閑話 GWの凡ミス(カスタム50のエンジンを分解)
GW二日目はプレスカブのジャンクエンジンを洗いました。GW三日目は同じくジャンクエンジンで、4速ミッションのドナーとなるカスタム50のエンジンが登場です。
「ジャンクとは『ゴミ』を意味する言葉です。このカスタム50『ジャンク・異音有り』のエンジンは本当にゴミなのでしょうか?」
私は以前もカスタム50のジャンクエンジンを買いました。そのエンジンは中身がズタボロ、ミッションはプレスカブ、使える部分が全く無いゴミ以外の何物でもありませんでした。
「今回のエンジンはシリンダーに『TAKEGAWA』と文字が見えます。もしもシリンダーキットだけでも使えれば儲けものです」
仮にSP武川のボアアップシリンダーを組み込んだエンジンならば、オイルポンプやクラッチもそれなりに強化してあるはずです。分解して確認してみましょう。
「最初にシリンダーヘッドを外します。タペットカバーからロッカーアームを覗いて圧縮上死点を出しておきます。おおっと、純正ではないカムシャフトが見えました。もしかしたらハイカムが組んであるかもしれません」
ハイカムとは『ハイカムシャフト』の略です。カムシャフトの山を高くしてリフト量を稼ぎ、バルブを大きく広げます。
「バルブリフト量だけではなくて、バルブが開くタイミングを純正と違う様にしている物も有ります。エンジンを高回転まで回せる様になります」
カムシャフトを外したところ、『TAKEGAWA』の刻印が見えました。
「残念ながらカムシャフトのベアリングが傷んでいるようですが、交換すれば使えそうです」
ちなみに武川のカムシャフトは約一万円です。ベアリングは二つで二千円くらいでしょう。カムシャフトの修理は一旦保留して、シリンダーを点検します。シリンダーヘッドを外し、カムチェーンのガイドローラーを外してシリンダーを抜きます。
「シリンダーに大きな傷は無いようです。ピストンリングの張力や摩耗も少ない様に見えます。ん? 変な感触です」
ピストンをコネクティングロッド(以下コンロッド)から外そうとした時、コンロッドが車両で言えば前後方向に動きました。
「コンロッドが前後に動くのはコンロッド大端部のベアリングが摩耗もしくは破壊されているからです。恐らく異音の原因はこれでしょう」
よく見るとヘッドへオイルを流すオリフィスが拡大されています。標準のオリフィスは0.8㎜、今回のエンジンは2㎜くらいでしょうか? かなり大きく見えます。
「オリフィスの拡大については組み手によって意見があります。ヘッドへオイルを多く流して冷却を促すといった意見がありますが、それでは何故排気量の大きいカブ90や、暑い国で三人乗りなどの過酷な条件で走るタイカブ100EXのオリフィスも同じ様な大きさなのでしょう? 個人的見解ですが、オイル通路のオリフィス拡大は必要無いと思います」
オリフィスについては様々な意見があります。私は拡大しない派です。
「オリフィスの拡大はヘッドへ多くオイルを流す反面、クランクシャフトへのオイル供給量が減る気がしてなりません。ヘッドのオリフィスを拡大して流量を増やすならば、クランク側へのオイル通路も拡大してやらなければバランスが取れないのではないか……と。あくまでも『個人的見解です』と付け加えておきます」
つづけてクランクケースを開けていきます。左側のジェネレーター部には何も残っていないので、右側のクラッチカバーを開けます。いつもの様に外したボルトをボルトポジションツールにセットして組み立てに備えます。
「クラッチカバーを外すと遠心クラッチが見えます。ここにも『TAKEGAWA』の文字が見えます」
嬉しい事に強化遠心クラッチが入っていました。強化遠心クラッチの傍には京が普段流用するカブ90やタイカブよりも大きなオイルポンプが見えます。随分とお金をかけて改造されたエンジンだったようです。
「これだけ大きなオイルポンプを取り付けて潤滑を強化しているのに、どうしてクランクシャフトが壊れたのか不思議でなりません」
クラッチを外します。ここで不思議なものが見えました。遠心クラッチにはオイルフィルター機能があるのですが、何も溜まっていないのです。
「何かが摩耗してクランクシャフトが駄目になっているのですから、遠心クラッチのカバー内にスラッジや異物が有るはずですが……ほとんど無いですねぇ」
これはクランクへのオイル流量が少なかったからだと推測します。さらにオイルポンプを外し、カスタム50だけに装着されている薄いタイプのプライマリドリブンギヤを外します。これと言った不具合は見当たりません。
「いよいよクランクケースの分割です。クランクが駄目なのはわかっていますが、ミッションまで使えなければ、泣きっ面に小便状態です。ロクなもんじゃありません。長〇剛の歌みたいな状態です」
やはりここでもボルトポジションツールの登場です。再組立て時(以下略)
「いよいよ御開帳です。初めて女性の(ド下ネタにつき検閲)を見た時くらいドキドキしながらクランクケースを割ります」
ボルトが全部外れている事を確認してクランクケースの叩いて良い部分をプラスチックハンマーで叩きます。徐々に隙間が開き、全体が万遍なく剥がれたらクランクシャフトの軸を押す様にしてクランクケース右を外します。
「金属粉混じりのオイルで汚れていますが、ギヤ自体に妙な摩耗は無いようです。クランクシャフトの下には……山盛りの金属粉です」
気になったのはシフトドラムに筋が入っている事でした。
「スーパーカブは走行中にトップギヤ(三速もしくは四速)からニュートラルにシフトチェンジできないように安全装置が付いています。タケガワの強化遠心クラッチはニュートラルでもピクピクと駆動力が掛かってしまう事が有ると言われています。おそらく微妙にクラッチがつながった状態でニュートラルへシフトしたのでしょう」
とは言え、ミッションは使えそうです。スーパーカブカスタム50のトランスミッション一式の中古相場は一万五千円前後です。洗浄は必要ですが、ボアアップキット・強化オイルポンプ・強化クラッチ込みで一万円なら格安だったのではないかと思います。
「外した部品は百均で買ったタッパーに入れて保管しておきます。オイルは拭きとらずにそのままにしておきます」
残念ながらクランクケースとクランクシャフトは使えなさそうです。金属回収業者へ持って行って処分してもらいましょう。使用可能な部品はオイルが付いたままにしておく方が錆びにくい……と思うのは私だけでしょうか?
これで部品取りエンジンは解体終了です。今回はなかなか良い部品が取れました。この部品を活用すれば、解体された車体も含めて浮かばれる事でしょう。
組み立て中のエンジンは部品注文中です。部品到着までしばらく間が開きますので、何かネタを仕込んでおきます。そうですねぇ、何かリクエストってあります?
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