眼ざしに宿るもの

作者 帆場蔵人

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★★★ Excellent!!!

私は古典音楽をやっていたのですが、バッハの旋律のように美しい、そう感じられました。

無駄なものはひとつもなく、休符も、黒いも白いおたまじゃくしも、全ての音符にちゃんと意味がある。流れる川のように自然な音楽。

すごい! バッハの生まれ変わりなんじゃないかと思うような、美しい言葉の並べ方。どれが必要で、どの言葉は余分なのかを選別するのって大変な作業だと思うんですけど、でもそれがきっと、楽しいんでしょうね。

最新作の『アップルパイの美味い店で』は、小学校の音楽の授業で教科書に出てきそうな、甘くユーモアに富んだストーリーを披露していただきました。メロディーつけて歌ったら、とっても楽しそう。私がイソップ物語の編纂者だったら、絶対のせます。ピクニックに行って、サンドウィッチ食べたあとにメロディーつけて歌いたいです!


★★★ Excellent!!!

 たとえば「生きながら死んでいる」とか、「死にながら生きている」とかいうことについて、思弁的でなく(頭の中においてではなく)、身体的に、頭の外で、考えることは可能でしょうか?
 冒頭の「春」と題された作品では、「ぱんっ、と弾け」ること、花の種が撒かれることを、誕生と死の暗喩と見なすことで詩句を開始しています。
 生命とか魂とか呼ばれるようなものが「撒かれる」とき、それは或る空間への生の拡散であり、同時に散逸でもあります。というのも命なき空間に撒かれた生は、虚無に根を拡げ、生命としての運動を開始するものでありながら、同時に虚無へと逸し、消尽するものでもあるからです。
 生の開始と終焉が同時的に予示されている、とでも言い換えられるかもしれません。
 というようなこのレビューこそ思弁的すぎる代物なので、気になった方はどんどん本作を読み進めていってほしいです。写生=外的偶然と思えた言葉が、次の瞬間、頭の外にあるがままで内的必然に転化するダイナミズムに慄然とすると思います。