第三章 参議院行政監視委員会

尾形参考人に対する意見聴取-一

二〇XX年七月三日午後一時一分開議

参議院行政監視委員会


出席委員

委員長 西田正広君

理事  青木健三君

    乾勝良君

    吉田清之助君

    新田昭君(以下略)


参考人 緒方大輔君

    米田博史君

    佐竹信広君


政府参考人 小田義英資源エネルギー庁次長(以下略)


(西田正広委員長)

 ただいまから行政監視委員会を開会致します。(中略)

 それではまず、帝都大学生物学教授尾形大輔先生にご意見を賜りたいと思います。尾形参考人におかれましては、本日は大変ご多忙のなか、当委員会の調査にご協力いただきまことにありがとうございます。本日は公開の意見聴取であります。大変多くの方が、これは我が国の国民のみならずですね、海外にも本件について関心を持ってらっしゃる方々が多くいらっしゃると聞き及んでおります。意見聴取に先立ちまして、尾形教授からひと言ご挨拶いただきたいと思います。

 尾形教授、よろしくお願いします。


(尾形参考人)

 ただいまご紹介に与りました帝都大学生物学教授尾形大輔です。意見陳述に先立ちまして、本件核惨事において被災し、亡くなられた多くの方々に哀悼の意を捧げますと共に、心ならずも避難を強いられ、慣れない避難生活を送られ、苦境の中に身を置いている大変多くの方々にお見舞い申し上げます。かくいう私自身も、六十の老齢に至りまして生活の根源を奪われ避難生活を送っている一被災者であります。本日は行政監視委員会ということで、大変に専門的な話も出て来ると思いますけれども、被災者の気持ちにより添って、出来るだけ皆様に分かりやすい陳述に努めますので、委員の方々におかれましては、どうぞ難解な部分がございましたら遠慮なさらずご指摘いただけたならば幸いと存じます。

 よろしくお願いします。


(西田委員長)

 大変にありがたいお言葉をいただきました。それではさっそく質問に移りたいと思います。青木委員どうぞ。


(民友党青木健三委員)

 民友党の青木でございます。

 さきほど委員長からもございましたけれども、御多忙中の折、本日は当委員会にお越しいただきまことにありがとうございます。私、ただいまから教授にいろいろ質問させていただくわけですけれども、勉強不足、理解不足と教授がお感じになる質問も中にはございますでしょうが、丁寧に、テレビをご覧になってる国民の皆様方にも分かりやすいようにご教授賜りたいと思っておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは質問に移ります。

 本日尾形教授に伺いたいことは、本件核惨事発生時におきまして、教授が当時の政府からその正体について意見を聴取されました際に、これを一種の生物であると政府をして認定せしめる意見を陳述されたと私ども報道等で聞き及んでおります。

 他方、現在我々が問題視している事態は、本件核惨事の元凶であった巨大球体への対処に際して、当時の政府ヶ治安出動の範囲拡大を決定するなどの重大な責任を免れんがために、半ば恣意的にと申しましょうか、強引に巨大球体を生物と認定したのではないかという疑いがもたれている点であります。

 説明するまでもなく、巨大球体による福島第一原子力発電所廃炉作業区に対する襲撃事件発生により、同日非常招集された福島県議会は自衛隊の派遣要請を全会一致で可決し、速やかに政府に通知致しました。これは原子力関連施設に対する攻撃でありましたから、福島県議会による自衛隊の派遣要請により、法的には自衛隊の自治体管内への治安出動が可能となったわけであります。その後政府が福島県からの要請による治安出動ではなく、命令による治安出動を下令したことは報道等で既にご承知かと思われます。要請による治安出動か、命令による治安出動か、いずれが妥当かという問題は、もちろん尾形教授への質問において問題とするところではございません。

 問題は、治安出動下令に伴い南相馬市に展開した自衛隊の部隊が巨大球体の侵攻阻止に失敗して、福島宮城県境を越境することが明らかとなった時点において、治安出動の範囲拡大を閣議決定するなどして宮城県全域に自衛隊の部隊が展開可能なように差配すべきではなかったかと考えられるわけであります。

 そこで本日は尾形教授に参考人として当委員会にお越しいただき、災害派遣への切り替えの動機となったいわゆる「摩耗生物説」について質問させていただきます。

 単刀直入に私ども生物学の素人の観点から申し上げると、生物と放射線といいますのはおよそ相容れない関係であると考えます。

 しかしながら、巨大球体がその外皮を開口させて、使用済み核燃料や、既に核燃料が装塡されている圧力容器を内部に収納してしまうという衝撃的な場面を、定点カメラの映像で目に致しました。非常に強力な放射線を発する物体を、体内に収納したわけであります。率直に申し上げると、あの巨大球体が生物であるとは到底考えられません。教授が政府の意見聴取に際して巨大球体を生物であると認定した根拠についてお答え下さい。

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