{第五十一話} 第三者から見たらただの変態

「あ...」

皿にカレーを盛り付けていた京一の手が止まった。


「お前な...」

「どうすんだ?」

ハネットはあきれた様子。


「タオルは何とかなる...」

「しかし、着替えがな」

「男物の服しか無いぞ?」


「私も女性物の服とかは良く分からないぞ?」


京一は一瞬悩んだ挙句出した答えは


「やはり、こういった場合は「裸Yシャツ」なのだろうか?」

「よくあるよね?」


「は?」

「ね~よ!」

「もうちょっと、真面目に考えろよ!w」


「ですよね~」


「それに、シャツ姿でカレーなんて食べたら」

「こぼした時に大変な事になるぞ?」


「お、おう」

「そこまで考えてなかった」

「カレーなんて初めて見るだろうから色々大変だろう」


「じゃあ、どうするのって話!」

「も~、ヤバイよねっ!」


「ヤバタクスゼイアンだよねっ!」


「こんな会話している私は「ろく」なヤツじゃないよね」


「そんな話を一緒にしている俺も「ろく」なヤツじゃないよね」


「つまり二人とも「ろく」なヤツじゃないよね」


「6 6 6」


「秘密結社フリーメイソン!」


「信じるか信じないかは貴方しだいです!」

「信じるか信じないかは貴方しだいです!」

台所で男二人で何をやっているんだか...


「で、どうするよ」


「スマホで調べれは良いのでは?」


「つかねぇよ!」

この世界にきてスマホはろくに使えなくなったからな


「あ...」


「とりま、適当に出してみるか...」


「そうだな...」

リビングに移動し、クリエイトを使い適当に「エルフ」と言う単語で浮かんだ服を出す。


「いくつか出してみたが...」


「端から見ていこう」

一番左端の白い服を広げる。


「これは...」


「ゼロから異世界を始めないといけなくなりそうだな」

「あと、猫がほしいな」


「分かる」


「次は...」

左から二番目の腰と胸元に赤いリボンが付いたピンク色の服を見る。


「ん?異世界?」


「異世界ではないな」

「現世で作家をして居そうだな」


「同意」


「隣の...これの服を着ているエルフは自衛隊と一緒に居そうだな」


「じゃあ、こっちは?」


「自衛隊と一緒に居るダークエルフが着ていそうだな」


「こっちは、DMMORPGの中の双子のダークエルフが着ていそだな」


「こっちは、フルダイブ型のオンラインゲームにいる妹だな」


「さて、どうするか...」

幾つか出したが、どこかで見たことあるような服しかない。


「まず、女性の服を選ぶのに男しか居ないのが問題だったのでは?」


「え~、今更のマジレス~」


「たとえ服を適当に出した物に決めたとしても、下着はどうするんだ?」


「あ、積んだ...」

本当に積んだじゃん。これは俺にはわからない...てか、分かったらヤバイやつだよね。


「彼女達がもともと付けていた物を綺麗にした物を出すのはどうだろう?」


「よし!それでいこう!」

「で、その下着は誰が持ってくるんだ?」


「あ、カレーがこげる!」

そう言って、ハネットは台所のカレーの様子を見に行った。


「それは、汚いぞ!」

台所に行くとハネットはカレーをかき混ぜていた。


「がんばれ!」

「私はここでこれをやっていないといけないからな」

京一はあきらめ風呂場に向かった。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


「おじゃましま~す」

寝起きドッキリの「おはようございま~す」並みの小さな声でそう言い、ゆっくりと扉を開けて静かに脱衣所に入って行く姿は何も知らない第三者がみたらヤバイヤツだ。


「これかな...」

下着らしき布をかごから引っ張り出すその姿はまさに下着泥棒だ。


「ガタッ」

その下着を戻し、あとはこれの新しいのを出すだけと言う場面で、カゴに手をぶつけ音を出してしまった。


「あっ...」

積んだ...そう思い風呂場のほうに目を向けるがこちらに気づいていない。

どうやら、シャワーの音でかき消されて聞こえなかった様子。

新しい下着を出して、この場を急いで退散する。


「ふ~」

大きく呼吸してバクバクな心臓を落ち着かせ、脱衣所から出る。

しかし、バスタオルを用意していなかった事を思い出し、振り返ったその瞬間...


「ガンッ!」

扉の角に足の小指を思いっきりぶつけてしまった。

しかもその痛みに耐えられず「痛ッ!」と言ってしまった。

あ、ヤバイ...


「だ、誰ですか?」

流石に気づかれたらしく、風呂場の扉の隙間から数人がこちらを覗いていた。


「体を拭くタオルを持ってきたんだ」

「ほら!」

「ヤバイ」と思った瞬間に畳んで詰まれたバスタオルを出して持っておいてよかった。


「あ、ありがとうございます」


「お、おう」

「ゆっくり入っていて良いぞ~」

「ここにタオル置いておくからなじゃあな~」

そう言い、タオルを置き脱衣所の扉を静かに閉めた。


 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 


「どうだった?」

台所に戻るとハネットはまだカレーをかき混ぜていた。


「え、あ、うん...」


「そうか...」

「下着を用意してきたのか?」


「ああ...」


「タオルは?」


「置いてきた」


「服は?」


「あ...」


「どうするんだ?」

「私は知らないぞ?」


「もう、メイド服で良いんじゃね?」

だんだん投げやりになってきた。


「それは、京一の趣味だろw」


「そうです...」

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