第5-5話 マーテン その3

店を出た後、テオックから先ほど受け取った代金の半分を俺に渡してきた


半分はやはり多いと思ったが、前のピウリの時の件があったので

有り難く受け取る事にした


「次はどこに行くんだ?」


「もう良い時間だし、飯にしようぜ」

と言ってテオックは歩き出す


露店の立ち並ぶ道を進み、そこから路地に入る

路地に入る直前に視界に城壁の様な物が映ったので、俺はテオックに尋ねてみる


「あの壁は何なんだ?」


「マーテンの中央部分を取り囲むように壁が覆ってるんだよ」

テオックが壁の場所に付いて説明してくれる


城壁の様なものに囲まれているのだから、中に何かあるのだろうか


「中に何かあるのか?」


「中は普通の住宅地だよ、貴族や金持ちが多いと思うけど」

重要な施設があって入れないものかと思っていた、口ぶりからすると普通に壁の中には入れそうだ


「どうしてあんな大層な壁があるんだ?」


「さあ?気にした事無いからなあ」

テオックはマーテンの住人ではないから知らないのも無理は無いか


路地を少し進むと、看板が置かれた建物がある


「ここだ、ここで昼飯にしようぜ」


看板には【サンフィン】と書いてある

香ばしい香りのする店内に俺とテオックは入った


--------------------------

路地の中にある店だが、

店内には太陽の光が程よく入るようになっており、

思いの他明るかった


明るめの木材をしようしているが、装飾や観葉植物はあまりなく、

色合い以外はシンプルな店内だった


店内にはテーブルが6つあり、二組の客がいた


「いらっしゃいませ!」

元気の良いはきはきとした声が聞こえる


コボルトの店員だ、白い体毛に覆われていて、

声からすると女の子の様だ


「お二人様ですね、ご案内します!」

店員は俺とテオックをテーブルに案内し、手際良く水とスプーンとフォークを置く


「メニューは何になさいますか?」


「ランチ二つ頼むよ」

テオックは爽やかな声で即注文した


「かしこまりました!」

店員は厨房の奥に移動する


出された水を飲む


香草で風味を付けた水だ

町の中には幾つか井戸があるので、そこから汲んで来ているのだろう


「あの娘が可愛くてな~

マーテンに来たらとりあえずここに来るんだよ」

唐突にテオックが言う


だからこの店に来たのか…


残念ながら俺の目にはコボルトの顔の美形を判断するのは難しそうだ


……暫くすると店員が料理を運んできた


「おまたせしました!ランチになります!」


ランチは木製の皿二枚に入っていた


一つの皿は鶏肉?のようなものを焼いてそれにソースを掛けて野菜で装飾している

もう一つの皿はスープになっている

薄く緑色になっており、煮詰められて柔らかくなった野菜が入っているようだ



スープを口につけてみる、

この世界に来てからは当たり前の事ではあるが、薄味だ

野菜そのものの甘みが良く出ていて、薄味である事のデメリットをあまり感じない


肉料理も食べてみる、ソースは油に味付けをしたような感覚だ

これもまたちょっと味は薄いが

肉そのものの味がついていて、それとマッチしている


「美味いな…」

自然と口から出る

アステノでは野性味溢れる料理が多かったので、

ここまできちんと調理された料理は村長の家で出してもらったものだけだ


……俺とテオックは食べ終わり、会計を済ませて店から出た


ランチは1人5ラントだった、あのクオリティでこの値段なら満足だ

テオックはあの店員さんに会えた事に満足しているみたいだが


「じゃあこの後は夕方まで町の散策するか、

ちょっと色々回ってみようぜ」

テオックの言葉に従うまま、俺は歩き出した

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る