第29話 暗躍者は屋上で笑う
第一校区高等部の校舎の屋上。
青々とした若葉に覆われた森を眼下に収めながら、少女が携帯端末を耳に当てていた。
ぶかぶかの制服を着た小柄な女生徒。日本人離れした金髪碧眼で、頭にはふさふさ毛並みのネコミミが乗っている。にこやかな表情を彩る頬にはヒゲのようなペイントが施されていた。全体的に落ち着きがなく元気な少女だった。
「あ、カスミちゃん! おはよう!!」
『元気ですね、キャット。何か良い事でもありましたか?』
「そう、カスミちゃんは鋭いぜ!
『……本当ですか?』
電話口の向こうで女性が息を飲むのが分かった。
ニッ、とキャットは悪戯っぽく唇を震わせた。
「正確には可能性の段階だけどね。でもあーしは感動したにゃ、本当に
『その発見は非常に喜ばしいことなんですけど、ちゃんと
キャットはペイントした三本ヒゲを曲げるように頬を緩めて、
「大丈夫だにゃ! ちょうど今回の一件のおかげで色々と進展すると思うし! 抜かりはないんだぜ?」
『心配です……尻尾を掴まれなければいいんですけど』
「ニハハハ!! キャットのあーしに対して尻尾を掴まれるな、なんて洒落が利いてて面白いぜ!! 流石はマイフレンド! 惚れ直しちまったよ!」
一頻り笑った後、キャットは遠くに広がる太平洋を眺めながら、
「カスミちゃんこそ準備は万端かい? そっちの案件の方が難しいんだ。なにせ
『こっちも順調です。すでに「森の王」発動のため行動を開始しています。本格的に動き出すのは十月……十一月くらいになりそうですね。その時はキャットも
「にゃー……、がっつり文化祭の時期と被ってるぜ。せっかく友達もできたし一緒に回って青春とか謳歌したいんだけど」
『友達……ですって!? あのキャットに!? 情緒不安定で意味不明な発言連発のあなたに友達ができた!?』
久しぶりに素で驚いた声を聞いた気がする。
キャットはむっとなって唇を尖らせた。
「カスミちゃん、いくらあーしでも流石に怒ることもあるんだぜ」
『失礼しました、余りにもあり得ないこと過ぎてつい興奮してしまって』
「……、」
『と、とにかく! こちらは順調です。文化祭の件に関してはちょっと考えてみましょうか。一週間くらいなら何とかなりそうではありますし、うん』
無理やり悪い流れを遮った女性は、都合が悪くなる前に話を切り上げようとする。
『ではキャット、くれぐれも油断しないように。良い報告を待っています』
「了解! あーしのモットーは神出鬼没、暗躍は
第1章 入学編 完
次章へ続く
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