第53話 整備士とその周辺⑥

「ちょっと! 分解する前にエネルギーパックは外すよう言ったはずです! ああもう、ブースターを下にして置かない!」


 ナツコは失敗する度に声を上げるカリラの指示に従いながら、何とか装備していた〈ヘッダーン1・アサルト〉を装着装置無しで解除した。装備解除された〈ヘッダーン1・アサルト〉は分解された状態で並べられ、1つ1つカリラが手にとって整備方法を教授するのだが、1度にいろいろ言われたナツコの脳みそはオーバーヒートしてしまい半分くらい何を言っているのか理解出来なかった。


「あ、あの、ゆっくり復習したいので、文書データにしていただけると」

「なんでわたくしがナツコさんのためにそんなものを作らないといけないのですか。そんな顔をされても困りますわ。整備マニュアルを渡しておくので読み込んでおくように」

「あ、あるんですね。助かります」

「役に立つかどうかは分かりませんけれど」


 そう言いながらもカリラは整備用端末を取り出すと、ナツコの個人端末へと〈ヘッダーン1・アサルト〉の整備マニュアルを送信する。早速ナツコが受信したそれを開くと、統合軍の文法に従って書かれた堅苦しい専門用語にまみれた内容に言葉を失った。


「すいません、もう1度説明して頂いても、よろしいですかね……?」

「1度しか言わないと言ったはずですわ――。ですけれど、中途半端なことをされても困りますから、もう1度だけですわよ」

「はい、お願いします!」


 再びカリラは分解されたパーツを1つずつ手にしてそれぞれ整備方法を早口でまくし立てる。ナツコがついて行けなくなる度にもう1回と懇願すると、カリラは嫌そうな顔をしながらも再度説明していく。

 そんなこんなで、時間をかけながらも何とかナツコは整備手順を1人で最後までやって見せた。


「いちいちわたくしの顔色をうかがいさえしなければまあ及第点と言ったところですわね。いつも側に居られるわけではありませんので、そこのところだけお忘れなく」

「は、はい。善処します」

「精々そうして下さい。わたくしはサネルマさんの様子を見てきますから、その間に格納容器に機体をしまっておくように」

「はい! お任せ下さい!」

「返事だけは立派ですこと。しっかり頼みましたわよ」


 カリラはその場から立ち去り、サネルマの機体の様子を確認しに向かった。

 残されたナツコは早速格納容器を運んできて、分解された〈ヘッダーン1・アサルト〉のパーツをしまっていく。このあたりはイスラにも習っていたので、今では1つ1つ時間をかけて確かめれば1人で作業も出来た。


「よし! これで完璧!」


 ナツコはしっかりと格納容器に収まった機体を前にして自信満々にそう宣言した。

 自分もやればできるじゃないかと、早速カリラに確認して貰おうとしたのだが、生憎そちらは〈ヘッダーン3・アローズ〉の対空レーダーの調整に忙しそうだった。


「整備中すいません。皆さん、1度手を止めて集合をお願いします」


 作業中の整備倉庫に、タマキの声が響いた。

 ナツコも作業の終わった格納容器をその場に残してタマキの前に整列する。


「訓練の予定でしたが、1時間後にデイン・ミッドフェルド基地を出発する輸送隊に同伴の許可を頂けました。予定を変更し実地訓練としますので、先に昼食を済ませましょう。各員、作業中の装備を片付けたら再集合して下さい」


 一同は返事をして、それぞれが作業していた場所に戻ると整備中の機体を格納容器にしまいこんで再集合する。

 既にしまい終わっていたナツコの元へはサネルマの作業を終えたカリラがやってくる。


「作業は終わっているようですわね。点検項目は全て済ませました?」

「はい! 完璧です!」

「完璧なんて言葉を簡単に使わないで頂けます?」


 カリラは格納容器を開けて、中身を大雑把に一通り目視確認すると見た目には問題なさそうなので容器を閉じ、そんな様子を不安そうな目で見つめていたナツコへと視線を向ける。


「もう1度確認しますけれど、点検項目は全て済ませました?」

「は、はい。大丈夫なはずです。多分」

「はず? 多分?」

「だって、完璧なんて言葉を使うなって……」


 言葉に困るナツコへとカリラはじとっとした視線を向け続けたが、分解点検は済ませてあったし、収納状態も問題なさそうだったので、ナツコが多少点検項目をおざなりにしていたとしても大事故に繋がるようなことは無いだろうと、それ以上の追求はしなかった。


「よろしいでしょう。ただし問題があった場合怒られるのはわたくしですから、その点については忘れないように。わたくしが少尉さんに怒られれば良いと思っているのでしたら話は別ですけれど」

「そ、そんなこと思ってるわけないじゃないですか!」

「ま、そういうことにしといてあげますわ。食事の時間が短くなっても嫌ですし、早く行きましょう」


 カリラに促されると、ナツコもそれは嫌だと格納容器にロックをかけ、タマキの元に集合する。〈音止〉の整備をしていたトーコとユイが合流すると、ツバキ小隊は全員揃って食堂へと移動した。


          ◇    ◇    ◇


 護衛車両に囲まれた大型輸送車両の群れが、赤褐色の大地を走る。ツバキ小隊のトレーラーはそんな群れの最後尾に位置していた。

 輸送隊に同伴、つまりは護衛任務なのだが、準備もそこそこだったツバキ小隊はこれといった期待をされているわけでもなく、タマキも護衛の役に立とうとは考えていなかった。

 今回のツバキ小隊の目的は統合軍の作戦に参加して義勇軍の存在を認知して貰うことであり、ついでに隊員が軍の作戦に慣れてくれれば言うことは無い。

 運転をイスラに任せたタマキはそのまま距離を置いて輸送隊の最後尾に位置し続けるよう命じる。


「了解。何処までもついて行きますとも。にしても、あれだけ大きい基地なのに鉄道通ってないのか?」

「訓練用の基地ですからね。一応基地から離れてはいますが鉄道もあることはあります。ですが単線で輸送に適さないため、現在基地への鉄道路を建設中だそうです」

「なるほどね。完成までは車両輸送と」

「そういうことです。この辺りの雑用には何度もかり出されることになるでしょうから今のうちになれておいて下さい」

「了解しました少尉殿」


 イスラが笑いながら答えるとタマキは真面目に取り組むようにと一言注意する。それから荷室に乗る隊員へと通信を入れた。


「基地の防衛範囲を離れます。警戒のため〈R3〉を2機上げますが、立候補を募りたいと思います」


 外は一面の荒野であり、火山灰土で形成された大地には強い風が吹き抜ける。風は火山灰を巻き上げ、灰色をしていた。

 そんな光景を見て外に出たいと思う隊員は誰1人いなかったが、再度タマキが「誰かいませんか」と催促すると、荷室にいた隊員は1カ所に集まり急遽会議を始める。


「あたしは嫌よ」

「誰だって嫌ですわ」


 リルとカリラが口早に参加を拒否すると、ナツコとサネルマもそれに続く。

 しかしそんなナツコを見て、カリラは良いことを思いついた。


「そういえばナツコさん、機体の最終確認をしてませんでしたわ」

「え、カリラさん、一体何を」


 戸惑うナツコを尻目に、カリラは通信を繋ぐとタマキへと告げる。


「ナツコさんの機体の最終確認を兼ねて出撃して頂きたいと存じますが、許可願えますかしら」

「ちょっとちょっと!」


 止めに入ろうとしたナツコだが、それよりも早くタマキが決断を下した。


「許可します。ナツコさん、〈ヘッダーン1・アサルト〉を装備。カリラさん、整備士としてサポートをお願いします」

「かしこまりましたわ」


 不意を突かれたナツコはまんまとカリラにはめられた形で出撃を余儀なくされた。

 恨みがましい視線をカリラへと向けてもみたが、カリラの方はそんな視線をむしろ楽しんでいるようで、虚しくなったのでナツコは仕方なくトレーラーに積まれた装着機の前に移動する。


「ナツコが出るなら自分も出る」

「了解。フィーさんも出撃準備を、残りの隊員でサポートお願いします」


 フィーリュシカが立候補したことで他の隊員は出撃を免れた。〈アルデルト〉は既に重装機用の装着装置にセットされていたので早速フィーリュシカは機体を装備した。

 火器は別積みだったので、サネルマとトーコで88ミリ砲を運び、リルが砲弾を運んで〈アルデルト〉に装備させていく。


「ちょっと、あんた何寝てんのよ」


 トレーラーの隅っこで布団にくるまって横になっていたユイを見つけてリルが注意すると、ユイは寝返りを打ってから右手を力なく挙げてひらひらと振った。


「何のつもりよ」

「あー、多分、乗り物酔い」


 何となくユイのことを理解し始めていたトーコが答えると、リルは呆れて肩をすくめた。


「あんた正気? さっき出たばっかよ。どれだけ軟弱なのよ」

「きーきーうるさい。あたしが吐いてもいいのか」

「潜水艇でも吐いたし、〈音止〉でも吐いた」


 トーコが事実を告げると、リルは小さな声で「汚い奴」とだけ罵ってそれ以上は何も言わなかった。

 こんな狭い荷室の中で吐かれたりしたら大事だ。ただでさえ快適な空間とは言えないのに、嘔吐物を巻き散らかされては地獄そのものである。


 フィーリュシカの装備が整っていく隣で、カリラとナツコは〈ヘッダーン1・アサルト〉の格納容器を装着装置に接続する。早速ナツコは装着装置に飛び乗り、個人認証を済ませると自身の機体である〈ヘッダーン1・アサルト〉を選択する。

 装着装置によって瞬く間に〈ヘッダーン1・アサルト〉はナツコの体に装着された。

 旧式の機体らしい角張った形状ながら無駄の少ないフォルムをした、ヘッダーン社の産み出した傑作〈R3〉。


「このまま火器も積みますわ。偵察装備パックの選択をお願いします」

「分かりました。偵察――これですね!」


 カリラが設定してあった装備パックが機体に装着されていく。

 主武装にハンドガード付きの12.7ミリ機銃。左腕に汎用投射機。肩には誘導弾迎撃用の9連装小型誘導弾。バックパックには滞空偵察機と滑空偵察機、カートリッジ式煙幕弾、予備弾倉とエネルギーパックが積み込まれた。

 機体にエネルギーパックが接続されると、〈ヘッダーン1・アサルト〉が起動しセルフチェックが開始される。


「セルフチェック完了。機体システム問題無し――あれ?」

「どうしました?」


 装備が完了し装着機械から外へ出たナツコは、セルフチェック結果を見て首をかしげた。いつもなら全部緑色をしているセルフチェックレポートが、何故か1カ所黄色かった。


「い、いえ。大したことでは」

「それを判断するのはあなたではなくわたくしです」


 カリラは言うが早いか整備用端末に〈ヘッダーン1・アサルト〉のセルフチェックレポートをリンクさせて表示した。

 直ぐに1カ所注意となっている項目を見つけ、目を細める。


「点検項目は全て見たとおっしゃいましたよね?」

「あ、あの。見たつもりだったんですけど……」

「つもりでは困ります。何のための点検ですか」

「す、すいません」


 そんなやりとりをしている隣で、フィーリュシカは装備を完了しリフトによってトレーラーの屋根へと上げられていった。フィーリュシカの出撃完了の報告を受けたタマキは出撃の遅れているナツコへと催促をかける。


「ナツコさん、どうしました?」


 ナツコが返答に困り口ごもっていると、代わりにカリラが返答する。


「こちらカリラです。〈ヘッダーン1・アサルト〉の点検に不備がありまして対応中です」

「整備不良は困ります。ナツコさんの機体の整備担当はあなたです。しっかり管理して頂かないことには我々は〈R3〉を運用できなくなってしまいます。対応はどれくらいかかりますか?」

「60秒で対応しますわ」

「よろしい。直ぐに対応を。それと今日中に整備不良に関する詳細な報告書を作成して下さい」

「承りましたわ」


 カリラはタマキとの通信を終えると、〈ヘッダーン1・アサルト〉の胸部装甲を取り外してその内側にあった予備動力のケーブルを引き出し、コアユニットと接続する。


「あの、カリラさん。ごめんなさい」

「別に謝らなくて結構。整備担当はわたくしですから、機体に関する最終的な責任を負うのはわたくしです。ただ、こんなバカな点検漏れは2度とごめんですわ」

「はい、気を付けます」

「そうして貰えることを切に願っていますわ。しっかり見ておいて。これ、何だか分かりますわね?」


 充塡完了を告げた予備動力を示してカリラが尋ねると、ナツコは何とか記憶の底から予備動力の名前を引っ張り出す。


「予備動力ですよね」

「そうです。機体のコアユニットが破壊されても、最低限の移動と機体の装備解除を行うことを可能にするための装備です。

 これが空の状態でコアユニットをやられると、最悪機体が装備解除出来ず動作不良に陥った機体の重量に押しつぶされて死にますから、格納容器にしまう前に残量確認をお願いします。

 ま、〈ヘッダーン1・アサルト〉ならナツコさんのひ弱な体でも押しつぶされるような事態にはなりませんし、そもそもこんなものコアユニットが動いていれば勝手に充塡されますからわざわざ出撃前に充塡済ませておく理由もありませんけれども、出撃した瞬間にコアユニットが異常停止しないとも限りませんから留意して下さいね。

 セルフチェックして問題無ければ出て行って下さい。60秒で対応すると言ってしまいましたからぐずぐずされるとまた怒られますわ。2枚目の報告書書く羽目になりましたらその時はナツコさんに書かせますからお忘れなく」


 カリラに促されて、ナツコは機体のセルフチェックを再度かける。今回は全項目で正常稼働を確認。カリラも整備用端末でレポートを確認すると、さっさとリフトに乗り込むよう急かす。それでもナツコは何か言おうと振り返ったが、そんなナツコに対してカリラは個人防衛火器を手渡した。


「忘れ物。持ったら直ぐ上げますわ」

「は、はい」


 ナツコが受け取ると、カリラは宣言通りリフトを上げた。有無を言わさず屋根の上に追い出されたナツコは、先に上がっていたフィーリュシカと共に吹き荒れる火山灰の中警戒に当たる。


「何か問題があった?」


 ナツコの様子にいつもと異なるものを感じたフィーリュシカが問いかけるが、ナツコは笑顔を作って振る舞う。


「ちょっとだけ。でも解決したので大丈夫です」

「そ。ならいい」


 フィーリュシカはそれきり何も言わず警戒に集中したので、ナツコもフィーリュシカの死角を見るよう配置すると、与えられた任務に注力した。


          ◇    ◇    ◇


 片道1時間程度で設営されたばかりの物資堆積場に到着した輸送隊は、防衛拠点設営のために必要となる資材を積み込んだ。ツバキ小隊のトレーラーも調整中の〈音止〉を置いてきた分荷室に余裕があると判断され、〈R3〉運搬用の設備が整っていたことから積めるだけ〈R3〉を積み込まれた。

 積み込まれた〈ヘッダーン4・アサルト〉を見て、イスラは1機くらいもらっても罰は当たらないんじゃ無いかと冗談を言ったが、タマキにそうしたいのは山々だけど問題になるから止めてと返された。


 帰りはカリラが運転を担当し、警戒にはリルとサネルマが当たった。

 往路とは打って変わり風のなくなった復路は見通しが良く警戒も苦では無かった。反面、隊員について一切配慮されること無く積めるだけ〈R3〉を積んだ荷室の居住性は最悪で、狭い空間に無理矢理体を折りたたんで座り込んだナツコは揺れる車内で必死に吐き気を堪えた。


「こんなことなら帰りも運転させてもらえば良かった」

「そうですね。私も免許とりたくなりました」


 イスラの愚痴に答えるようナツコが返す。その時、荷室の隅っこで何かが小刻みに震えているのをナツコは見つけた。


「あれ、そこって何かあります?」

「え? ああ、それはユイ――ちょっとユイ! 吐かないでよ!」


 トーコは吐きそうになっているユイの元へと機材の隙間を通り抜けて駆けつけると、震える背中を撫でて、無理矢理酔い止めを飲ませる。


「クソッ。子供のお使いなんぞに、ついてこなけりゃ、良かった――」

「喋らないで。――誰か後部ハッチ開けて。これもたなそう」

「了解。こちらイスラより少尉殿。ユイちゃんが限界を迎えてるから外で吐かせる、どうぞ」


 タマキの許可は即座に得られ、トーコによる運び出しが間に合った甲斐あって、何とか荷室内に汚物が巻き散らかされずに済んだ。代わりに周囲にいた統合軍車両より、護衛車両が突然後部ハッチを開けたことと、危険物を巻き散らかした事について注意を受けたが、タマキが真面目に謝罪すると笑って許して貰えた。

 そんなこともあり、体調不良者を1人排出しながらも、ツバキ小隊最初の輸送護衛任務は無事に完了した。


          ◇    ◇    ◇


 到着したデイン・ミッドフェルド基地の物資受け入れ場で、積んで来た〈R3〉を降ろす作業が始まった。

 運び出しはイスラ、カリラと統合軍の輜重科が担当したため、手の空いたナツコは車両を降りて固まっていた体を伸ばした。

 〈ヘッダーン1・アサルト〉を装備していたし、髪は後ろで2つ縛っているおさげも含めてヘルメットの中に無理に収めていたため、火山灰によって汚れたのは機体だけだ。

 そういえば、とナツコは車両から降りてきたフィーリュシカの方を見る。

 〈アルデルト〉の装甲は限られた場所にしかないし、フィーリュシカは腰辺りまである長い髪をしていた。ナツコの思ったとおり、フィーリュシカは着用している〈R3〉装着用の機能性インナーを灰で汚していた。

 それに――


「フィーちゃん、そんな髪の色でしたっけ?」


 ナツコの記憶ではフィーリュシカの髪は見る物の目を奪う、透き通るような美しい銀色だった。それがどうも今は赤みのかかったくすんだ灰色で、それはカリラの髪の色とどことなく似ていた。


「ちょっと、触ってもいいですか?」


 否定も肯定もしなかったフィーリュシカに近寄って、ナツコはフィーリュシカの髪に触れ、そっと揺らす。

 すると、揺らした髪から灰色の粉が大量に舞い落ちた。


「こ、これ全部火山灰ですか」


 更にナツコが髪を揺らすと、揺らせば揺らした分だけ火山灰が舞い降りた。ナツコが余りに雑に髪を扱うのでフィーリュシカはナツコの手を制止して、自分で灰を払い始める。


「ちょっと、なんですかこれは」

「え、ええと、火山灰、みたいです」


 灰を撒き散らすフィーリュシカと、その足下に堆積した灰を見たタマキが声を上げる。ナツコが申し訳なさそうに答えると、タマキはフィーリュシカの髪に触れ、手に着いた灰を確かめる。


「こんな場所で払わないで。邪魔にならない場所で払って、それからシャワーを浴びてきて下さい。使用時間外ですが許可を出しておきます」

「あ、タマキ隊長! 私も火山灰の中警戒に当たっていたので!」


 ここぞとばかりにナツコも手を上げた。使用時間外にシャワーを浴びる許可が貰えるなんて、この機を逃したら次は無い。


「よろしい。行ってらっしゃい」


 ナツコはガッツポーズを決めると、早速フィーリュシカを連れて火山灰を払いに受け入れ場から離れた道路脇へと向かった。

 タマキとナツコの会話を聞いていたサネルマもここぞとばかりに自分も警戒に当たったことを告げたのだが、シャワーの使用許可を得ることは出来なかった。

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