ちょっと一服・フロントトップカバー塗装②

 作業に入ります。ジャンク箱を漁ったらフロントカバー(正式にはフロントトップカバーだそうです)が出てきました。


「お、ちょうどエエわ」


 上手く塗装出来ればラッキー、ダメでも諦めが付くジャンク部品です。


「劣化して妙な模様が出ています。実験台として最後のお勤めをしてもらいましょう、まずは洗って足付けです」


 足付けとは塗装の対象物に細かな傷をつけて塗料の食い付きをよくする作業です。


「おそらくフロントカバーの材質はポリプロピレンです」


 ポリプロピレンは塗装が困難な素材です。表面が滑らかで柔軟性がある樹脂です。缶スプレーでシュッっと吹いたところで塗装が乗りません。塗料が乗ったとしても乾燥してから変形すると剥がれてしまうかもしれません。


「念入りな足付け作業をしても上手く塗装できない素材が在ります。たしか『難塗装素材』とか呼ばれていたと思います」


 難塗装素材に塗装をする時は塗膜自体に柔軟性がある塗料を使うか塗装前に密着材を使います。あまり製品名は出さない方が良いと思うのですが、前者は『染めQ』、後者は『ミッチャクロン』という商品が在ります。※訂正が必要でしたらご連絡を


「ボデーショップに勤めていた知り合いに聞いたところ『バンパープライマー』という下地材もあるそうです。要するに樹脂と塗料のつなぎです」


 今回は手持ちの『ミッチャクロン』を使います。使い方は簡単です、表面に軽く吹き付けて十五分ほど乾燥させるだけです。


「少しベタついています、いかにも塗装が密着しそうな感じです」


 職人が使う道具や材料ってベタな名前が多いですね。個人的にこれ以上は無いって位に名前が用途そのままなのが大好きです。


「この上から下地塗料の『プライマー』を吹き付けます」


 プライマーを吹き付けたら乾燥させます。乾燥したらもう一度プライマーを吹き付けて乾燥させます。プライマーは塗装というより充填剤パテみたいな感覚です。


「少し厚めにプライマーを吹いて下地を隠し、乾燥後に耐水ペーパーで水研ぎして表面を滑らかにします」


 CSなどで外国の自動車修理番組が流れています。板金後パテを研ぐシーンで『表面を真っ直ぐな状態にします』と吹き替えされてるのを見たことありませんか? あれは多分ですが『表面をストレートな状態にします』みたいな事を言ってるはずです。本来は『表面を滑らかに』とか『表面の歪が無いように』と訳すところなんですが、翻訳家が車の事を知らないんでしょうね。直訳しちゃってます。


「プライマーが垂れたところや気泡が噛んだところをサンドペーパーで滑らかにします。シリコンオフで脱脂をしてから上塗りです」


 使う塗料はホームセンターで買ったラッカースプレーの白です。本当は自動車用や模型用を使いたいところですが、実験なんで有り合わせの塗料を使います。


「自動車等塗料と違って隠ぺい力が弱いですね。塗料が少し薄い感じです。軽く吹いては乾燥させてを繰り返して塗りましょう」


 基本的に私は不器用です。丁寧な作業を心がけましたが塗料が少し垂れてしまいました。


「しっかり乾燥させてから垂れた部分をサンドペーパーで均します。少し艶が無くなりますがクリアーを吹くので大丈夫。焦らず滑らかな表面にしましょう」


 最後にクリアーを吹いて乾燥させます。使うクリアー塗料は屋外用高耐久。クリヤーです。


「変性ウレタン塗料らしいです。よくわかりませんが実験で使ってみましょう」


 ここで二液ウレタンスプレーを使えば耐ガソリン塗装になりますが、今回は実験って事で。剥がれず長持ちしたときに二液ウレタン塗料で塗る事にします。


~二日後~


 二日間乾燥させました。上手く塗れたでしょうか?


「あ、ジャンクだったと思えないくらいの見た目ですね」


 問題は耐久性です。当分使う予定はありませんから、しばらく保管しておきましょう。もしも上手くいったら、次はカットレッグシールドを塗装します。

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