{第四十一話} 殺害予告

用意された焼き菓子等も数少なくなり、ティーカップを口に運ぶ人も居なくなった。

王達の周りに貴族達が集まり、会話をしている。

取り合えずその場はネラに任せ、騎士団長に森で戦ったヤツらと書斎のヤツらの報告に行く。

貴族の護衛をするため周りを見渡す騎士団長の目はとてもとても鋭く、顔は真剣な眼差しそのものだ。

今の彼はいつもオレ達と話す団長とは別人に見えた。

そんな、騎士団長は「男らしくカッコイイ」と言う言葉が今の彼のために存在するかのようだった。

適度に日焼けした茶色い肌、分厚い胸板に広い肩幅...そんながたいを覆う金属の防具がそれをさらに際立たせている。

そんな防具の隙間から見える血管が浮き上がったムキムキの腕。

きっと女性にもてるんだろうな~。

そんな騎士団長がオレに気づいたのか、目元が緩み笑顔になった。

「おお!ショウ殿!」

金属の防具をつけているせいで、少し動くたびに金属音が団長の体から聞こえる。

「どうも、騎士団長の居ないあいだの報告を...」

「そうか、何かあったのか?」

「まず、ここの隣の森に十数名の族が姫様達に危害を加えようとしていたので、武力行使させていただきました」

とは言っても絡まれたまでは覚えているんだが、気づいたら意識が無くて周りに族が血だらけで倒れてたしなw

「そうか、襲ってきた族はどうした?」

「大半は殺してしまいましたが、一人は縛って捕まえているのでそちらの身柄はお願いします」

正確には「気づいたら死んでいた」だが...

「分かった」

「それと、書斎にも族が来ましたがヤツらは全員捕まえてあるのでそちらもおねがいします」

団長はオレの話を聞き終わると即座に部下を集め現場に向かわせた。

「やはり、ショウ殿を護衛に選んでよかった!」

「期待に答えられたようでよかったです」

「少し、相談なのだが...」

そう言うと、一枚の紙を取り出した。

「それは...?」

「先日、私の家に届いた手紙なのだが...」

団長が見せてきたその手紙には...

「帝国騎士団長 ボース・アルギ殿

 この度は突然手紙、お詫び申し上げますます。

 今度、帝国皇女ハネット・ティア様の誕生パーティーの護衛をされるとの事。

 今回の誕生パーティーが騎士団長の命日になる事を当日、頭の片隅に置いてください。

 この手紙は私が代筆させていただいたに過ぎません。

 ですが、この手紙の代筆を私に頼んだのはあなたの良く知る人物です。

           かってながら私の名前は伏せさせてもらいます」

と、書かれて居る。

これは、騎士団長への殺害予告でよろし?

「内容からして、私を今日殺しにくるという事だろう」

「そうですね...この手紙に「あなたの良く知る人物」と書いてありますが...?」

「ああ、思い当たる節はあるにはあるのだが...」

「誰ですか?」

「昔私が騎士団長になる前、騎士団に居た「ジョセフ・エリック」と言う男だ」

「それが分かっているなら...」

「しかし、今ヤツがどこに居るのかを私は知らない」

「そうですか...」

現世でこういった場合はこの手紙の指紋を調べて...ってやっていくと思うけど、この世界に指紋なんて概念が存在するのか?たとえ存在したとしても、現世の警察みたいにデータは無いだろうし...どうしたものか...

「指紋がな~...」

オレがそうつぶやくとネメシスが反応した。

「指紋を検出します」

メガネから青い光が出て手紙を読みとる。

「数名の指紋を摘出しました」

スマホにメールが届く。

そのメールには...

「今回の検出した指紋

 ・菊田 昌

 ・ボース・アルギ

 ・不明

 ・不明

 ・不明

 以上、5人の指紋が検出されました」

と書かれていた。

そして、メールの最後に「警視庁のデータベースから今回の指紋を照合しますか?」

と書かれていたが異世界の人間の指紋を現世の警察のデータベースに照合したところでなw

まぁ、そんな事が出来る程度に覚えておくか。

「今のは...?」

メガネから出た光やスマホについて見ていた団長は首をかしげていた。

「ああすいません、少しこの手紙について色々調べていたんです」

「そうだったのか...結果は?」

「残念ながら、特に何も...」

「そうか...」

「すいません、この手紙は僕が預かってもいいですか?」

「ああ」

「では、僕はコレで」

手紙を取り合えず、スーツの内ポケットにしまう。

しまった瞬間、

「アイテム「騎士団長への手紙(殺害予告)」を手に入れた」

そんなRPG見たいなログがスマホに通知で来た。

ネラのところに戻りながら来た通知を見ていると色々とログが更新されていた。

次の目的や実績などなど...

今度、まとめて見るか。

「ショウさん、騎士団長と何の話を?」

「襲ってきたヤツらの事と、ヤツらの身柄を頼んできた」

「そうでしたか」

周りを見渡しながら「指紋か...指紋ね~...ん~...」とブツブツ言っていると

「指紋がどうかされたんですか?」

「いやね、団長宛に一枚の手紙が届いて内容が今日、団長を殺すって書いてあったんだよね」

「殺害予告ですか」

「ああ、その手紙からオレと団長を含めた数人の指紋を検出したんだけどね...」

「この世界にそんな技術はありませんよ」

「あ、やっぱり?w」

「ですが、指紋よりもっと役に立つ物がありますよ」

「へ?」

「名前は「MPM」です」

「何それ?」

「「Magical power mark」の事で、名前の通り魔力の痕跡です。この世界の人間は物などの触れると少量ながら魔力が付着します」

「ほう...」

「そして魔力は人によって違います、十人居たら十人違う魔力を持っています」

「DNA見たいな物?」

「そうですね、ちなみに魔力は本人の意思に関係なく体内から常時放出されています」

「つまり、手紙に付着した魔力と同じ魔力を放出する人間を見つけることが出来れば...?」

「はい、ですが...」

「その魔力の詳細を見れる人間が居ない...と?」

「はい...」

「そうか...いないかな...魔力の質を...あ!」

「居ましたね」

「居たわ!」

「ちなみにだけど...?」

「なんですか?」

「その「MPM」って名前付けたのって...?」

「京一様です」

「ですよね~」

「見つけたもの?」

「京一様です」

「...」

そんな話をしていると貴族ならびに騎士団の人達は居なくなっていた。

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