{第五十二話} ゴール手前の「振り出しに戻る」

「メイド服はこの世界にもある」

「そんな服を彼女達に着せたら、彼女達に誤解されかねない」

「結局それが目的だったのか...とね」


「そういう訳ではないのだが...」

たしかにハネットの意見も分かるが、じゃあどうしろと?

ん?さっきから俺が一方的に意見を出してて、あいつはなんも意見出してなくね?

「お前はなんか良い案は無いのか?」


「わ、私か?」

「そうだな...」

少し動揺した後に考え込んでしまった。

しばらくすると考え終わったのか、顔を上げた。


「なんか、思いついたか?」


「いや、なにも!」

きっぱりと彼は言った。


「は?」

「まぁ、そんな事だろうと思ったけどなw」


「すまない」

まず自分が思いつかないのに人に意見を求めて、そいつも意見が出せなかったかろといって俺にはそいつを攻める権利はない。

だって、俺も意見が無いのだから。


「じゃあ、まずはズボンから決めていこう」


「ズボン?」

唐突の俺の提案に彼は首をかしげている。


「いっぺんに決めようとするから悩むんだ」

「まずは、ズボンから決めていこう」

「でも女性だからスカートか?」

やっぱ少しずつ考えた方がいいよな。


「スカートかズボン...」

「私はズボンが良いと思うな」


「俺も同意権だスカートにした日には「しばしばこの社会では性的に強調した(ry」とか言われる」


「そ、そうだな...」

「じゃあ、下はズボンで決まったが上はどうするんだ?」


「Tシャツかな...」


「色は?」


「白かな...」


「異論は無い」

この本人達の居ない女性達の服を決める男2人だけの会議により、彼女達の服はジーパンに白いTシャツに決まった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


京一宅 脱衣所前 廊下


「やっぱこうなるよね...」

俺は彼女達の人数分のジーパンとTシャツ、ベルトと持っていた。

議論の結果、彼女達の服は決まったのだが、その決まった服を脱衣所には誰がもって行くのかと言う議論が始まった。

俺はさっき行って来たからいいと言ったのだが「なら、京一のほうが慣れてるだろ?」とか言われ...

今に至る。


「「慣れてる」って何だよ...」

脱衣所の扉の前で呟き「は~」と大きなため息を一つ。

今更嘆いたところで今のこの現状は何も変わらない。

色々考えるのを止め脱衣所の扉を開けた。


「へ?!」

扉を開けると彼女達はちょうど今さっきお風呂から上がったらしく、用意したタオルで体を拭いているところだった。

そんな彼女達を見た俺もびっくりしたが急に入ってこられた彼女達も驚いていた。

両者とも驚き、一瞬固まってしまった。

まるで時が止まったかの様に。

しかし、先にその止まった時の流れから抜け出したのは京一だった。

京一は着替えを床に置き、脱衣所から飛び出し扉を閉めた。

その間に掛かった時間は0.5秒!

とんでもない早業だ。


「もうしわけない!まさか、もう風呂から上がっていたとは...」

「だが、ちゃんと確認もせずに入った俺が悪かった」

「着替えはそこに置いておいたから」

「俺はこれで」

扉越しに謝罪した。


「い、いえ!大丈夫です!」

「着替えをわざわざ用意してくださりありがとうございます!」

京一の声が聞こえたようで扉の向こうから返事が帰ってきた。

どうやら怒っていない様子で「よかった...」とはならず....顔面に洗面器が飛んできた。


「あ、あれ...?」

何故、洗面器がこんな所に?

顔の横に洗面器が転がっていた。

おかしいな、着替えを置いて脱衣所を出て扉を閉めたはず...

床に倒れながら、その扉の方を見ると扉は開いていた。

それに、用意した彼女達の着替えは床に置いたと言うよりかは、床に散乱していて床に落としたと言うのが正しいように見える。

この状況から考えるに、俺は0.5秒であの行動をする妄想をしていて、そのあいだに洗面器が顔面めがけて飛んできたと思われる。

そんなくだらない事を遠のく意識の中で考えていた。


数分後...


「はっ!」

目を覚まし、仰向けで床に寝転んだ状態から勢い良く起き上がると何かに頭をぶつけた。

おや?これはもしや、倒れた俺を膝枕して顔を覗き込んでいたら、ちょうどその瞬間に起き上がった俺と「ゴッン!」って感じか?

そんなアニメ的な展開を予想しつつ、瞼をゆっくりと開けると目の前には額を押さえながらもだえるハネットの姿が。


「何だよ、お前かよ!」

そんな愚痴を言い立ち上がる。

そんな俺に対して彼は「俺で悪かったな!」と言いながら自分の額をさすっていた。

どうやら倒れてのびていた俺を顔をしゃがんで覗き込んでいたらしい。


「お前が倒れたって聞いたから急いで駆けつけて見れば、着替えを除き洗面器を投げつけられ気絶するなんて...友人として恥ずかしいよ!」

そんな事を言っている横にエルフの少女が立っていた。

少女は下着にTシャツを着ただけで下を履いていず、髪が少し濡れていた。


「あ、あの...」

「さっきはごめんなさい!」

「突然入ってきたのでつい...」

どうやら、さっき俺に洗面器を投げつけ気絶させたのは彼女の仕業らしい。


「大丈夫だ問題ない...」

「あれは俺が悪かった」

完全に俺の不注意でした。


「こ、こちらこそ」

少女はそう言いながら、Tシャツを下に引っ張り下着を隠した。


「あれ?ズボンは?人数分要したよな?」

サイズが合わなかったとか?


「いえ、ちゃんとあります。ですが...」

「履き方が分からなくて」

取り合えず履いてみてくれと頼むと、履いたには履いたが、ベルトはおろかボタンは止められておらずファスナーも全開だった。


「履き方を教えてなかったな...」

「ちょっとごめんな」

彼女のジーパンのファスナーを締めボタンを付けベルトを通して締めた。

しかし、ジーパンの丈は長く腰まわりもゆるゆるだった。

取り合えずそのジーパンは一旦脱いでもらって、丈が短く腰まわりもさっきの物に比べ小さいものをクリエイトで出した。

それは、サイズがぴったりの様で履き心地もよさそうだ。

ジーパンを履いた少女は脱衣所の他のエルフ達に履き方を教えに行った。

これで一件落着かと思いきや、残りの9人もジーパンのサイズが合わないらしく、台所へと向かおうとした俺を引き止めた。

「は!これはもしや!」と俺は悟った...残りの9人分のサイズ調整もしなければならないのでは?っと。

とりあえずハネットには食事の支度の続きの方に行ってもらって...


あと2人と言う所で俺は気づいてしまった。

このジーパンが女物ではなく男物であることに。

結果終わった8人の分も女物のジーパンに変える作業が...

すごろくで「あと少しでゴールだ!」と言う場面で1、2マス前の「スタートに戻る」に止まった気分だ。

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