告白
食事を終え、部屋に戻ってくる。写真を撮っている間に明日使うスマホの充電が心許なくなって来たので、コンセントを探して充電を始める……前に、部屋の窓から見えるスカイツリーや夜景を写真に撮った。一応、部屋の写真も撮ったけどね!
必要な写真を撮ったらソファーに座り、充電しながらまったりする。
「うう……お腹いっぱい……。さすがに食べすぎちゃった」
「美味しかったもんな、料理」
「はい!」
隣に座って来た藤田さんと話しながら、明日はどこに行くのかを話し合った。特にこれといってなかったし、出かけるにしても荷物があるから、一旦帰ってからにしようと決める。
「それに俺は一月二日まではこっちにいるから、いつでも会えるし。ひばりちゃんも仕事があるだろ? だからいっぺんに出かけないで、毎日じゃなくてもいいから、あちこち出かけよう」
「……っ、はい」
「あと、初詣は一緒に行こう」
「はい!」
まさか藤田さんがそう言ってくれるとは思ってなくて、嬉しくなる。笑顔で頷いたら、藤田さんが私の頭を撫でたあと、そのまま引き寄せられてキスをされた。
「ん……」
「ひばりちゃん……」
「あ……」
一旦唇が離れ、またキスされる。今度は唇が触れるキスじゃなくて、とても濃厚なキスは私の中の何かを刺激したようで、背中がゾクゾクしてくる。思わず藤田さんの服を掴むと、更にキスが深くなった。
何度も角度を変えてされるキスはとても気持ちよくて、好きな人にキスされてることが嬉しくて……。唇が離された時は息があがっていた。
「ふ、じた、さん……」
「真っ赤になっちゃって……可愛い」
「あのっ、んぅっ」
頬を優しく撫でられてボーッとしてたら、またキスをされた。何度も何度も……私の官能を引き出すかのように。
しばらくそんなことをしていた藤田さんだけど、唐突にキスを止めると真剣な顔を私に向けてくる。でも、その目には謎の煌きがあって、身体が震えてくる……なぜか心が歓喜する。
「ひばりちゃん」
「はっ、はいっ」
「今までずっとメールして来て、今日久しぶりに会って……感じたことがあるんだ」
「……っ」
何を言われるのかわからなくて、藤田さんの顔を見ながら息を呑む。もしかして、ふられるのかな……。そう思ったら、思わず言葉が飛び出した。
「「
「「え……?」」
二人の重なった言葉は、偶然にも同じものだった。そして藤田さんが言ってくれた言葉がじわじわと心に響いてきて、一瞬驚いたあと、嬉しくて思わず涙が零れてしまった。
「ひばりちゃん!?」
「ごめん、なさ……っ、嬉しくて……っ」
「ああ……そういうこと! びっくりした……。ひばりちゃんが俺と同じ気持ちでいてくれたことが嬉しいよ」
満面の笑顔を向けてくる藤田さんに、やっぱりブルーインパルスのお仕事をしてる時の顔とプライベートは違うんだなって思ったし、特別な感じがして嬉しくなる。
それを藤田さんに伝えたら、「ひばりちゃんは俺にとって特別だし」と言って、またキスをされた。くそう……イケメンでイケボな人はこれだから……っ! ドキドキが爆発しそうというか、口から心臓が飛び出そう!
「うう……またそんなこと言って……」
「本当に特別だしな。確かに仕事では笑顔を向けなきゃならないが、そこは隊長たちに怒られない程度に愛想を振りまいてるんだからいいんだよ」
「広報なんですよね? そんな対応でいいんですか?」
「いいの! どうも俺はその対応が人気みたいだからな」
肩を抱いたままそんな話をする藤田さんに、内心「いいのかよ!」と突っ込んでしまう。
「確かに、百里基地に行った時、ちょっとニコッって笑っただけで周囲が動揺してましたね、観客の人。あと、キャーキャー言われてたのは一番機と三番機? の人! 他の人も言われてたけど、そのお二人は特に声が大きかった気がします」
「一番機か。玉置隊長は本当に人気があるんだよ。司令塔でもあるから余計なんだろうけど。なんでラパン――因幡さんが人気あんのか、わかんねえんだよなあ、俺は。あ、因幡さんって三番機に乗ってる人な。予定の期間を超えそうな勢いでドルフィンに乗ってる、可哀想な人でもあるんだよ。早く弟子がくればいいんだけどな」
「へー、一番機の隊長さんは玉置さんで、三番機は因幡さんって言うんですね。でも、三番機の人が人気なのはわかる気がします。なんというか……『元気な人』とか『ムードメーカー』って感じがするんですよね。楽しそうでしたし」
「あー、そうかも。でも、ああ見えて、因幡さんには奥さんとお子さんがいるからな?」
「そうなんですか⁉」
藤田さんが独身だから他の人も独身なのかと思っていたから、びっくりした。あまり話したがらないしあくまでも可能性の話だけど、他にも奥さんやお子さんがいるパイロットがいるんじゃないか、と藤田さんが言っていた。藤田さんのお師匠さんも奥さんがいるらしい。
ファンの人とか、それを知ったら嘆きそうな人とか出そうと思ったし、私も気をつけようって思った瞬間でもあった。
「旦那さんが人気者ってなんだか大変そう……」
「お? ひばりちゃんは嫉妬してくれんの?」
「それは嫉妬しますよ、好きな人のことですし」
「そうかそうか。うん、俺も嫉妬するかも、ひばりちゃんが野郎どもに囲まれてたら。航空祭に来るなら、気をつけろよ?」
「うっ……不可抗力もあるとは思うんですけど、善処します……」
「よし!」
そんな他愛もない話をしている間にお腹も落ち着いたので、お風呂に入ろうと立ち上がったら藤田さんも立ち上がり、抱きしめて来た。
「藤田、さん……?」
「ひばりちゃん……いや、ひばりって呼んでいいか?」
「はい」
「ひばり、お風呂に入る前に、ひばりを抱きたい」
「……っ」
耳元で囁かれたその言葉に、ドキドキしてくる。
「そのあと、一緒に風呂に入ろう」
「う……その……」
「いいだろう……?」
初めて会った時のような色気のある雰囲気と声に、あの時とは違って背中がゾクリと震える。藤田さんが本気で私を抱きたいと思ってるのがわかる、声と雰囲気だった。
「はっ、はぃ……」
小さな声で返事をすると、藤田さんが嬉しそうに笑った……しかも妖艶な微笑みを浮かべて。その笑顔を見て内心で震えていたら、手を引かれてベッドまで連れていかれた。そして先にベッドに横になった藤田さんが、ポンポンと隣を叩く。
「ひばり……おいで」
「ぅっ……はっ、はぃっ!」
「そんなに緊張しなくたっていいのに」
低く少し掠れた声で名前を呼ばれ、緊張していたらクスクス笑われた。そして恐る恐る藤田さんの隣に寝転ぶと、優しく頭を撫でられた。
……なんだか慣れてない? そりゃあ一回りも違うんだから、私と違って経験あるんだろうけどっ!
「あのっ! わっ、私、初めてでっ!」
「うん、わかってる。そんなに緊張しなくていいし、優しくするから」
「藤田さん……」
「ゆっくり、ひばりを愛撫して、とろけさせてあげる」
私に覆い被さり、目を見ながらそんなことを言う藤田さんに、煩いくらいに心臓がドキドキと鳴ってる。
藤田さんの鍛え上げられた肉体は無駄な贅肉などなくて……。肉体美という言葉がぴったりなほど筋肉がすごくて、思わず息を呑んだら藤田さんがふっ、と笑った。
「ゆっくり……ね」
そんな宣言をした藤田さんはまた私にキスをする。優しくすると言っていた通り、私に恐怖を与えないよう、ゆっくりと進めてくれている……それが嬉しい。
真っ赤になって震える私に「可愛いよ」と耳元で囁いた藤田さんは、妖艶な笑みを浮かべ、大事に、そして大切に抱いてくれた。
イケメンでイケボな藤田さんに裸を見られて恥ずかしかった。でも、なぜかとても嬉しかった。
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