第81話 拒絶(1)
「え? 休み?」
早くに出かけた斯波は萌香から報告を受けた。
「出掛けに様子を見ようと思って、インターホンを鳴らしたの。 そしたら顔も見せないで、ちょっと気分悪いからって。」
昨日のこともあり斯波も心配した。
「あたし、今日帰ったらまた様子を見に行きますから、」
萌香も心配だったが、とりあえずそう言った。
思い悩んだ萌香は昼休み、南を呼び出した。
「え? 高宮が?」
「ええ。 ゆうべ。 加瀬さんの部屋の前まで来て。 でも、入れてもらえなかったみたで。」
「やっぱり・・」
「やっぱりって?」
「昨日、加瀬の様子がずうっとおかしかったから、高宮に聞いてみたの。 でも、答えてくれなくて。」
「高宮さん、ずっと、ごめん、ごめんって。謝ってて。 きみを傷つけた、とか・・そんな風にも。」
「浮気でもしたんかなあ・・」
「そういう感じでもなかったけど。 加瀬さんも彼に何かを言っていたようなんですけど・・聞き取れなくて。」
「でも、ほんっと、ついこの間、あたしと八神と4人で焼肉行ったときはな、ほんまめっちゃ仲良しで。 あ~、うまくいってるんやなあって、」
「あたし、今晩彼女に聞いてみようかって、」
「なんかね、もう・・ぜんっぜん。 昨日は加瀬やなかった感じで。 ぼーっとして声も出てへんし。 顔色も悪いし、」
「高宮さん、今日から社長とNYなんです、」
「いないんか・・」
南はため息をついた。
萌香は早く帰ろうと思ったのだが、残業になってしまい帰ったのが9時過ぎになってしまった。
家に戻ると、仕事先から直帰した斯波の方が先に帰っていたので、ちょっとドキっとした。
「おかえり、」
「ただいま。 今日はあたしのが遅かったんや、」
「ん。 会社戻ってもやることなかったし。 メシは?」
「まだやけど、」
正直、夏希のことのほうが心配だった。
「ああ、加瀬んとこ寄ってみた? おれもつい15分前くらいに戻ってきたからまだ様子見てないんだけど、」
と言われて、
「まだ・・」
「大丈夫かなあ。 一緒に行ってみよう、」
と言い出したので、ギクっとした。
なんか
絶対に彼がいないほうがいいような気がする。
またも直感でそう思ったが、斯波は部屋を出て行ってしまった。
萌香も慌てて追いかけた。
斯波がインターホンを鳴らしたが、シンとしている。
「いるのか?」
と萌香に言う。
「いると・・思うけど、」
「加瀬?」
斯波はドアをノックした。
萌香は慌ててそれを制するようにして、
「加瀬さん、いるの? ゴハン、食べた? あたし、これからゴハン作るから。なんか食べれそう?」
と声をかけた。
すると、中でガタっと音がした。
「いるの?」
萌香が優しく声を賭けると、ガチャっとカギが開く音がした。
ものすごい顔色の悪い夏希が少しだけドアを開けた。
「だ・・大丈夫?」
その様子に萌香は彼女を支えるように玄関に入っていく。
「はい・・」
「ぜんぜん大丈夫じゃないだろ!」
斯波も彼女に近づくが、夏希は怯えるようにギクっとして体を引いた。
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