プロジェクトX④君は漏らし過ぎた…

 某所にある自警団の消火ポンプ小屋にて。


「やるわ、リハビリがてらに直し」

「はぁ……じゃあ直せたら買い取ってもらおうかな?」


 そんなやり取りから修理を始めたジャイロX。エンジン不動の原因を直し、パッキンの弱ったキャブレターをオーバーホール。部品が来るまでの間に軽い気持ちで錆取り・塗装を始めたリヤホイールは使い物にならず、それでも何とか交換部品を手に入れて修理を続けているのですが、とうとう大物の部品が傷んで使えない事は判明しました。マフラーです。まったく…次から次へと壊れやがって!


 本気で捨てたくなってきました。でも、ここまで直して捨てるのは悔しい。


 外したマフラーの排気漏れヶ所を溶接できないかとワイヤーブラシで擦ったのですが、ポッカリ大穴があきました。錆で皮一枚で繋がっていたみたいです。


 以前ホンダのDio(AF27)を修理した時は社外品で安いマフラーが有るのを知っていたのでジャイロでも在るかな~と探していたのですが…


「台湾製とかは無いんか…」


2スト後期型や現行の4ストロークエンジン搭載車ならチャンバーもマフラーもいろいろ有るのですが、初期・中期用のものは極少数…在ってもユーロチャンバーなんて若い子向けの音が大きなタイプです。


ノーマル風のマフラーも有るは有るのですが、やっぱり新品は高価です。

ちなみに、純正のマフラーはパーツリストによると¥13500。ただし、私の持っているリストは平成元年の12月発行……三十年前かいっ! 値段も在庫も当てになりません。


 ネットで検索したら純正マフラーの新品を買って交換した人を発見しました。

2012年で¥27000オーバーだそうです。今だと3万円オーバーでしょうか?


「ノーマルで3万円出すのもアレやな…オリジナル製作品で¥16500か…」


 ヤフオクを見ていると極わずかですがTD01-13××に合うマフラーは出ています。

オリジナル製作品に心惹かれましたが、何とか中古の見つけて落札しました。


ところがです。程度が良いとはいえ30年近く前の製品です。錆を落として行くと小さな穴が開きました。残念ながら、そのままポンと取付ける事は出来ません。


 穴が開いているとはいえ元々のマフラーより程度は良く、修理が出来そうです。

マフラーパテで穴を塞ぐのはお手軽で悪くない選択肢ですが、今回は整備士時代の先輩にお願いして溶接機を借りて溶接で肉盛りしました。


 ちなみにその先輩、拙作『大島サイクル』で出て来るA・Tオートのモデルです。


「穴が開きそうやん、怖いで~」

「ワシ(京丁椎です)やってみるわ~」


 私、整備士時代に溶接の講習を受けました。ガスと電気溶接です。熔棒の先を溶接物に当てて先に付いた何だっけかを割ってスパークさせるタイプです。先輩のお店にある溶接機は半自動。トリガーを引くと溶接ワイヤが出てパチパチとスパークします。私が講習を受けた時はとても高価な機材でしたが、今はお求めやすい金額になっています。


「100V用ならご家庭でも使えます。でも、道具を揃えると元は取れないでしょう」

「クラシックカーディーラーズやな?俺も見てるわ」


 先輩もエドチャイナさんの事は知っていました。


「溶接なんか久しぶりやで~お面ある?」

「お面…有るけど、お前ビード引くつもりか?ワシ…普段点付けばっかりやで~」


 何やかんやで自動車整備士専門学校の授業以来20数年ぶりの溶接です。何とか穴を広げたり新たな穴を増やしつつ、それらを含めて埋める事が出来ました。若干コンモリしましたけど穴が塞がれば良いのです。


 何とかマフラーの穴を塞いで取り付けました。エンジンを始動して改めて排気漏れの確認です。少しだけ排気管の出口を塞いで確認しても漏れは有りません。


 やっとの事でエンジンが無事に動く様になり、走るだけなら何とかなる様になりました。ここまでが長かった!部品代は1万円くらいですが、外してつけての繰り返し。あちらを外すとこちらをが壊れている。そこを直すと別の場支所で不具合が出るの繰り返しでした。


 ここまでエンジン始動しない→イグニッションコイル・スパークプラグ交換→キャブレター詰まり?→掃除・エアクリーナースポンジ交換→キャブレターガソリン・オイル漏れ→ガスケット交換・燃料ホース交換→マフラー破れによる排気漏れ→中古マフラー溶接補修後交換→ウインカー破損→ウインカーユニット交換(中古)

泥だらけ→洗車・各部修理時についでに掃除→

ホイールの錆→左側ホイール錆取り・塗装

       右側ホイール中古品を調達・塗装後交換

       フロントホイールはサンドペーパーで研磨後に塗装


 色々と修理してきましたねぇ……部品代は安いけれど、これ、店に出したら工賃だけで2~3万円は必要ではないでしょうか?


 ここまでやってやっとこさ前の持ち主が気にしていた『片側のタイヤが減る』の修理にかかれるのですが、やはり一筋縄では行かないのでありました。


 次回、ジャイロ初期型特有のメカニズムである『デフクラッチ修理編』に入ります。


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