第142話 ジェラシー(4)
「だ、だって。 どう考えても、あたしより、ああいう人のが隆ちゃんにはお似合いだよねって、」
夏希は泣きじゃくりながら言った。
「もう、なんでそんなにネガティブに、」
萌香の言葉にハッとして、
「・・ネガティブって、どーゆー意味でしたっけ?」
と言った。
「は? まあ、悲観的なとかそういう意味かしら、」
「悲観的・・」
意味がわからず使っていたが。
夏希は母が言いたいことがぼんやりとわかる気がした。
ああいう人とつきあってたら、
いつかは無理が出るんじゃないかって
心配してる。
あんまり本気にならないうちに別れろってことかな。
もっともっと悲しくなってきた。
「女の人と食事するくらい、そんなの平気よ。 何のやましい気持ちもないだろうし。 清四郎さんは、ほんと他の女の人と話すことさえもなくて、あんまりそういう心配とかしたことないけど。 本部長の奥さまは、それはそれは大変やったみたいよ。」
萌香は笑った。
「え?」
「ああいう人やし。 結婚してからも合コンとかナンパとか普通やったみたいやし。 会社でも女子社員たちを誘って食事に行ったり、楽団員の女の子たちと飲みに行ったり、キャバクラとかも行き倒してるみたいやし。 それでも浮気はせえへんみたいよ、って南さんは笑ってたけど。 奥さまはホンマに大変やろなあって。」
「そんな?」
夏希は涙がちょっと引っ込んだ。
「うん。 結婚しててもね。 そういうもんやって。 高宮さんは本部長と違って自分からそういう事する人ちゃうし。仕事関係のつきあいでいちいち妬いてたらキリないわよ。」
と言われて、
「妬いてる? あたしが?」
驚いた。
「そうやん。 立派なヤキモチやん。」
萌香は笑った。
そう言われて
顔がかああああっと赤くなった。
そっか。
あたしってば
ふ、
深い関係になったからって
とたんに
ヨソ向いたりなんかしてほしくなくなって。
すんごい
わがまま女だ~~~~。
「ごちそうさまでした。」
アカリは高宮に一礼した。
「いえ。 このくらい、」
その時、店の出口のタタキの石にヒールがひっかかってしまい、
「あっ!」
という間に彼女は転倒してしまった。
「危ない!」
高宮は慌てて彼女を支えたが、
「いった~~い、」
アカリは左足首を押さえた。
「どうしました?」
「捻ったみたいです。 いたた・・今日はちょっと高いヒールだったから、」
「捻挫かな。立てますか?」
「え、ええ。」
と、立とうとするが、足首に激痛が走る。
「いた・・」
「ぼくにつかまって。 タクシーでお送りします。」
「いえ、ウチ遠いですから、」
「そんなこと! ぼくがお誘いしたんですから。 しかも仕事も手伝ってもらって、ほんっと助かって。」
高宮は彼女を支えるように歩き出した。
そしてタクシーを拾って、彼女と一緒に乗り込んだ。
「で、どこですか?」
と聞くと、
「・・川越です、」
アカリは申し訳なさそうに言った。
「は??」
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