第5-2話 町へ その2

翌日の朝、俺は冒険者の服に着替え

ナイフは一応腰に付けた状態にして、

水と一日分の保存食とお金を持ってテオックの準備を待っていた


テオックも俺と同じく水と食料を持っていたが、

もう一つ中くらいのサイズの麻袋を用意していた


「それは何を入れてるんだ?」

俺は袋が気になったのでテオックに尋ねる


「これは中にハーブやら薬草やら木の実を入れてるんだ。

町ではそこそこ良い値で買い取ってくれる店がある」


ピウリは数日前に村を出て町に戻っていたので、

今テオックが用意したものはそれから後に採取した分である

また、店によってはピウリの買取金額よりも高く買い取ってくれる場合もあるから

折角町に行くなら売っておきたいとの事だ


「街道はたまに魔獣が出る事があるが、

そんな事は滅多にないから心配すんな。

それじゃ、行くか」


俺とテオックはマーテンに向かって出発した


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村の西から街道に沿って歩く

以前大樹の水場に向かった時に歩いた道を

今度は小道に曲がらずまっすぐ進む


日が少し高くなってきて、そろそろ昼に差しかかろうとした時に

「そろそろクステリの森を抜けるぞ」

とテオックが言った


それから程なくして

森の先に平原が広がった景色が見えてきた


「森はここまでだ、でも通るのは街道をまっすぐだぞ」


テオックがそう言っている間に森を抜ける


視界が一気に広がる

地平線の先まで見渡せそうな平原

広大な平原の中には小さな池が見え、

遠くには丘も見える


「おお、凄い……」

このような光景を見るのは生まれて始めてだ

ずっと森の中で生活していた事もあり、

俺は完全に圧倒されていた



平原は風とそれにそよぐ草木の音が静かに響き渡っていた

森の中とは異なる音


この世界のどこまでも行けてしまいそうに感じる


「ここから宿場まで歩いて、今日はそこで休むぞ」


テオックからの説明によると、いくら街道を直進するとは言え、

夜通しで歩き続けたりはしないらしい

疲れもあるが、魔獣が出ないとも限らないからだ


クステリの森とマーテンの中間に当たる位置に宿場があり、

そこで一泊して次の日にマーテンに到着する予定となっている


それから夕暮れ時になるまで特にトラブルが起こることもなく

俺とテオックは宿場に着いた


宿場は宿屋が3軒、その内の2軒は酒場も兼ねていた

他にも民家が数軒あり、かなり小規模の村として機能しているようだ


この街道は途中で別のルート別れており、宿場はその分かれ道の近くにあるため

マーテンからアステノ以外のルートを通る旅人に利用されているのだ


俺とテオックは酒場のある宿をとり、保存食は緊急用として残して

酒場で食事を済ませてから一泊した


そして次の日の朝に宿場を立ち、日が高く差し掛かった頃、

風景に次第に変化が現れ始めた


「家や畑が見え始めてきたな、マーテンに近付いてきたぞ」


街道の果てに建物群が見え始めてきた、

それは歩く毎に次第に近付き、一時間ほど歩く頃には俺達の目の前まで近付いていた


「ここがマーテンだ、早速宿に行くぞ」


俺はテオックの後に続いて町の中に入っていった

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