首無しプレスカブ⑫ クリヤー塗装

 九月十八日は用事が有ったり雨だったりでたいした作業が出来ませんでした。たしか午後から少しだけ触ったんだっけ。そうそう、この日は朝から歯医者に行って、帰りにクリヤー塗料を買って帰宅したんだった。


「今回使うクリヤーは普通のラッカーだかアクリルだかのスプレー塗料です。本当は二液ウレタン塗料を使いたかったのですが、今回は諸事情がありまして……リワードの換金をしても金欠なんです」


 私の場合、時間がかかる作業はと聞かれれば「塗装やな」と答えます。地金の錆取りをしてから錆転換剤を塗り、錆止めが完了したら密着促進剤を塗り、プライマリーサフェーサーと呼ばれる下地塗料を塗り、それからボディーカラーを吹いてからクリヤー仕上げ。作業ごとに乾燥工程が入りますから、ハンドルを塗るだけで半月くらい時間を費やしています。


「切らしていたクリヤーを買ってきました。早速クリヤー塗装します」


 根を詰めれば一週間くらいで完成しますが、作業をするのは週末だけですから仕方が有りません。今回使ったのは普通のラッカー塗料です。本当はウレタン塗料を使いたかったんですが、まぁダメなら塗り直せばいいやって事で。


「冴えない色だと思った『ダークブルーマイカ』ですが、クリヤーを吹いたら化けました。日光の下で見るとキラキラした美し色です」


 レクサスの車種で採用されている色だそうですが、スーパーカブに塗っても違和感が有りません。「これは退色していないからだ」と言えば通じるレベルで近似色。チョット良いグレードのカブみたいな色です。


「物置から出てきたフロントキャリアも塗装してしまいます。これはメッキがダメになったからサフェーサーだけ吹いた奴かな? 銀色に塗って使います」


 さぁ、塗装を乾燥させている間に作業を進めましょう。ハンドル下のレッグカバー(?)にキーシリンダーを取り付けます。


「このキーシリンダーはこの車体に付いていた物です。キー一本で全部のロックが出来るのはありがたいことですが……ん? キーシリンダー取付部の爪が切られています」


 これではキーシリンダーを固定できません。新しいキーセットは新品は高価なので購入は避けたいところ、中古品でも良いお値段がします。


「不本意ですが今回はナイロンバンド(タイラップ)で固定します」


 キーシリンダーの凹部にナイロンバンドを引っ掛けて縛ればナイロンバンドの厚みがストッパーの代わりになります。


「少しだけガタは在りますが費用対効果は十分です。不本意ですが仕方が有りません。キーセットの交換は今後の課題です」


 作業の合間にハンドルとキャリアをクリアー塗装を重ね、乾燥させつつスイッチ類のチェックをします。


「プレスカブのスイッチは……おっと、左側のスイッチの固定部分が欠損しています。このスイッチは使わずハンドルに付いていた標準カブのスイッチを使います」


 後にこの判断が混乱を招きます。この時点で気が付いていなければいけない事が有ったのです。それはまた別の回に書きます。


 えっとこの時は何をしてたんだっけ? あ、そうそう。物置から発見した荷台を取り付けしました。荷台にはメーカー不明なボックスが取付けされています。裏側が錆びていた荷台に穴を開けてボックスを直付けしてある物です。


「今回取付けした荷台は物置から出し入れする際の『取っ手』の代わりです」


 色々な部品が付きました。テールランプ取付け部を持って出し入れしていたんですが、テールランプを取り付けしたので持つ所が無かったんです。


「これで車体の移動がしやすくなりました」


 九月十八日の作業はここまでだったかな? 次回は翌日の作業の様子をレポートします。

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