第101話 偽善と酔狂の劣等能力者⑥
首都ネーピー
嬌子は白のブラウスとジーパンという姿でネーピーの街の北側に位置する最も高いビルの屋上に立ち、ロキアルムが召喚した大群の妖魔がネーピーに向かい動き出したのを莞爾とした顔で見つめた。
「ふふふ……プププ! 来た、来た!」
“嬌子! こっちも動き出したよ!”
「白ちゃん、オーケーよ。みんなはどう?」
“来やした!”
“ウガ!”
“いつでも迎え撃てる”
“動き出しましたー、すごい数ですー”
“……やれる”
「みんなやる気ね! 分かるわ~」
嬌子は嬉しそうに、妖魔の大群を眺める。
嬌子のいるビルの下では避難する市民と事実上の国主のカリグダが逃げたことで指揮機能が不十分な軍が迎撃に向かおうとごった返している。
「そうよね~、祐人のあんなに真剣な頼みだもんね~。これだけのことが、こんなに嬉しいなんて私も思わなかったわ~。じゃあ、みんな! 祐人の言いつけ通り、マットウさんの援軍ってことで行くわよ!」
“分かった! 偉そうな軍人さんに声をかければいいんだよね!”
「そうよ、ちょっと無理があるとは思うけど、声は絶対にかけておいてね。どのみち、化け物どもが来ている時点で普通じゃないんだから、私たちの働きを見たらきっと喜ぶわよ~、もちろん、祐人もね」
“心得た”
“はいー”
「ふふふ、みんな分かってると思うけど……祐人はきっと褒めてくれるわよ? しかも、今までにないぐらい! もしかしたら……ご褒美をねだっても許してくれるくらい、かも?」
“!”白
“!”スーザン
“!”サリー
“!”傲光
“!”玄
“ウガ!”
「さあ! そろそろ行くわよ?」
嬌子の頭の中に、全員の気合が伝わってきた。
これまでにないくらいの、やる気が嬌子を喜ばせる。
すると嬌子は、今いる15階建てのビルの屋上の端で優雅にクルリと体を回転させると、衣服はゆったりとした着物姿に変わり、また、嬌子の身の丈くらいの、金の下地のみやびな扇が忽然と現れ、それを手にする。
そして……嬌子は空気を薙ぐようにその扇を広げて、街に迫る妖魔の大群の方向にさし示した。
「祐人一家、出陣よ!!」
嬌子の明るく、大きな声がミレマーの首都ネーピーに響き渡った。
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