第4-5話 プレゼント その2

ピウリの店で買い物をした後、

村で木材加工をしている

オークのムルルスから良質な木の板と釘を5ラントで購入

更にムルルスから木箱の作り方を教わりながら作成した


1時間程してから、テオックの家に戻っていた

家主は今呑みに行ってるので、この場にいるのは俺だけだ


「疲れたが、まあまあ良い出来だろう」

飾り気の無い幅、高さ、奥行きが30cm程の木箱で、

素人が作ったからややいびつな形になってしまったが

達成感の補正から悪くない造型に見える


「次は針山だ」


裁縫道具で裁縫道具を作ると考えるとなんだかおかしな話だが、

綿と布があれば針山は作れるはずだ


裁縫は学生の時以来なのであまり自信はなかったが

購入した布生地や綿は結構な量になった


「まあ服の補修にも使えるし無駄ではないか」


テオックは裁縫道具は持っていないが、

ピウリ曰くこの国の住民は裁縫道具そのものは

大体どの家にもあるらしい

衣類の消耗が激しく、補修は当たり前だからとの事だ


コボルトやオーガなどは体が丈夫なので衣類の優先度は低いらしい


俺には裁縫道具はきっと必要になるだろう


「失敗作は自分用にして作ってみるか……」


俺はその後、夕方になるまでこの作業をする事になった


---------------

「あらヨウヘイ、こんばんわ」


「こんばんわ村長」


日が沈みかけ、宵闇が迫りつつある時刻

俺は村長の家を訪れていた


ノックするとすぐにメラニーは出てきた

服装は昼間と同じものだった


「ふふっ、取り敢えず中にどうぞ」


「わ、分かりました」


メラニーに招かれるまま家の中に入る


メラニーの家は装飾品が程々に付いているが、

小洒落た置物や、タペストリーが壁に飾られていた

高級と言うよりは趣味の色合いが強い印象を受ける


「こちらへどうぞ」


メラニーに言われるがまま椅子に腰掛ける

テーブルを挟んで向かい側にはクッションのようなものがある

メラニーはその上に座った


「昼間の件で…」


どう切り出したら良いか分からなかったので、

直球でプレゼントの話をする


「あらあら、プレゼントを持ってきてくれたの?」


と言いながら俺が持っている袋に視線を移す


俺は袋を開け木箱を取り出す


「これ、もし良かったら物入れにでも…」


作り終えた時は達成感による補正で良い品に見えたが、

こうまじまじと見ると粗末な作りだ

作成に使った木材だけは良質で見映えが良いだけで、

この洒落た村長の家にはミスマッチな気がした


「まあ!手作りの木箱?ありがとう」


メラニーは思いのほか喜んでくれた

気を遣ってくれただけかも知れないが、少し気が楽になった


「あとこれを」


と言って針山(ピンクッション)を取り出す

綿を布生地で包み、ハサミで切って縫い付けただけのもので

決して出来が良い訳ではないが、きちんと裁縫針を付けておくことは出来た

上下の区別が付くように下部は布を花びらの形にカットしている


これだけの物を作るのに試行錯誤で数時間使った

俺は不器用なのかもしれない


「まあ可愛らしい小物、これも手作りですか?」


「ええ、これに針を刺して針を置いておくんです」

俺は針山の用途を簡単に説明する

メラニーは俺の説明に感心している様だった


……後日分かった事だが、針山の様な針刺し自体は村長は持っていたが、

小物としても置いておけるデザインのものは一般的ではないらしく

結果としてはその面でも喜ばれた様だ


「へえ、面白いわね。

もしかして私の趣味を誰かに教えてもらったの?」


ええ、まあ、と答える


その返事を聞いてメラニーの表情が緩む


「こんな素敵なプレゼントを貰えると思わなかったわ。

ありがとう、ヨウヘイ」


メラニーはここで少し待ってねと言い、

部屋の奥へ移動する


少し立ってから、綺麗に折りたたまれた冒険者の服を持って

メラニーが現れる


「もう少し待ってくれたら梱包できたのだけれど……

これをお礼にお渡しするわね」


梱包だなんてとんでもない

俺は頭を下げて村長から冒険者の服を受け取る


「そうだ、もし良かったら今日の夕食をここで食べていってはいかが?」

とメラニーに言われる


正直恐縮している状態ではあったが、

村長の好意を無下にしたくはなかった

決して村長が美人だからそれが嬉しかった訳ではない


「いいんですか、じゃあもし良ければ……」


その言葉を聞いてからメラニーは微笑み


「それじゃあ少し待っていてね、準備するから」


……この後豪勢な夕食を頂き、家に戻ったところで

テオックに茶化される事になった

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