首なしプレスカブ③部品集め
雨降りが続くと整備が出来なくて困ります。全くできない訳じゃないんですが、物置の中で蚊取り線香を焚きながらの作業は危険です。密閉された空間でパーツクリーナーや洗い油、そしてガソリンなんて使ったりしたら火事になる恐れが有ります。雨の日に出来るのは細かな部品を洗ったり磨いたりするくらいでしょうか。ですがこのプレスカブ、洗ったり磨いたりしようにも部品がありません。ざっと見た感じで灯火類は在りませんし、電装系もメインハーネスこそ在れどメインから伸びるサブハーネスが全然ありません。これだけ欠品多数となればやるべきことは倉庫内を漁って部品を捜し、無い部品をリストアップして入手するのみです。いや、『のみ』じゃないかもしれないけれど。
「作業が出来ない時は部品集めです。幸いな事にスーパーカブの部品は耐久性に優れた物が多数使われています。消耗品は仕方ありませんが、それ以外はなるべく中古部品を使って費用を押さえます」
中古部品は送料込みで考えないと割高になります。
「同じ出品者だとまとめて梱包して送料を押さえてくれる場合があります。欲しい商品のを見つけたら、その出品者の他の出品物も調べてみます」
パーツリストと睨めっこをして送料込みの価格と新品の値段を比べます。フェンダーなど嵩張る部品は新品の三分の一、鉄およびアルミの重い部品は新品の半額。その辺りを落札すれば割安感が出ます。
「今のところ走らせるのに必要な部品しか買わないつもりです」
それでも買わなければいけない部品がたくさんあります。割れたフロントフェンダーは交換したいですし、ハンドルは絶対買わなければいけません。
「前後のウインカーも買わなきゃいけませんが、『大島サイクル営業中』の読者さんがレンズを譲ってくださいました。ベトナムキャリアとステッカーも含めてプレスカブ改に使わせていただきます」
少し色は違いますがフロントフェンダーを無事に入手できました。
「フェンダーは思ったより送料がかかりました。今度からは新品を買う事にしましょう」
続いてハンドルです。バーハンドル化した方がハンドル周りを丸々一式出品されていました。五千円スタートでした。即決価格は一万円、ただし私の眼には一万円の価値があるように見えませんでした。っていうか一万円も出したら車体とハンドルが同じ値段になってしまいます。これは耐え難い苦痛です。
「恐らく即決価格で落札されることは無いでしょう」
メーター・ウインカー・ミラー・チョーク用らしきケーブル・左右のスイッチがセットで六千円以内なら送料込みで七千円少々。その辺りなら納得価格です。
「できれば五千円台で落札したい……今夜は勝負です」
待つこと数日、オークション終了時間まで一時間を切った時点で高値更新の通知が来ました。ここからが勝負です。安くで落札するに小まめな入札を繰り返します。
「時刻は二十一時、皆様いかがお過ごしですか? 京丁椎です」
二十一時の時点で五三五〇円まで価格が上がりました。
「二十一時四十分、現在価格は五七五〇円。あと数分でオークション終了です」
ここからはドキドキタイムのスタート。高値更新されるかそのまま落札か……。
「オークション終了です。落札価格は五七五〇円、狙い通りです」
焦って即決しなくて良かった! 余った予算はウインカーに使います。ウインカーは多数出品されているので台座の部品がキレイでサブハーネスが付いているもの落札出来ました。
「ウインカーレンズは貰った物を使います。レンズは割れていても大丈夫。台座の程度を重視しました」
まだまだ手に入れなければいけない部品は在りますが、使える予算は限られています。大物の入手は一旦止めて、細かな部品の調達に予算を使います。
「盆休みは残すところあと少し、晴れてくれると車体の点検・清掃が出来るのですが……」
次回は八月十五日の様子をお伝えします。
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