出来ないことはプロに任せる

 二級とは言え整備士免許を持っている身としては言いたくないし恥ずかしい事なんですが、出来ない整備はその道のプロにお任せすることにしています。


「部品を傷めたり弄り壊してしまうのは嫌なんで」


 四輪の整備士の弱点といいますか経験不足だなーと思うのがチューブタイヤの交換やパンク修理です。乗用車だとチューブレスタイヤが主流なんですよね……。


「チューブレスタイヤは慣れていますし、チューブ入りでもモンキーやジャイロならボルトを外してホイールをパカンと割るから簡単なんですが……」


 そして整備経験者ならスポークホイールのスポーク張替え&リム交換なんてほぼ無いでしょう。


「カスタムカーやクラシックカーならスポークホイールとチューブ入りホイールの組み合わせがあると言えばあります」


 スポークホイールとは自転車のホイールみたいに車輪の中心から放射状に針金(スポーク)が伸びてホイールにつながっているみたいなホイールです。スポークとリムを組み合わせるので気密を保つことが難しく、タイヤとホイール(リム)の間に浮き輪上のチューブを組み合わせるのが一般的です……多分。


「先日買ったホイールはリムの部分こそ使えそうでしたがブレーキドラムが大きく摩耗していました。最初からついていたホイールはブレーキドラムは程度でしたがリムに錆穴が開いていました」


 あちら立てればこちらが立たず、じゃあ良い所取りで組み合わせればどうだろうとなるところです。ところが私はスポークホイール組み立ての経験がありません。


「道具を揃えて自分で作業……と思いましたが、けっこう難しそうです」


 自分で作業すれば工賃は無料です。組み立てるだけなら問題なく出来るでしょう。ところが組み立てたあとの調整が出来ないのです。スポーク交換・組み立てが出来ない方向けにホイール一式がアッセンブリーで供給されています。


「丸ごと交換なら間違いありません。ですが、費用がかかります」


 ちなみに今回のカブは一万円で買いました。


「アッセンブリー交換ならば二万五千円ほどでしょうか?」


 一万円のカブに二万五千円の新品部品を取り付けるのは若干の抵抗があります。


「せっかくだからアルミリムに交換しても面白いかもしれません」


 私が最初に乗った排気量五〇㏄以上のオートバイはスーパーカブ七〇SDXでした。今から二十年くらい前のお話です。


「母方の祖父が乗っていたスーパーカブを父が譲り受け、タイヤ交換して乗っていました」


 タイヤ交換はご近所に住んでいた方の親戚が営むタイヤショップでした貰ったと記憶しています。タイヤショップはタイヤの専門店です。


「リム交換ができなくても伝手があるかもしれません」


 まぁ結果はダメだったんですけどね。仕事帰りに寄って聞いたら「もうバイクのタイヤ交換は受けていない。仕入れもしていない」との事でした。


「さぁ困りました」


 スポークホイールと言えば自転車、私が書いている『大島サイクル営業中』で主人公が「自転車屋がスポークを張れんかったら仕事にならんやろ?」みたいな事を言ってるでしょ? これは私の同期の親父さんが言っていたんです。


「ところが同期の親父さんの店は閉店してしまいました」


 ああ、小さいバイクと自転車を修理できるお店だったのに……。試しに別の自転車店に問い合わせしたら「オートバイはチョット……すいません」と断られました。じゃあ市内の少し離れたオートバイ屋さんにと思ったら断られました。もう歳だから新規のお客さんを相手したくないみたいな事を言われましたね。


「新規が嫌って……引退間近のソ○プ嬢じゃあるまいし」


 友人が言ってたんです。引退間近の入浴介助のお嬢さんは気の合うお得意様に声をかけて引退まで上手く仕事を回していくのだとか。引退間近だから新規の顧客を開発して気を使いたくないんですね。いや友人よ、どこまで深いところまで話を聞いてるねん。


「困りました。そもそもウチの街のライダーはどこに整備を頼んでいるんでしょう?」


 この話、もうチョッチ続きます。

 

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