第90話 後悔(3)

もう

梅雨も明けたのかな。


こんなに何もしないで家に一日中いるなんて

今まで生きてきてあっただろうか。


あたしは

小さい頃から外で遊んでばっかで。

夏は真っ黒に日焼けして


暗くなるまで

外で遊んだ。



夏希はふっと

去年高宮と行ったサーフィンを思い出した。


初めてだったけど

すっごく楽しかったな。


ほんとに楽しかった。 



あの時は

まだぜんぜん高宮さんのこと、好きだとかじゃなくて。

一緒にいると楽しくて。



あれから・・

いろんなことあった。


でも

いつの間にかに、あたしは

高宮さんのことすっごく好きになってて。



男と女としてつきあうことって

楽しいばっかりじゃないの?



ずうっと・・楽しいまんまでいられないのかな。



同じことをぐるぐると考えていた。




南は意を決して、昼休みに斯波と萌香を会議室に呼び出した。



夏希と高宮のことを全て話すと、


「そう・・ですか。」

萌香はため息をついたが、落ち着いていた。


それは

勘のいい彼女が、うすうす感づいていたことでもあって。


「今はね、そっとしておいてあげてほしい。 高宮も、ほんまにかわいそうなくらい後悔してて。」



すると斯波が不機嫌そうに、


「後悔してすむことかよ・・」


と言い放った。


「斯波ちゃん、」


「だから! 高宮なんか信用できなかったんだ!」

斯波はテーブルをバシっと叩いた。


「ちょっと、」

萌香は彼を諌めた。


「いくら、つきあってる女だからって、酔ってたから? 自分に嫌なことがあったから? そんなことする男なんか信用できっか!」


南は自分が想像したより、彼が怒ってしまったので少し焦る。


「それはあなたの物差しだから・・」

萌香が言う。


「誰の物差しでも一緒だ! 男としてサイテーじゃん!!」


怒りは収まらなかった。



「あなたが怒ったら、また加瀬さんが追いつめられる。」


「え?」


「彼女は自分が彼に応えられなかったことを・・責めてる。」

萌香の言葉に斯波は言葉を失くす。


「あたしたちが高宮さんを責めることは、加瀬さんを責めることなんやから。 あたしたちにできることは温かく見守ることだけ。 もし、もしですけど、加瀬さんが高宮さんに対して、もう愛情とかを持てないって思ったとしたら、それは仕方がないこと。 でも、彼女が高宮さんといることを望んだら、それを反対する権利は、あたしたちには、ない。」


「萌・・」


「ちょっと悲しいことだったかもしれないけど。 大好きな人ですから。 いつかは高宮さんの気持ちは、わかってあげられると思うんです、」


南は萌香の達観した意見に感心した。


「萌ちゃんはほんまに大人やな。 えらい、」

と褒めると、


「おれは納得できないからな、」

斯波はブスっとして言った。


「高宮にも余計なこと言わないで。 ここは黙って見守るんだよ、」

南は念を押した。

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