達に任せな!」
そう言って森の奥へ消えていった。
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帝国領地内 場所不明 エルフの森 例の小屋 地下室
地下室とは言え簡易的な物で床を壁は木製だが中は薄暗く狭い、そんな所に約20人がぎゅうぎゅう積めに入っているため、とても息苦しいし1人が不安な事を出すと全員に伝染する。
それを知っている老人や大人は表情や合同、口には出さないが子供には無理だろう。
「アマフ...」
まだ幼いフレムはアマフにしがみついて離れない。
そんな状況が十数分経つと小屋に数人入ってきた。
小屋の中を歩き床の木がきしむ音が頭上から聞こえてくる。
そんな頭上から聞こえてくる足音と木のきしむ音がアマフ達の恐怖心を煽った。
さらに男達の会話が聞こえてきた。
「そっちにはいたか?」
「いやいない」
「そっちは?」
「こっちもだ」
「どうなってるんだ?この村は」
「男はいても女子供、老人一人居ない」
「どこかに隠れているとし考えられない」
「または、逃げたか...」
「ここが最後だしな」
「それにしてもこの床、他の家の床に比べてきしむな」
「そう言われてみれば...」
「下に何かあるのか?」
「何も無いのかも?」
そんな疑問を持った2人が探せば地下室への扉など簡単に見つかってしまう。
何も無いと思わせる事が見つからない一番の理由だからだ。
「ん?」
床に引かれた絨毯の下にある扉を兵士の一人が見つけてしまった。
見つけた兵士は仲間を呼び集め、扉の周りと小屋の周りを固め万全を期して扉に手を掛けた。
扉は古めかしく、錆びた蝶番がギシギシと音を立てた。
そんな扉を開けた先には5段程度の階段があり地下室が広がっていた。
「見つけたぞ!連れて行け!」
数人の兵士が少女を連れ出そうとすると一人の老婆が兵士の足にしがみ付いた。
「どうか、おたすけを...」
老婆は必死に訴えるが効果は無く、どちらかと言えば逆効果だった。
どうにか兵士は老婆を振り払おうとするが老婆は足にしがみ付いたまま離れない。
それに逆上し兵士は腰の剣を抜き、老婆の背中に突き刺した。
兵士の足をつかんでいた両手は地面に落ち、服は赤く染まり床には血溜まりができた。
「良い見せしめだ、こうなりたくなかったら大人しく言う事を聞け」
「まずは、若い女からだ」
そう言い、一番手前に居たアマフの腕を掴み引っ張った。
アマフ達、若い女性10人を地下室から小屋から出し、残りは老婆、老人だけになると兵士達は地下室から出て火炎瓶を投げ込み扉を閉め、上に重い棚を置き老婆達を閉じ込めた。
「何をするの!」
アマフは声を上げ小屋に近づこうとするも、兵士の一人に掴まれもがくも、その兵士の手を振りほどく事はでき無かった。
床の隙間から出てきた黒い煙がもくもくと小屋の中に立ちこめ次第に下から激しい炎が小屋飲み込んで行った。
兵士はアマフ達に首輪を付け、鎖で繋ぎ馬車に乗せた。
馬車はヴォールト状に布が被せられ、外からは中が見えないし中からも外が見えなかったが、布にあいた小さな穴から外の風景を見る事が出来た。
森からはのろしの様に黒い煙が空へと昇っていた。
そんな森からどんどんと遠ざかって行くのをアマフは穴から眺めていた。
数日後...
あれから何日たったのか、ここが何処なのか。
布の穴から差し込む光で昼夜判別できる程度だ。
ろくに食事も与えられず、かろうじてもらえる水は少し茶色がかっていたが飲むしかなかった。
しかし、水だけでは空腹は抑えられずみな意識が朦朧としてくる。
最初は泣き叫んでいたフレムも兵士達に殴られあざだらけになっていた。
アマフ達も兵士を止めに入ったが結果は一緒に殴られるだけで、全員衣たる所がキズやあざだらけで全身が腫れていた。
馬車は何度か止まったが兵士達の食料補給や休息のためで、アマフ達は何も出来なかった。
逃げ出す体力も気力もそこを着き、お互いの名前を呼ぶのがやっと。
しばらくすると外が騒がしくなった。
どうやら街に入ったようだが、アマフ達には関係ない。
そんな外あら聞こえる人々の声や音に耳を傾けていると、馬車が止まった。
兵士はアマフ達を馬車から降ろした。
布の穴からではなく、直接太陽の光を見て浴びるのは久しぶりだ。
そんな眩しい光に手を額に当て眉をひそめた。
しかし、ゆっくりしている暇はなく兵士に鎖を引かれ建物の中へ...
大きな扉の前まで連れてこられた。
歩く気力は無く兵士に鎖で引きずられる様にしてつれて来られたためいたるところに擦り傷が出来ている。
しかし、もう「痛い」という間隔は麻痺しきっていて今更すり傷程度、何も感じない。
扉の向こうにはイスに座ってふんぞり返っている偉そうな男と、黒い服を着た男の二人が居た。
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「そして、今に至ります...」
アマフは一通り話し終わるを水を止めスポンジを置いた。
「そうか...いやな事を思い出させてすまないな」
アマフは笑顔で答えたがまだ無理をしている様だった。
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